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山本圭 洋画吹き替えは役に入り込まず台本の言葉に合わせる

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 俳優の山本圭は、洋画の吹き替えや朗読、ナレーションなどでも名高い。声だけの芝居について山本が語った台本についての言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

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 山本圭は『ディア・ハンター』でのロバート・デ・ニーロを始め『ドクトル・ジバゴ』『ジャッカルの日』など、数多くの洋画吹き替えもしてきた。

「最初はBBCの『シェークスピア劇場』をNHKでやった時にデレク・ジャコビのハムレットの声を入れた時だったと思います。典型的なイギリス英語で演じていましたが、それを意識してもしょうがないですし、やはり自分のやり方でやるしかないと思ってやりました。

 吹き替えだからといって、特別に変えることはありません。自分から合わせなくとも、日本語をちゃんと喋ればその俳優の口に合うように台本ができていますから。ですから、訳の人の手腕の方が必要なんですよね。

 こちらで役を作り込んだりすると、かえってダメなんですよ。別の芝居になってしまいますから。大事なのは、その俳優の魅力を汚さないようにすることです。自分を主張する場ではありません。

 台本の字句が上手く収まるようにすれば、その役になれます。役に入り込んだりはしない方がいい。台本の言葉に合わせていけばいいんですよ。そういう意味では朗読とは違いますね。同じ声だけの芝居でも、ラジオドラマもまた違います。ラジオドラマは絵がないですから、耳でもってあたかも具体的な何かがあるように感じてもらえるよう芝居しないといけません」

 1990年代以降は『白線流し』『ひとつ屋根の下』(いずれもフジテレビ)などのテレビドラマで、親子ほどに歳の離れた若手と共演することも増えている。

「『ひとつ屋根の下』は脚本家の野島伸司君やフジテレビのスタッフたちによる『若者たち』へのオマージュですね。相手が若いからといって、意識はしません。『君ね、ここはこういうふうにやったらどう』というのは、一番よくないですね。

 その人を尊重して、その人がよほど『これはどうしたらいいですか?』と聞いてきた時には『今のままでいいんじゃない』『ここはもう少しトーンを上げてみたらどうだろう』と答えることもあるとは思いますが。

 あくまで、俳優は台本ありきの存在です。その中で、自分はどういう役割を担えばいいのか、そしてその役割をどう果たすのか。それだけなんですよね。

『自分だけ良ければそれでいい』という人もいます。でも、俳優の役目というのは、自分を必要以上に売り出そうとしたり、自分のことを声高に主張したり、ということではありません。演出家が俳優に望んでいるのは、『この話のこの部分を埋めてくれればいい』ということです。ですから、それに合うように自分なりのやり方でやれば、その役目を果たせると思います。

 もちろん、主役の時は周りから支えられていますから、その人たちにお任せする部分はあります。一方で、脇に回る時は主役を支える側になるわけですから、どうすれば彼や彼女がやりやすいかということが、大事な要素になってくるんじゃないでしょうか。ですから、やはり演技というのは一つのチームプレーなんだと僕は思っています」

■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』(文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』『市川崑と「犬上家の一族」』(ともに新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

※週刊ポスト2016年1月1・8日号


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