マンション暮らしの“人づきあい” どの程度必要?

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マンション暮らしの“人づきあい” どの程度必要?

「マンションの管理にはコミュニティが大切」とは、最近よく耳にするテーマだ。同じ屋根の下で暮らすうえでの心配りは重要だが、そもそも人付き合いが得意な人もいれば苦手な人もいる。マンションの快適な暮らしに必要なコミュニティとは一体何か、そのことについて考えてみた。【連載】マンション管理の今とこれから
マンションは年齢も職業も考え方も異なる多様な人々が暮らす場。住民の管理に関わる意識の低さ、住民間トラブル、修繕積立金の不足など、マンション管理の維持・運営には苦労や問題がつきまとう。一方、自分たちのマンションをより快適にすべく、理事会に積極的に参加する人も増えてきた。マンション管理の今とこれからについて、さまざまな事例や考え方を紹介していきます。よく言われる“コミュニティ”とはなんなのか

私が住むマンションでも年に1回、防災訓練が実施される。区の消防署の協力を得て、消火器の使い方や避難経路の確認をするが、当日集まるのはほぼ決まった顔である。どうしても理事会経験者が中心になるようだ。「コミュニティ条項」が取り沙汰(※)されているが、防災訓練や総会がコミュニティの場なのだろうか。それともマンション内で仲良く集うことがコミュニティの場なのだろうか。モヤモヤした気持ちを晴らすべく、先日開催されたマンションコミュニティ研究会(代表:廣田信子氏)の5周年記念フォーラムに参加してみた。

 (※)国土交通省がマンションの新たな管理ルールのあり方について見直しをはかる検討会の中で、マンション管理の標準的なガイドラインの中から「コミュニティ形成」に関する条項を削除する案を報告した

今回参加したフォーラムの趣旨は“住民が安心して暮らすための、管理組合運営の仕組みについて考える”というもの。

メインテーマは「マンションの豊かな未来への提言」とされ、パネリストは4人の方々である。
(1)「マンションの住環境を守るガバナンスと相互交流」千葉大学教授 小林秀樹氏
(2)「既存マンションの長寿命化と再生への指針」全国マンション管理組合連合会会長 山本育三氏
(3)「人口減少時代とマンション管理」弁護士 篠原みちこ氏
(4)「新たな資産価値、居住価値創造への取り組み」有明マンション連合自治会会長 星川太輔氏仲良しになる必要はないけれど「顔見知り」であることは大切

最初に伺った、小林氏の「マンションのコミュニティ形成に必要なのは<テリトリアリティ(領域性)><ガバナンス(統治)><軽い扶助>の3つの観点である」という提言が、今回の私の疑問に分かりやすい答えをくれた。

テリトリーとは、自分の場所だと思い、コントロールできる一定の空間、つまりナワバリのようなもの。そして人間関係が希薄化する現代においては、密接な近隣交流を取り戻すよりも、最低限必要な共通のナワバリを認識しあう「顔見知り」関係をつくることが大切という。

顔見知り度が高いと防犯上の安心が高まり、挨拶をすると近隣騒音トラブルが減ることが、それぞれ証明されているそうだ。私の実感としても、以前の住まいで、区の警察の方から「この団地は皆さん挨拶されるので、泥棒には狙われにくいですよ」と太鼓判を押された経験がある。また顔見知りの子どもの泣き声は、見も知らぬ子の泣き声より気にならないことが多い。大切なのは管理会社任せではなく、“わがコト”として理事会が主体となること

さらに管理組合に求められるのは、仲良しコミュニティではなくガバナンス(健全な統治)であるという説も腑に落ちる。コミュニティは大切だが、仲良し軍団になることが本質ではない。そのためには民主主義の場としての認識を各人が持つ必要があり、役員の経験者を増やしていくことが重要だ。

その具体例としてブリリアマーレ有明の理事長である星川氏の取り組みは面白い。共用施設をさまざまなチャレンジで活性化、積極的に理事になりたいという姿勢の住民が増加している。また篠原氏からは、さまざまなマンションの例を挙げて、役員のなり手不足への対応が提案された。

さらに山本氏からはマンションの老朽化を、「マンション建替え円滑化法」だけではなく「マンション再生法(※)」の設立が急務であるとの提案があった。

 (※)NPO法人全国マンション管理組合連合会が2010年に提言したもの。既存マンションを時代にあわせて再生し、より長寿命化を図ることを目的としている

いずれも、そこに必要とされるのは、マンションの管理を住民が「わがコト」として取り組むために、お互いの存在を認め合える程度のコミュニティが必要になるということだろう。理事会が管理会社からの提案をそのまま受け入れて合意形成を取るのではなく、理事会が主体となり管理会社に要望すること。そのためには戦略的な意思決定、管理組合の総会で合意形成ができる組織になっていることが重要だ。そうすれば災害時には一致団結して危機を乗り越えられる。本当の意味での防災の備えになるはずだ。

私自身、初めて購入したマンションは若かったこともあり、理事会には参加せず、数年後に売ってしまった。2回目に購入したマンションは、老朽化により設立された建替え委員会に参加したために、今でも住み続けている。時間はたくさん取られたが、勉強にもなり、顔見知りも増えた。正直、最初は面倒だと思っていたが、マンションに対する愛着は格段に大きくなった。年中集まるような「仲良し」ではないが、会えば挨拶を交わす人は多い。星川氏が「マンションの理事長になるのは、自分のためにもなるから、やってみた方がいい」と仕事の先輩に勧められたと話してくれたが、まったくその通りだと実感できる。●参考
・マンションコミュニティ研究会
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/12/11/102420/

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