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「アワビのような食感」と絶賛 ブランドしいたけを作ったイケメン三兄弟の物語

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 1パック300グラム、1050円で売られている椎茸がある。その名も「しいたけブラザーズ特製 生 ジャンボ」(※)。成城石井をはじめとしたいくつかの高級スーパーで売られていたり、帝国ホテル内にある鉄板焼き「嘉門」で使われていたりと、一般的なスーパーではお目にかかれない高級食材だ。食べれば、その値段にも納得。「山アワビ」と称されるほどコリコリとした食感が味わえる逸品だという。

 この椎茸の生産・販売を行なっているのが、『しいたけブラザーズ』(藤本美郷/著、飛鳥新社/刊)に登場する、横田三兄弟である。三人とも身長180センチ以上という長身なうえにイケメン。そして、左袖には「原木宣言」、背中には「届けたいのは本物への情熱」と染め抜かれたお揃いのTシャツを着て、いつも作業に励む姿が印象的だ。
 岐阜県、飛騨川近くの山間部で長年にわたって椎茸栽培をしていた父・俊光さんが病に倒れたことをきっかけに、初めは次男の千洋さん、次いで長男の尚人さん、最後には三男の泰弘さんが、それぞれ安定した職を捨てて実家に戻り、「しいたけブラザーズ」として合流。椎茸の生産・販売に従事するようになった。本書は、その一連の家族ストーリーを描いたノンフィクションである。
 今でこそ順風満帆に見える彼らだが、ここまでの道のりには数々の苦難があったという。

■とにかく辛くて儲からない原木栽培
 椎茸の栽培法は、大きく分けて二種類ある。原木栽培と菌床栽培だ。
 原木栽培とは、江戸時代から始まった栽培方法で、自然の環境を生かし木の栄養だけしいたけを育てるというもの。それに対し、菌床栽培は、広葉樹などのオガクズに人工栄養剤を加えたブロックに椎茸の種菌を植えつけ培養し、培養した菌床ブロックから発生させるという方法で、現在はこちらが主流だ。
 原木栽培が流行らないのは、植えつけから発生まで約1年を要し、菌床栽培に比べ約4倍の時間がかかるなど、とにかく手間がかかるからだ。しかも、木の栄養分となる菌は大変デリケートなため、雑菌におかされるリスクが常につきまとう。本書でも、俊光さんがしいたけ農業を始めたばかりのころ、雑菌によって3000本もの木を全滅させてしまったというエピソードが紹介されている。
 大変なだけではない。とにかく儲かりにくい。ある年の父の事業所得が7万円だったこと、千洋さんが苦難の末、ようやく収穫に成功した椎茸を市場に卸しに行ったところ、買い取り価格は1パック5円だと言われたことなど、その「儲からなさ」を物語るエピソードには事欠かないのだ。
 では、横田三兄弟はどのようにして、「儲かる」椎茸を生みだしていったのだろうか。

■ターニングポイントは試食販売
 ひとつのターニングポイントとなったのは、実家近くのスーパーにかけた1本の営業電話だった。尚人さんが「地元にあるお店で顔見知りも多い。遠くの市場に売りに行くよりもこっちのほうがいいのではないか」と思い立ち、「そちらで原木しいたけの試食販売をさせていただけませんか?」と打診したのだ。
 二つ返事でOKをもらった3人はさっそく試食販売をした。すると、椎茸嫌いだったはずの小さい子どもがパクパクと美味しそうに原木しいたけを食べたり、お客とのやりとりのなかから「しいたけブラザーズ」というネーミングが生まれたりするなど、好感触を得る。この時期を境に不思議と売上は伸びていった。
 手ごたえを感じた横田兄弟は、その後も積極的に営業活動を行ない、ついには東京の一流ホテルの料理長や成城石井の社長など、一流の目利きからお墨付きをもらうことに成功。自ら販路を広げていった。

 ここでは三兄弟が椎茸農家を引き継いでから以降の話を取り上げたが、本書では、そもそも彼らの父がどのような経緯でしいたけの原木栽培を始め、どのような思いで子どもたちを育てていったのかなど、三兄弟が椎茸づくりに関わるに至ったルーツが詳細につづられている。彼らがなぜ椎茸づくり、それも原木栽培での椎茸づくりというものにこだわるのかが伝わってくる一冊だ。
(新刊JP編集部)

※…商品名、価格情報とも、ウェブサイト「原木しいたけ栽培『しいたけ直売店』」(http://www.eyex.info/shiitake/sale/sale.html)の掲載情報にもとづく


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