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デヴィッド・ボウイの最新シングルと同名舞台作品『ラザルス』のレポートが到着

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ニューヨークで上演中の舞台作品『ラザルス』のレポートが到着した。本作はデヴィッド・ボウイのニューアルバム『★』からの最新シングル「ラザルス」と同名舞台作品となる。

ニューヨーク・シアター・ワークショップで上演中の『ラザルス』は、デヴィッド・ボウイとブロードウェイミュージカルとして大ヒットした『ONCE ダブリンの街角で』の脚本を手がけた劇作家エンダ・ウォルシュによって書かれ、ベルギー出身の演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェが監督した舞台作品。1963年のウォルター・テヴィス著『地球に落ちてきた男』(The Man Who Fell to Earth)がインスピレーション元になっており、この著書は1976年にニコラス・ローグ監督によって映画化され、デヴィッド・ボウイが中心人物トーマス・ジェローム・ニュートン役を演じたことでも知られている。ボウイ自身は出演していないが、『ラザルス』はトーマス・ニュートンのキャラクターに焦点を当てたもので、来年1月に発売となるデヴィッド・ボウイの新作『★』(ブラックスター)からの最新シングルと同じタイトルを持つ。なお、iTunesでは最新シングル「ラザルス」の配信がスタートしている。

■「ラザルス」iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/lazarus/id1059043043?i=1059043057

『ラザルス』 レポート
物語は小説から40年後の世界が舞台。マイケル・C・ホールが演じる地球に留まったままのニュートンは、死にきれない魂を抱えている。だから物語は、彼に安らかな結末を迎えさせてあげたい、宇宙に返してあげたい、という内容のもの。物語のキーは、彼を宇宙に返してあげたいと思う“天使”に出会うこと。ソフィア・アナ・カルーソがその“天使”をイノセントにフラジャイルに、美しく演じている。

ミュージカルは、アルバムからの新曲でもある「ラザルス」で幕開けするのだが、この歌詞がさっそくスゴい。「ここを見て/僕は今天国いる」「僕は傷を抱えている。誰の目にも見えない/僕はドラマを抱えている。誰も奪うことのできない/すべての人がもう僕が誰なのか知っている」「僕にはもう失うものなどない」と。すでに発表されているシングル「★」も彷彿とさせるジャズに影響されたと思われるが、しかし不惑な世界を象徴するようなナンバー。素晴らしいのは、主演のニュートンが歌い出した瞬間、ボウイが歌っているようにしか聴こえなかったこと。彼は、ボウイを自分の中で取り込み、しかし安っぽいマネに陥ることなく、ボウイの歌を絶妙なバランスで彼なりに体現していた。そしてこの歌がさっそく舞台全体のトーンである、ディストピアとも言える、破綻した世界観を映し出していた。ステージはスタイリッシュだが、非常にシンプル。ベッドと外の世界を映し出す巨大なTVスクリーン、そして、レコードプレーヤーと、ボウイのアナログ盤が置かれていた。そのミニマルなスタイルが、正に世界の孤独を表していたようでもあり、また舞台の隅々にボウイの分身がいるようだった。さらに、舞台の背景には、ガラス越しに、サックス奏者も含めたバンドがいて、彼らの姿も見えるようになっていた。

主人公のニュートン以外の出演者も最小限だが、この舞台のユニークだったところは、彼らの断片的な情報の台詞に観客が混乱しそうになったと思えた瞬間に、ボウイのヒット曲「チェンジス」などが歌われるという感動的な構成になっていたこと。つまり、目の前に暗黒が見えた瞬間に、ボウイの曲が観客への光となって照らす役割を果たすのだ。しかも、たった200人の小さな劇場で、俳優達が、生で、大音量でボウイのヒット曲を歌うのである。そのエンターテインメント性と言ったら破格で、でもだからこそ、シュールな物語とのギャップに、迷宮に入り込んだ錯覚に陥るという素晴らしい構成になっているのだ。ボウイの曲は、サックスなどが入ったジャズっぽいアレンジで演奏されることもあった。しかし、それぞれの曲が、その時のシーンを見事に反映していた、というのも、興味深いところだった。そういう意味では、この舞台は、ボウイが一貫して描いて来た物語の延長線上にあるとも言える。TVスクリーンに映し出される奇妙な映像は、ニュートンの混乱した心理の混乱を映しだすこともあったし、またはメディアの混乱を映し出すこともあった。登場人物達の人格は、物語に複雑な視点を与え、物語を進行させる機動力となっていた。ダークなディストピア的な舞台は、ボウイらしい世界観であり、しかし、そこで展開される物語は、主人公の孤独、そしてだからこそ人と繋がりたいという思い、そして愛。しかし、その愛が不条理な暴力によって破壊されることについてである。ただ、主人公は、最後に、美しく悲しい結末を迎える。「ヒーローズ」に終わるこの物語で、ボウイは地球に対して何を言いたいのだろうと思わせるエンディングでもある。

ボウイは、これまで自身が様々なペルソナになって、時代の物語を反映してきた。ここで映し出された世界観というのは、恐らく彼に今見えているカオス化した世の中を映し出す物語であり、それがあまりに混乱しているため、ミュージカルというある種大げさな物語にまでして語る必要があると思ったのだろう。そして、この物語の出発点となった「ラザルス」が新作『★』にも収録されているように、このミュージカルと新作には、兄弟のような親密な関係性があるのではないかと思うのだ。ジャズ的なサウンドで世界の混沌を表し、しかし、その力強い曲が観客に光となるような、ボウイの新たなペルソナの地球への帰還を益々期待させてくれるようなミュージカルだった。

Text by Akemi Nakamura
Photo:Jan Versweyveld、Jimmy King

【『ラザルス』で使用された楽曲(※舞台使用順)】
01.Lazarus(新曲)
02.It’s No Game
03.This Is Not America
04.The Man Who Sold the World
05.No Plan(新曲)
06.Love is Lost
07.Changes
08.Where Are We Now?
09.Absolute Beginners
10.Dirty Boys
11.Killing A Little Time(新曲)
12.Life On Mars
13.All the Young Dudes
14.Always Crashing in the Same Car
15.Valentine’s Day
16.When I Met You(新曲)
17.Heroes

「ラザルス」(Audio)
https://youtu.be/ZSt9RDIIa0k

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