情報公開へ「官-民」「民-民」の連携やスキーム作りが必要 IT復興円卓会議

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ジャーナリストの佐々木俊尚氏

 東日本大震災からの復興策と新しいITの設計を議論する「IT復興円卓会議」(主催:慶應義塾大学メディアデザイン研究科)が、2011年7月29日に開催された。シリーズ第1回目のテーマは「行政」。レギュラーコメンテーターを務めるジャーナリストの佐々木俊尚氏は、東京電力の電力使用量オープン化の試みを評価しつつも、「民(間企業)は情報を隠したがる。それに対して行政が公開を求めるには、まずは行政自体が情報公開のスキームを作る必要がある」と述べた。

 また総務省大臣官房企画課長の谷脇康彦氏は、経済産業省が持っている情報をリアルタイムに近い形で公開する検討に入っていることや、民間企業同士での「情報のヨコ連携」の重要性を説いた。

■行政側の東電への情報公開要求は「お願い」の形

経済産業省国際戦略情報分析官の境真良氏

 「IT復興円卓会議」は今年4月13日に、政治家・学者・ジャーナリストなど各界の有識者らの初会合が催され、総論的な意見交換が行われた。7月29日からは月1回の分科会形式で、「行政」「メディア」「通信・インフラ」「ソーシャル」「NPO・社会貢献」の5つのテーマで議論を行い、政府及び与党への提言とその実現を最終目標とするという。

 佐々木氏は、東京電力が電力使用量の情報をオープン化したことを評価。「ああいうやり方をいろんな方面に展開していけばといいのでは」と話し、公益性の高いインフラ関連企業などの保有する情報を、より公開していくことが必要であるとした。

 しかし、経済産業省国際戦略情報分析官の境真良氏によると現状では、行政としては東京電力に対し、あくまでも「お願い」という形でしか情報公開を求めることはできなかったという。これに対し佐々木氏は、「民(間企業)は情報を隠したがる。たしかに行政がどこまで介入できるかは難しい」としつつも、今回の震災でその重要性が問われたと指摘。そして、まずは行政自体が情報公開のスキームを作り、モデルケースとして実行していく必要があると話した。具体的には、

「例えば自治体が持っている、どこで何の工事をこれからしますとか、あるいはバスの運行情報とか。そういうデータベースを公開する。そうすると誰かが、バスがどこに何時に来るか分かるようなアプリを開発できる。基本的に持っているデータをすべて、APIも含めて公開することによって、民間の事業者がそれをアプリ化したりとか、データを分かりやすくビジュアルで見せるようなことが可能になると思う」

と提案した。

■平時からも重要な「官-民」「民-民」の連携

総務省大臣官房企画課長の谷脇康彦氏

 佐々木氏の提案ついて、総務省大臣官房企画課長の谷脇氏は、「今回、例えば経済産業省のほうに『こんな情報ないの?』という問い合わせがいっぱいあったと聞いている」と述べ、それをリストアップしてリアルタイムに近い形で公開できないか、検討を始めていることを明かした。

 また、谷脇氏は

「これは官-民の間だけではなく、民-民の間でも重要」

と話し、NPOや民間事業者同士による「情報のヨコ連携」の必要性を強調。今回の震災で、自動車各社が持つカーナビの道路通行情報を持ち寄り、通行できる道路をウェブ上に表示した取り組みを実例として挙げ、「そういったことを平時から考えておくことはとても大事」と語った。

丸山紀一朗

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]「電力使用量のオープン化」の話から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv55466995?po=news&ref=news#26:10
・IT復興円卓会議 – 公式サイト
http://ithukko.com/

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