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今週の永田町(2015.12.17~25)

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【緊急施策を盛り込んだ補正予算案を閣議決定】

先週18日、政府は、1億総活躍社会の実現やTPP対策大綱のうち緊急性の高い施策などを柱とした「補正予算案」を閣議決定した。国の追加歳出総額(3.5兆円)から地方交付税交付金(1.26兆円)や国債費など既定経費の減額分(マイナス1.44兆円)を除いた一般会計総額は3.32兆円となった。補正予算案の規模を抑えるため、当初予算で見込んだ経費を1兆円以上減らすとともに、新規国債を当初予算で想定した発行額から4447億円減額した。そのうえで、昨年度決算剰余金(2.21兆円)や、法人税・所得税や消費税など今年度予算の税収上振れ分(1.89兆円)などを充てた。

 1億総活躍社会の実現に向けた施策(1.16兆円)として、来年前半の民間消費の下支えと生活支援を目的に低所得の年金受給者約1100万人(65歳以上で住民税の非課税世帯と年金などの収入が年155万円程度の単身世帯で、生活保護受給世帯は除外)に1人あたり約3万円を支給する臨時給付金(3624億円)のほか、地方創生加速化交付金、保育士の確保・保育所などの整備前倒し、介護施設整備・介護人材確保などが盛り込まれた。

 

 交渉参加12カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けてのTPP対策大綱関連(3403億円)では、農地の大区画化や農道・排水路・農業用ダムなどの整備といった土地改良事業(940億円)のほか、水田活用直接支払交付金の財源の積み増し、地域で収益力を高める畜産・畑作分野の体質強化などを計上した。農業以外では、地方自治体や商工会議所が一体となって中小企業の海外販路拡大や商品開発を支援する連携組織発足に向けた関連費用や、関税撤廃で輸入品との競争が激化する皮革産業向けの経営支援策・多国籍企業の誘致費用など(約800億円)が盛り込まれた。 

 このほか、東日本大震災の復興加速化(8215億円)、9月の関東・東北水害の復旧や河川整備などの災害復旧・防災・減災関連(5169億円)、テロ対策や2016年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催などに関する対策費(144億円)、2017年4月に消費税率10%への引き上げに伴って負担緩和策として導入する軽減税率に係る中小事業者向け相談窓口を商工団体などへの設置費(170億円)などを計上している。

 

 麻生財務大臣は「需要喚起の景気対策ではなく、1億総活躍で強い経済を実現する」と、今回の補正予算案の意義について強調した。補正予算案に計上された臨時給付金を念頭にバラマキ予算ではないかとの批判が出ていることについては、「(アベノミクスの賃金上昇の)恩恵が及びにくい人を支援するという考え方にもとづいており、ばらまきということはない」と反論している。

 

 

【過去最大の来年度予算案も閣議決定】

24日、政府は臨時閣議を開き、法人実効税率引き下げなどを盛り込んだ与党税制改正大綱を踏まえた来年度税制改正大綱と、一般会計総額96.72兆円(今年度当初予算比0.4%増)と4年連続で過去最大を更新した来年度予算案を決定した。来年度予算案では、所得税や法人税などの伸びを見込んで税収を57.60兆円(同5.6%増)とし、公共事業の財源となる建設国債を合わせた新規国債発行額は34.43兆円(同6.6%減)に抑制した。これにより国債依存度は38.3%(2015年度)から35.6%と、リーマン・ショック前に編成した2008年度当初予算の水準にまで改善したが、依然として歳出の膨張に歯止めがかかっておらず、予算の3分の1超を国債発行に依存する状況が続いている。

 また、来年度税制改正大綱に沿って1年間適用した場合、企業の自治体への寄付を税額控除する「企業版ふるさと納税」(国・地方125億円減)や、新たな自動車税制として購入時の自動車税・軽自動車税を拡充し上乗せ分を低燃費車ほど段階的に税率が低くなる「環境性能割」(184億円)の導入や、中小企業の設備投資を促す「固定資産税減税」(183億円減)などにより、国と地方の税収は差し引き565億円(国税160億円、地方税405億円)減少する見通しだ。さらに、消費税の軽減税率のうち年約6000億円分の穴埋め財源を確保できるメドも立っていない。 

