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「マンション管理」、住民主導でここまでやっちゃう!?

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JR千葉みなと駅近くにある438世帯の大規模マンション「ブラウシア」は、2005年完成、今年築10年を迎えた。 当初は組織としての主体性も、運営方針も、ノウハウもなかった管理組合が、今では住民主体で積極的に改革をしていくマンションに変貌した。今回はその秘密を聞いてみることにした。【連載】マンション管理の今とこれから
マンションは年齢も職業も考え方も異なる多様な人々が暮らす場。住民の管理に関わる意識の低さ、住民間トラブル、修繕積立金の不足など、マンション管理の維持・運営には苦労や問題がつきまとう。一方、自分たちのマンションをより快適にすべく、理事会に積極的に参加する人も増えてきた。マンション管理の今とこれからについて、さまざまな事例や考え方を紹介していきます。プロのマンション管理士のアドバイスで理事たちの”やる気”にスイッチが

それまで特に積極的に管理組合を運営していたわけではないブラウシアが、管理組合の運営について真剣に取り組みだしたのは、わずか5年ほど前のことだ。「もともと当時の管理会社に設備の不具合への対応や管理業務などで問題を感じていたのですが、決定的だったのは東日本大震災直後の対応の悪さですね。震災でエレベータ―が止まっても、役員はもちろん、任せていたはずの管理会社の管理員も対処の方法が分かっていない。最終的に管理員が業務放棄してしまった。このまま管理会社任せではまずいと痛感しました」と語るのは9期~10期の副理事長を務めた高田豪氏。

そんなとき、ある理事がテレビ番組『ガイアの夜明け』でマンション管理士のプロとして出演していた深山州氏に相談することを思いついた。プロのアドバイスで改革のビジョンが見え始めたが、コンサルタント契約をするに当たって深山氏は「改革に手を付けた今期の理事が来期も何人か残ること。そうでなければ仕事を受けない」という条件を出したそうだ。そこで当時の役員たちのほとんどが、腹をくくり次の期も続ける覚悟を決めた。そこからブラウシアの管理体制は変わった。1年交代制だった役員についても2年任期の半数交代制に改正した。

結果的に管理会社は変えることはできたが、問題の解決には自分たちが主導権を握る必要があると痛感した。「管理会社を変更したところで、何もかも管理会社に任せていてはいけないとみんなが気付きました」。問題の解決に取り組むことで、結束力が高まっていった例は多い。ブラウシアでも、管理は管理会社からの提案を待つのではなく、自分たちが決めたことに管理会社に協力してもらうという姿勢に変わった。少人数のグループ化をすることで責任とやる気が出る

大規模マンションなだけに、一部の役員の情熱だけでは管理運営はうまくいかない。役員の中でも温度差はあるだろう。役員は理事長が1人、副理事長が3人、役員全体では20人になる。「管理組合の仕事を洗い出し、各理事の担務明確化、また、管理運営を管轄する4つのグループと自治会運営をするグループの計らグループをつくりました。少人数のグループで責任を持って仕事に取り組むと、面白さややりがいが生まれ、各々が積極的になっていきました」と8期~10期の理事長を務めた八柳博氏。

また2013年にマンションの基本理念を策定した。短期間に役員が入れ替わる管理組合であれば、そのときの役員の意向によって管理運営が右往左往する可能性がある。基本理念は会社でいうと経営理念や経営ポリシーに該当するもの。管理組合として理念を掲げることで、みんなが同じ目的に向かって組織を運営していくことができる。何かを決めていくときの方針がぶれず、スピーディーに対応できる。

ブラウシアの理念は「ブラウシア管理組合は、強固なコミュニティをベースとし、終の棲家として充実したマンションライフを実現する」。この理念を運営の基礎とし、以下のビジョンも考えた。

