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耐震装置不正に見る「モラルなきニッポン」 下請会社も検査会社も目先の私欲だけで動いていた

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京都市で今年8月、橋の落下防止装置に重大な手抜きが見つかった。これを受けて国土交通省が全国の橋を調べたところ、同様の装置に問題が発覚した橋は、なんと45都道府県の556橋にものぼった。うち400本は意図的な不正だという。

不正を行っていた12社のうち、全体の6割を占める357か所に関わっていたのが、福岡市の久富産業だ。12月16日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)では、この会社の現役作業員が実態を告白していた。
検査に回すもの以外は「手抜き」でコスト削減

T字型の落下防止装置は、橋の耐震化のために使われる。「ガウジング」という溶接工程を経て高い強度となるが、それを省くと4割ほどのコスト削減になるというが、国交省の試験結果はそれでは安全性が保障できないとしている。

「やっぱりこの問題はちゃんとけじめをつけないといけない」と番組の取材に応じたAさんは、久富産業で働く現役作業員。内部資料「製造工程表」には、防止装置の個数が「2ケ(1ケ)」とあるが、Aさんはこの意味をこう証言した。

「1つは完全なものにして、1つはガウジングなし(手抜き)で、そのまま溶接するということです。みんな上からの指示で工程表・予定表が来て、それに従って品物を作成する」

カッコ内の数字が正しい溶接で検査に回す数だ。他の欄には「16ケ(2ケ)、3/25の検査に最低2個は用意する」「64ケ(8ケ)」という記載もあった。

20年以上前からコスト削減のために行われており、「このやり方ではまずい」と上司に意見した人も何人かいたものの、「あなたたちは上の指示に従っていればいい」という言い方をされただけだったという。

こうした不正は検査で見抜けるはずだが、問題となった工事には不正の温床となる構図があった。通常は国などの発注元から橋の工事を依頼された元請け会社が検査機関を決定するが、材料を納入する「下請け」の久富産業が検査のやり方の多くを任されていた。
検査会社「顧客の要請を拒絶することはできなかった」

久富産業は検査会社を自ら指名しており、検査を行った北陸溶接検査事務所は、久富産業が「お客様」という認識だったという。久富産業側から「検査で不良品が発見されてもその場では指摘しないでほしい」と事前に要請もされていた。

検査事務所は「正式な検査という認識ではなかった」とした上で、不正に関わった動機を次のように説明した。

「久富産業は弊社にとっての顧客であるとの認識でいたため、同社の要請を拒絶することには、強い抵抗感を感じていた」

結局「検査」とは名ばかりの「お客様のための仕事」になってしまっていたのだ。解説した岡安弥生アナによれば発注元や元請けの検査もあったというが、検査会社によってデータが改ざんされてしまったそうだ。

首都高速道路技術センターの高木千太郎氏は、業界全体がこうではないが、一部でこうした体制があることも認めた。国交省は「通常の通行には問題がない。5年くらいかけて直していく」として、抜き打ち検査も検討している。
みんな自分の生活のためにモラルを忘れたふりをしている

久富産業が問題工事の約6割を占めていたことは、割安な材料で受注機会が増えたと考えると不思議ではない。それを選んだ元請けや、チェック体制が甘かった発注元にも責任がある。そして元請けや発注元は、すべての検査を自ら行うのは「コストがかかる」と言うのではないだろうか。

久富産業は番組の取材に対し、不正の理由を「受注先からの納期について厳格な制限があったためです」とFAXで回答し、元請け会社の要求に応えなくてはならない弱い立場を訴えていた。

そして作業員は「上の言いなりになるしかなかった」と言い、検査会社は「お客さん(久富産業)に逆らえない」と弁明している。真相は藪の中だが、各々の言い分を聞いていると、みんな自分の生活のために誰かのせいにして、モラルを忘れたふりをしているように見えた。(ライター:okei)

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