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中国で抗日ドラマ量産される理由 純粋に有望ビジネスだから

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 近年、中国では旧日本軍の残虐な行為を描いた「抗日映画・ドラマ」が量産されてきた。とくに戦後70年の節目である2015年は、公開ラッシュとなった。近著『中国人の頭の中』(新潮新書)で「抗日もの」の実像に迫ったノンフィクション作家・青樹明子氏が解説する。

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 日本でも人気のハリウッド俳優ブルース・ウィリスが出演する中国映画『大爆撃』が話題だ。同作は日中戦争当時、旧日本軍が1938~1943年に爆撃を行った重慶が舞台。ウィリスは「中国人パイロットを指導するアメリカ人教官」役で、他にも中国、韓国、香港のトップスターが共演する。劇場公開は2016年6月を予定している。

 最近の中国「抗日映画・ドラマ」は“越境化”がキーワードだ。この『大爆撃』や2015年放映の抗日ドラマ『最後一戦』では、作中に「フライング・タイガース」(日中戦争時に国民党軍を支援した米軍戦闘機部隊)が登場する。これまでの「旧日本軍対中国軍」といった単純な構図ではなく、「(抗日戦争を)ともに戦った米国や韓国」を描くことで、さらなる市場拡大を目指すとともに中国の孤立化を防ぐ意味もある。

 中国在住歴のべ15年の私は中国の映画やドラマが大好きで、中国滞在時はもちろん、帰国してからも多くの作品を見てきた。そんな日本人の私からすると、抗日映画やドラマで描かれているのは、捻じ曲がった形の日本と日本人だと感じる。

「たかが映画やドラマじゃないか」と思うかもしれない。しかし、見過ごせないデータがある。日本のシンクタンクが中国と合同で実施したアンケートによると、中国人の日本に関する情報ソースは、中国のニュースが9割、次いで映画・ドラマが6割(2014年は61.4%、2015年は57.6%)だった(複数回答)。中国人の実に約6割が、映画やドラマから日本及び日本人に対するイメージを得ているのだ。ちなみに、中国人の「ドラマ好き」は日本人の比ではなく、想像以上に大きな影響力がある。

 ただでさえドラマに影響されやすい中国人が、偏った日本人像を刷り込まれているそうだとしたら、昨今の抗日ドラマの日本人描写は日中関係にとって大いに問題だ。そんな抗日ドラマが、近年はなぜ量産されているのか。

「抗日ドラマ=共産党のプロパガンダ」という評価は、現在、必ずしも正確ではない。むしろ、今の中国では純粋に有望な「ビジネス」として制作される面が大きい。

 そもそも中国のテレビ番組は、テレビ局主体で制作する日本と違い、制作会社が作品を企画・制作し、全国約500局あるテレビ局に販売している。また現在、中国のテレビCMの市場規模は10兆円を超える巨大市場と化しており、番組づくりにおいては日本以上に「市場原理」が働くことになる。そこに、中国政府の意向が絡むので事情はさらに複雑だ。

 中国での番組づくりは「許可制」で、国の審査が企画段階と番組完成後の2回ある。当局の許可が下りなければ世に送り出すことはできない。その審査基準は明文化されていないことが多いため、制作側は国の意向を自ら研究・分析し、憶測するしかないのが実態だ。

※SAPIO2016年1月号


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