 

 国の政策的経費である一般歳出は4731億円増の57.82兆円で、地方自治体に配分する地方交付税交付金(15.28兆円、同1.6%減)とあわせて73.1兆円となった。「1億総活躍社会」を実現するための対策費(2.4兆円)や、初めて5兆円を突破した防衛費(同1.5%増)などが今年度予算から増額となった。また、地方創生の取り組みを支援するために地方財政計画へ1兆円を計上した。安倍内閣の政策路線が色濃く反映した予算案となった。

一方、財政健全化計画に盛り込まれた2020年度にプライマリー・バランスの赤字脱却をめざして国の政策遂行に必要な経費を計上する一般歳出を年平均5300億円強の増加と収める目安を遵守するため、歳出の3割を占める社会保障関係費(31.97兆円、同1.4%増)の伸びを抑制したほか、全国の公立小中学校の教職員定数を2015年度比で3475人分を削減するなどした。

 

高齢化などの影響で年金・介護や医療費など社会保障関係費は増加の一途を辿っているが、医療サービスなどの公定価格「診療報酬」のマイナス改定(改定率全体で0.84%引き下げ)や、診療報酬関連の制度見直しにより伸びを抑制した。診療報酬改定をめぐっては、薬の値段などの「薬価」部分を市場価格にあわせて1.33%引き下げる一方、医師や薬剤師の技術料など「本体」部分への切り込みが見送られ、賃上げにつなげるとともに医療充実や医療機関の経営安定などに配慮して、0.49%引き上げとなった。

また、割安な後発医薬品(ジェネリック)の価格を来年4月から先発薬の原則6割から5割への引き下げ、年間販売額が1000億円超の医薬品を最大5割値下げする「市場拡大再算定制度」の導入、特定病院の処方箋のみを集中的に受け付けている「門前薬局」の調剤報酬を引き下げて患者の服薬情報の一元管理や服薬指導を手掛ける「かかりつけ薬局」の調剤報酬を手厚くするなどの制度見直しにより、社会保障費の圧縮を図るとしている。

 

 

【安倍路線が色濃く反映した来年度予算案】

 安倍総理が重要政策として掲げる「1億総活躍社会」を実現するための対策費として、「希望出生率1.8」関連に約1.47兆円、「介護離職ゼロ」関連に約0.23兆円などを確保した。このうち、子育て支援は、保育料の年齢制限(第1子が小学3年生まで)をなくして子どもが3人以上いる年収360万円未満の低所得世帯は第3子以降を一律で無料・住民税非課税のひとり親世帯は第1子・第2子ともに無料とする対策費(345億円)、ひとり親世帯に支給される「児童扶養手当」の多子加算額倍増(第2子で最大1万円、第3子以降で最大6000円。ただし、2人目以降にも所得制限あり)など、ひとり親世帯や多子世帯に重点を置いた施策を中心に盛り込んだ。消費税率8%への引き上げに伴って中学生以下の子どもを持つ世帯に幅広く支給してきた「子育て世帯臨時特例給付金」(子育て給付金、2015年度は子ども1人あたり3000円)は、廃止される。

 このほか、資格取得をめざすひとり親世帯の親への給付金支給期間の延長や、企業が国に納める子育て拠出金負担率の段階的引き上げ(2016年度は0.05%引き上げ、2017年度はさらに0.03%引き上げ)により事業所内の保育所・病児保育所など企業主導型保育施設の整備・運営費補助なども進める。

 

4年連続で増額となった防衛費は、中国の海洋進出を念頭に離島防衛・周辺海空域の警戒監視強化に備えた防衛装備品などの購入、ステルス性能を備えた戦闘機やミサイル防衛のためのイージス護衛艦など最新装備品の調達のほか、埋め立て本体工事が着手した米軍普天間飛行場の辺野古沖移設に伴う関係費(595億円)や今年度新設した辺野古周辺3地区への補助金(7800万円)、米軍再編経費(1766億円)、駐沖縄米海兵隊のグアム移転費(140億円)などを計上することで膨らんだ。

