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一億総活躍社会 国民に活躍期待するより政治家が汗流し活躍を

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 安倍晋三首相が放った新たな三本の矢は「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」である。長野県の諏訪中央病院名誉院長の鎌田實氏は、この新三本の矢は、「一億総活躍社会」というキャッチフレーズとともになんとも耳ざわりのいいものだが、それに伴って掲げられた数値目標については掘り下げた議論と実践が不可欠だと訴えている。

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 安倍政権が掲げた「希望出生率1.8」。希望出生率とは、初めて聞く言葉だ。未婚女性の9割が結婚を望んでいるという意識調査を基にはじきだした数字だそうだ。

 一般にいう出生率は「合計特殊出生率」のことで、一人の女性が生涯出産する子どもの数を推計したものだ。現在の合計特殊出生率は1.42。これをどうしたら1.8に近づけていくのか。かなりドラスティックな子育て支援を展開していかないと、実現するのは難しい。

 まず保育所の待機児童の問題である。待機児童をゼロにするにはあと約7万人の保育士が必要となる。介護士の給与もそうだが、保育士の給与も、一般のサラリーマンに比べて月10万円程度低いといわれている。介護士も保育士も待遇の見直しをしないかぎり、簡単に人材の確保はできないのではないか。

 そもそも産みたい人が、産めない理由は何なのか。人によって理由はさまざまだろうが、根底には経済的な問題があるように思う。

 いまの政権は企業側に立った制度改革を行なってきた。その結果、非正規社員は4割を超えてしまった。非正規雇用に多い、経済的に不安定な状況は将来設計を立てにくい。これでは結婚は難しいし、結婚したとしても、子どもを産み育てるお金がない。

 しかし、政府は相変わらず企業にはやさしい。法人税の実効税率を32.11%から31.33%にする予定だったのを、さらに20%台にしようと考えているようだ。

 企業には354兆円の内部留保がある。企業の一人勝ちで、サラリーマンの給与はいっこうに上がらない。当然、個人消費も上がらない。安倍政権が発足した2012年の冬と比べて、個人消費は2兆円も減っている。これでは結婚して子どもを産もうという気持ちにはなかなかなれないのではないか。

 あいまいな「夢」「希望」「安心」というフレーズを、地に足着いたものに変えていくには、明確で具体的な目標設定に向け、掘り下げた議論と実践が不可欠だ。

 国民に「活躍」を期待する前に、政治家が「それぞれの希望が叶い、それぞれが生きがいを持てる社会」を実現するために汗を流し、「活躍」してもらいたいものだ。

 子どもを産み育てやすい環境や、長生きを心から喜べる社会になれば、安倍さんに言われなくても、おのずと「希望」や「夢」「安心」は生まれるものである。

※週刊ポスト2015年12月25日号


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