●活気ある、笑いのあふれるコミュニティライフ
●安心・安全で、住み心地良い居住環境
●終の棲家として、いつまでも信頼できる建物・設備

さらにビジョンを実現するための「行動指針」も定めているそうだ。これらは、管理規約の前文にあり、理事が交代しても、居住者が変わっても、常に管理組合運営の道しるべになる。長期的な視野で管理運営がなされるということだ。現在では、理事経験者によるオブザーバー制度やそれぞれの分野のプロが集まるプロフェッショナル制度など、役員以外でも管理を見守って協力する体制が整っている。目に見える成果を上げることで、住民の意識も変わっていった

役員だけでなく住民全体に管理の大切さを実感してもらうために「目に見える成果」も大切にした。年々衰退していた敷地内の植栽は、長期的な視点でマンションの庭を考えてくれるパートナーを探した。2012年の総会で「ブラウシア植栽5カ年計画」が承認された。見る見るうちに緑は息を吹き返し、マンションの大きな財産でもある庭が見違えることになった。

【画像1】手入れする前の庭の様子。芝もまばらだ(画像提供:ブラウシア管理組合)

【画像2】「ブラウシア植栽5カ年計画」が承認後に手入れされ、息を吹き返した庭。住民が集まる場になった(画像提供:ブラウシア管理組合)

エントランスのラウンジも、当初、使い方のルールがほとんどなく、活用法についても決まっていなかった。築10年目が近づき、ラウンジのソファを新品に交換することになり、その検討を行う際に「せっかくだからラウンジの使い方そのものも考えよう」と話し合った。現在では、新聞、本、美味しいコーヒーが置かれるようになり、ここで過ごす住民が増えている。

また新しく入居する住民には「ウェルカムガイドブック」を用意、管理組合によるオリエンテーションで迎える。新住民にとっての生活での不安などが払拭できるうえ、運営している人の顔が見える場は、大きな安心感になるだろう。他にもたくさんの試みで、管理による「目に見える成果」は上がっていった。ハードルの高い長期修繕計画の変更も2年をかけて賛成多数に

数々の改革の中でも、特に住民全体の合意がなければ難しいと思われるのが、修繕積立金の徴収方法の変更だ。通常マンションの修繕積立金は、築年数が浅いときは低額で、年数が上がると段階的に金額が上がっていく方式だ。同マンションもその方式だったが、30年だった長期修繕計画を54年に延ばし、どうせいつかあげる必要があるならばと、段階的に上がらない、今も将来も同じ金額の均等積立金方式に切り替えた。また、万一の震災などに備えるための災害用備蓄費も確保することにした。結果的に拠出額は現状の2倍になったが、将来の見えない不安は遠のいたはずだ。

理事会と長期修繕委員会が約2年をかけて出したこの提案には、これまでにない住民からの反対意見や質問が寄せられたという。これらの意見に耳を傾け、一つずつ検討しながら、最終的に賛成多数で承認を得ることができたのも、日ごろの活動に対する信頼だろう。「自分の家だと思えればあたりまえのこと、住民みんながそう思ってくれたということですよね」と長期修繕委員長を務める南正信氏は話してくれた。

改革がうまくいっているマンションも黎明期は相当苦労していることが分かった。そして苦労や壁を突破できるのは「人」である。それは一人ではなく「仲間」である。同じ志を持つ、文字どおりの同志がいることが大事。今回集まった9人の志士の方々の多くはサラリーマン。

異口同音に話してくれたのは「役員になって職場以外の仲間をつくることができた」という意見だ。自分の得意分野のことで人の役に立ち、評価もされる。「毎日、メールで相談し合っています。会社でもなく、家でもない、もう一つの自分たちの居場所があるというのは心強いですよ」

昨今、パラレルキャリア、ワークライフバランスという言葉を耳にするが、マンションの理事業というのは「旬な仕事」なのかもしれない。であるならばこの若いサラリーマン理事たちによる、住民主導のマンション管理革命は、今後も広がっていくのかもしれない。

【画像3】今回の取材に協力いただいた理事のみなさん。クリスマスイベント中の1枚(画像提供:ブラウシア管理組合)●取材協力
ブラウシア管理組合
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/12/15/102795/

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