外交関係費では、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催のための諸経費(140億円)や、サミットで焦点となる難民・テロ対策支援として、中東アフリカ地域への平和構築・技術協力費(27億円)、国際テロ情報収集ユニットの活動費(2億円)などを計上した。また、中国がアフリカなどの途上国に大規模な支援外交を展開していることや、日本が主要国首脳会議の議長国や国連安全保障理事会の非常任理事国など務めることなどを念頭に、今後も積極的な外交活動を展開することが必要との判断から、無償資金協力や技術協力が中心の「政府開発援助(ODA)」を17年ぶりに増額(5519億円、同1.8%増)することとなった。

 

2018年産米からの減反(生産調整)廃止やTPP交渉の大筋合意などを受けた農林業対策として、農地の大区画化や水利施設整備などの農業農村整備事業を3820億円(同6.5%増)のほか、主食用米から飼料用米・麦・大豆などへの転作の助成・地域の裁量で使える産地交付金を含んだ「水田活用直接支払い交付金」の拡充(3078億円)、林業の成長産業化をめざす「次世代林業基盤づくり交付金」の積み増しなどが盛り込まれた。これにより、農林水産関連の予算総額は2.3兆円となった。当初、財務省は今年度より100億円程度の削減を求めていたが、生産者のひろがる不安払拭や来年夏に実施される参議院選挙対策などとして、関係予算の増額を要求していた自民党農林族議員に応える結果となった。

微増となった公共事業費(5.97兆円、同0.04%増)では、水害や土砂災害など頻発する自然災害を踏まえた防災・減災対策(478億円、同16%増)、自治体向けの財政支援としてインフラの老朽化対策や防災・減災対策に特化した「防災・安全交付金」(1.1兆円、同0.5%増)、新幹線建設の継続(2050億円)などに重点配分した。

 

 このほか、沖縄振興費は、普天間飛行場移設問題をめぐって国と沖縄の対立が法廷闘争に発展しているなか、約10億円の増額(3350億円)となった。沖縄振興特別推進交付金(806億円)のほか、米軍から返還された西普天間住宅地区の跡地利用に関する交付金(10億円)、子どもの貧困対策事業費(10億円)、大型テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)」の進出に向けた県北部地域を観光拠点推進調査費(1億円)、那覇空港第2滑走路の増設事業費(330億円)などが盛り込まれた。

また、観光立国化をめざす安倍総理や菅官房長官の強い意向を反映して、急増する訪日外国人観光客のさらなる増加と受け入れ態勢・環境の整備・拡充につなげるねらいから、観光庁関連予算が今年度当初予算比2.02倍(約200億円)となった。

 

 

【通常国会前半の争点見極めを】

通常国会は1月4日に召集される。通常国会の開会日には安倍総理による外交報告のほか、政府が補正予算案を提出、麻生財務大臣による財政演説が衆参両院の本会議で行われる。財政演説に対する各党代表質問は、6日に衆議院で、7日に参議院で実施する。民主党など野党は、政府が年内に臨時国会を召集しなかったことに抗議するとともに、開会日に安倍総理の所信表明演説も行うよう求めたが、自民党は、来年度予算案を提出する予定の1月22日以降に施政方針演説など政府4演説を行うとして、野党側の要求を拒否した。

 政府・与党は、1月中旬にも補正予算を成立させ、22日にも来年度予算案と税制改正関連法案を一括提出する。政府4演説とそれに対する各党代表質問を行ったうえで、衆議院予算委員会で来年度予算案の実質審議に移りたい考えだ。参院選が控えて大幅な会期延長が不可能で、窮屈な審議日程となることが予想されるため、与党は、来年度予算・税制改正関連法などを2月下旬の衆議院通過、年度内に成立させたうえで、速やかに重要法案の審議に入るシナリオを描いている。

 

