ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

保釈にならないヤクザ屋さん

DATE:
  • ガジェット通信を≫

 廊下を挟んだ隣の2号室には傷害及び恐喝事件の被告人、つまり既に起訴されているヤクザ屋お兄さんが入っていた。前にも書いた銅線窃盗犯と同じおじいさん弁護士が国選弁護人で付いている。
 宮崎北警察署には窃盗犯が多いが、私の知る限り次に多いのが傷害・恐喝で、いずれもヤクザ屋さんだ。宮崎には多いのだろうか。

 2号室の彼は、傷害事件は自認しているが、恐喝事件は否認していたらしい。このときに、捜査機関から、「執行猶予になるから認めろ」と言われていたとのことである。
 このヤクザ屋さんは、国選弁護人に保釈を頼んでいるが、一向に保釈にならずいらいらしている。

 何が原因かはよく知らないが、留置担当官ともよく喧嘩をしていた。大声で、担当官を怒鳴りまくっている。ヤクザ屋さんの本領発揮というところであろうか。
 北警察署の担当官の偉いところは、負けじと言い返すということがないことだ。怒鳴り声を聞きながら、静かにするように、説得を続けている。

 その彼が、部屋越しに、私に保釈にならないがどうすればよいのかと尋ねてきた。
 保釈不許可であれば不許可の決定書がくるはずで、そこに、保釈を不許可とする理由が書かれている。
 その理由の一つ一つをつぶしていけば(つぶせるのであれば)、保釈の可能性もあるので、まずは、その不許可決定書を見るのが重要となる。

 その不許可決定書はどうしたのかと聞くと、来ていないという。とすれば、保釈請求自体がなされていないということしかなく、その点を弁護士に確認するように助言する。

 実際のところ、保釈を請求したとしても、ヤクザで、一部事件が否認となれば、恐喝の被害者も狭い宮崎にいるのだろうから、保釈が認められる可能性はかなり低い。
 しかし、被告人の依頼なのであるから、結果の予想は別として保釈請求はしなければならない。それが弁護人の義務である。

 次回の弁護人接見を終えたヤクザ屋さんは、憮然としながら「まだ申立をしていないっていうじゃないですか。頭にきた。とんでもない弁護士だ」と怒り狂っていた。
 気持ちは分かる。「今日やるそうです」とのこと。その後案の定というか不許可決定書が届いた。

 その日弁護人が来て、「自分は証拠隠滅などしない、逃亡もしないなどという裁判官宛の上申書を書きなさい、そうすれば再度保釈申請をする」と言われたが、書き方が分からないので教えてくれと言う。
 どういうこと?上申書の書き方くらい弁護人が指導するだろうし、弁護人が彼から聞き取ったという形で上申書を作るだろうし、そもそも最初の保釈申請の際に添付していないのか?不思議な先生といわざるをえない。

 教えを請われた私といえば、隣の部屋だから言うことを書き留めるように指示した上で、口頭で一字一句指導してあげた。内心では無理だなと思いつつも。
 彼は完成させた上申書を弁護人に宅下げしたが、後日接見に来た弁護士から「君はずいぶんきちんとした文章を書くんだね。驚いた」と褒められ、「隣に入っている弁護士さんに頼んで書いてもらいました」と正直に打ち明けると、そのお年寄り弁護士はもっと驚いていたそうだ。
 しかし、またもや保釈は不許可だった。

 このヤクザ屋さんとも拘置所で会った。私が2度目に拘置所に入ったときだから1年弱くらい後である。
 なんでまだ拘置所にいるのかと不思議で、運動のときに一緒に出たついでに小声で聞くと(拘置所は会話禁止だから)、別件でまた捕まったそうだ。
 彼に「先生は?」と聞かれ、「俺もまた捕まった」と言うと、笑っていた。

元記事

保釈にならないヤクザ屋さん

関連情報

第1回 はじめに(ある弁護士の獄中体験記)
「いじめ」を巡る法律について(今週の話題 ~法律はこう斬る!)
ちょっと待って!ネットでの「晒しあげ」(今週の話題 ~法律はこう斬る!)

法、納得!どっとこむの記事一覧をみる ▶
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。