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旅人は平和の伝書バトになり得るのか?旧ユーゴの旅を通じて

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Photo credit: Koichiro Albus Victor「いざ、ボスニアへ Bosnia and Herzegovina」

こんにちは、TRiPORTライターの新田浩之です。
今回は旧ユーゴ諸国の旅を通じて考えたことを書きたいと思います。旧ユーゴ諸国の中でも、骨肉の争いを行ったクロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビアに焦点を絞ってみました。

そもそもクロアチア人、ボスニア人、セルビア人は何が違うのか

本格的な話に入る前に、クロアチア人、ボスニア人、セルビア人の概要と「違い」を説明します。これら3民族はロシア人やポーランド人と同じスラヴ民族に属し、その中でも南スラヴ族にカテゴライズできます。そのため、外見だけではクロアチア人、ボスニア人、セルビア人を見分けることは、ほぼ不可能。おそらく、地元の方でも無理だと思います。

それではどこに「違い」があるのでしょうか。一つ目は「宗教」です。クロアチア人はキリスト教のカトリックを信仰しています。セルビア人はギリシャ正教の流れを汲むセルビア正教を信仰。そしてボスニア人はイスラーム教を信仰しています。宗教が異なると、それが文化に反映されるので、街並みにも違いが出てきます。

二つ目は「文字」です。実際に、クロアチア語、ボスニア語、セルビア語とありますが、文法に関してのみ言えば、大きな違いはありません。それゆえ、お互いに意思疎通はできます。ただし、使用する「文字」が異なります。クロアチア人とボスニア人が使用するのは英語と同じアルファベット。しかしセルビアではロシア語と同じ「キリール文字」が公式の文字になっています。

これらの「違い」が政治家に利用され、25年前の紛争において「兄弟殺し」を招く大惨事に繋がったのです。

筆者撮影

本当にお互いを嫌っているのか

旧ユーゴ諸国で出会った日本人の旅人の多くは、口を揃えて「ボスニア人はセルビア人を嫌っている」とか「クロアチア人はセルビア人を嫌っている」と言います。さて、本当のところはどうなのでしょうか。

まずは、ボスニア・ヘルツェゴビナのヴィシェグラードで、セルビア人から話を聞くことができました。ヴィシェグラードはボスニア・ヘルツェゴビナ領ですが、セルビア人の居住エリアに属します。世界遺産、ソコルル・メフメト・パシャ橋で有名な町です。

ここで、私は「SOBE」と言われる民家に泊まりました。オーナーはご年配のセルビア人夫婦です。いきなり民族間の質問をするのも失礼かと思い、まずは旧ユーゴ時代の歌を共に歌い、「旧ユーゴカラオケ」を楽しみました。その後、Google翻訳を使って、民族間のことについて聞いてみました。

まず私は「再び様々な民族が共存できる国、町になることを望みます」と、考えを伝えました。すると夫婦は深く頷き、自分たちもそれを望んでいると語ってくれたのです。

筆者撮影

次に、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都、サラエボへ。ここではボスニア紛争に関するツアーに参加。ボスニア人のツアーガイドは40代の男性で、紛争のことを客観的に説明してくれました。

そして最後に熱く、こう語りました。「この国は眠っている資源が豊富にある。3民族が力を合わせれば必ずいい国になるに違いない。後は政治だ」と。それを聞いた私は、ボスニア・ヘルツェゴビナの発展を願わずにはいられませんでした。

最後にクロアチア。今回は有名な観光地として知られるドブロブニクに寄りました。ドブロブニクのホステルで若い女性のオーナーと、セルビアとの関係について語りました。最初、彼女は「セルビア人は嫌い」と言ったので、私はヴィシェグラードでのセルビア人夫婦との出来事を話すことに。すると彼女は静かに「もちろん、本音ではセルビア人と仲良くやりたい。しかし、セルビアの政府はアグレッシブだから、なかなか難しい」と答えました。

全体を通して、表面的には嫌っているように見えても、本音では「仲良くしたい」という気持ちがヒシヒシと伝わってくるような旧ユーゴ諸国の旅のでした。

筆者撮影

旅人は平和の伝書鳩になり得るのか

最後に、この問題について考えたいと思います。確かに、旅人はその土地に住んでいないので、地元住民より情勢に疎いのは当たり前でしょう。しかしその分、客観的に状況を見られるので、また違った観点から意見を述べることができます。

おそらく、敵対している者同士ではなかなか話し合うきっかけはを掴みにくいでしょう。そこで、旅人が地元住民の話を聞き、相手住民に伝える。そうすると、住民にとっては何かの「きっかけ」になるかもしれません。その後の「平和」は住民同士が作り上げればいいわけです。

「旅人は平和のきっかけを作る存在になり得る」。これが旅を経験して導き出した私の結論です。

文・写真:新田浩之

クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビアの旅行記はこちら

*Sougaku「SF巨大コンクリート記念碑】スポメニック Spomenik その3」

*Koichiro Albus Victor「いざ、ボスニアへ Bosnia and Herzegovina」

*Shohei Watanabe「セルビア共和国 ユゴスラビア完全解体。ベオグラード。」

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