予算成立後は、TPPの国会承認手続きを進めるとともに、国内対策の法制化やTPPのルールに沿った法改正など7法案の成立をめざすようだ。協定と関連法案を一括で集中的意に審議するため、与党は、特別委員会を設置する方向で検討している。関連法案には、農林水産業や畜産・酪農で輸入関税の撤廃・引き下げなどにより安価な輸入品が増加し収入が生産費を下回った場合に独立行政法人農畜産業振興機構が赤字分の9割を補填する「経営安定特別対策事業」の法制化や、砂糖の代用品となる輸入加糖調整品を調整金の徴収対象に新たに加えて国内産糖の支援を実施することなどが盛り込まれる。

また、地域特有の農産物・食品を国がブランドとして保護するとともに、日本と同水準の地理的表示制度を持つ対象国と国際約束で保護すべき農林水産物を指定して、相互に保護できる体制を整備するための「地理的表示法改正案」、緊急輸入制限(セーフガード)などを規定した「関税暫定措置法等改正案」、著作権保護期間の延長や著作権侵害の一部非親告罪化を盛り込んだ「著作権法改正案」のほか、独占禁止法改正案、医薬品医療機器法改正案、特許法改正案なども提出する方針だという。

 

 一方、野党側は、政府・与党に徹底対峙していく構えで、補正予算案や来年度予算案に盛り込まれた施策、消費税の軽減税率などについて厳しく追及するようだ。

補正予算案に盛り込まれている1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策について、民主党は「無責任なバラマキ政策の寄せ集めに過ぎない」(細野政調会長)、「選挙前の合法的買収」(枝野幹事長)、「全くの選挙対策で、選挙前に(臨時給付金)3万円をあげますよというのは、どう考えても国民をバカにしている話」(長妻代表代行)などと酷評している。また、来年度予算案も、野党各党は「国の将来を考えず、目先の選挙の勝利だけをめざす姿勢は言語道断」(民主党の細野政調会長)、「効率化できる部分が全く効率化されていない」(日本を元気にする会の松田代表)などと批判している。

 

軽減税率をめぐっては、「財源確保を来年末まで見送ってこれから考えるというのは極めて無責任」「選挙目当てに巨額の税金を使う究極のバラマキ」などの批判的な意見が出た。特に民主党は、「高所得者ほど高い物を購入するから、たくさん軽減を受ける。到底容認できない」(枝野幹事長)と非難するとともに、医療・介護や保育などの自己負担の合算額に上限を設定し上限を超えた分を国が給付する「総合合算制度」の実施見送りを決めたことにも、自民党・公明党・民主党で合意した社会保障と税の一体改革路線に反している、社会保障に回る予算が減るなどと反発している。

また、「(政府が決めた軽減税率の経理方式では)脱税が横行することにもなりかねない。真面目に帳簿を付けた正直者が損することになっては税の根幹が揺らぐ」(岡田代表)、「(軽減税率を適用する生活必需品として)水道水や電気、ガスは生きていくうえで不可欠なものについての議論がされずに、新聞だけが議論されることに非常に強い違和感を覚える」(細野政調会長)などとも指摘している。民主党や維新の党は、現金給付と減税を組み合わせた「給付付き税額控除」の方が低所得者対策として有効だと主張しており、軽減税率の対案として、給付付き税額控除を導入する法案を通常国会に共同提出することをめざしている。国会論戦では、軽減税率が低所得者対策となりうるか、対象品目の線引き基準、経理方式と益税問題、事業者などの負担軽減策などに争点となりそうだ。

 

来年の通常国会では、参院選もにらんだ国会論戦、水面下での与野党攻防などが予想される。まずは通常国会前半に審議入りする補正予算案や来年度予算案、税制改正関連法案などの争点を整理しながら、どのような論戦が繰りひろげられるのかをみていくことが重要だ。また、昨年の通常国会で積み残された法案の扱いも含め、通常国会にどのような法案・政策課題が議論されるのか、政府内での検討動向もチェックしておいたほうがいいだろう。
 

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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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