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規制を超えて進むドローンの本格活用。西脇資哲氏はドローンにどんな夢を見るのか──

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ドローンを自分で試して、ビジネス可能性を探る

今回、多摩川河川敷で飛ばしたドローンは、中国DJI社の「Phontom3」だ。


ドローンを飛ばしているのは、CodeIQでもモデルを務めてくれているゆかちぃこと、河村友歌さん。

生まれて初めてプロポ(リモコン)を触るが、「かわいい!」「面白ーい」と言いながら、結構巧みに操作する。

ドローンを川縁の平坦な場所に接地させてから、軽く上昇。ドローンはまるで忠実なロボットのように、頭の上でホバリングしながら、その指示を待っている。

レバーを前に倒すと、ぎゅーんと川面すれすれを加速して、あっと言う間に点になる。青空に白い筐体がきらきら映える。

急上昇したドローンを、餌をついばみにきた野鳥の群が、「縄張りを荒らす外敵発見!」とばかりに執拗にを追いかけてくる。

「気持ちいい!」──歓声が挙がる。

実はこんなふうに素人が自由にドローンを飛ばせるのは、2015年の12月9日まで。10日の改正航空法施行で、東京23区や地方の主要都市など人口集中地区での飛行が原則的に禁止されたのだ。この写真は直前の12月1日に撮影したものなので、なんとか滑り込みセーフというわけである。

このドローンの持ち主は、西脇資哲氏。日本マイクロソフトの業務執行役員でエバンジェリスト。前職の日本オラクル時代から、プロダクトマーケティングのプロとして知られる。

最近では、ドローンを日本に普及させ、ドローンのビジネス基盤を構築するため、全国を東奔西走するドローン・エバンジェリストとして有名だ。

自前で購入したドローンは、2015年までに19台。一番高いのは75万円もしたそう。これが2016年には「40機ぐらいにはなるんじゃないか」と予想する。産業界のドローン活用への関心が高まるにつれ、その一歩先を行く西脇氏のドローン熱も当分収まりそうにないのだ。

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「12.10規制」が意味するもの──安定したビジネスが離陸する

12月10日から始まった「ドローン規制」の内容をおおまかに整理すると、まず東京23区など国が人口密集地と定めた地域や空港周辺での飛行には国の許可や承認が必要になる。

地上から150m以上の空域やイベント会場上空、夜間飛行や、肉眼で見える範囲を超えて遠くまで飛行させる場合も申請が必要だ。

申請にあたっては飛行目的や飛行ルート、使用するドローンの製造番号などを届け出る必要があり、操縦者には10時間以上の操縦経験が求められる。

「せっかく盛り上がったドローン人気に水を差すもの」という声もなくはない。

西脇氏も「心理的なハードルにはなる」としながらも、「安心して安全にビジネスを広めようとするためには、何らかのガイドラインが必要だった。こうした規制はドローンビジネスが拡大するにつれ、それに対応して変わるべき。航空法は今後も改正を続けるべきだ」という。

最初はラジコン操縦と同様のホビーとして広まったドローンだが、このところ急速に産業用途として注目されている。産業化が進むと、その利用が免許制や登録制になるのは当然の流れだ。自動車に車体登録や運転免許があるように、ドローンもまた“公認”されることによって、安全が確保され、安定した産業ツールになる。

西脇氏が挙げる、ドローンを活用している、あるいはいますぐ活用すべき産業は、観光・建設土木・農業・スポーツなどだ。

「建設土木分野ではすでにドローンで写真を撮影する技術が広まりつつある。ドローンを使えば建設地の3Dモデルがわずか半日で完成する。農業も生育状況を精密に観察できるようになる。ドローンは“精密農業”や“スマート・コンストラクション”という新しいビジネスを生みつつある」という。

さらに、救命救難、防犯防災などの分野にもドローンは有用だ。損保会社は、大規模災害時に被災地状況を確認するため、ドローンを飛ばす実験を重ねている。

西脇氏は最近、東北の震災津波被災地でドローンのデモを行ったとき、「これが“3.11”の前にあったらよかったのにねえ」と現地の人にしみじみ言われたという。

もしかしたら流されている人の前に浮き輪を落とすことができたかもしれない、薬を運べたかもしれない、被災状況を動画ですぐに確認できたかもしれない……。

「空飛ぶスマホ」のためにITエンジニアができることは

「そもそもエンジニアって、自分が制御して動かすオモチャが大好き。ドローンはこれまでのオモチャを超越しているから、ドローンに触れると、ITに限らずエンジニアの人はみな興奮する」と西脇氏。本人もそうやったハマった一人だ。

ドローンのコア技術と呼ばれるものがいくつかある。ジャイロセンサ、GPS、映像制御などを使った姿勢制御がまず重要で、これはこの数年格段に進歩した。登載カメラの安定化、高画質映像の伝送技術も十分実用化されている。

ドローンの応用が進むと、カメラ以外のもの、たとえば重い荷物を運ぶようになるが、コンパクトな筐体で重い荷物を長時間飛ばすためには、プロペラやバッテリーの改良が求められている。

ハードウェアだけでなく、IT・ソフト分野の技術者にも、ドローン技術への貢献が期待されている。

「今後は手動遠隔操縦ではなく、自動操縦、自動航行が当たり前になる。コンピュータでプログラミングを組んで、一定の目的を果たしたら自分で帰ってくる。アメリカでは上空を飛ぶすべてのドローンを航行履歴を管理するシステムもある。こうした航行管制技術や、撮影画像の管理技術でもIT分野の技術が活かされる余地は大いにある」(西脇氏)

ドローンの機体メーカーは世界に無数にあるが、OSがばらばらなまま標準化されていないのが、今後の普及の妨げになるのではないかという声もある。

「ただ、OSなどのコア技術はいずれコモディティ化するので、それを気にする必要はない。OS、ジャイロ、GPS、Wi-Fiなどドローンのコア技術は言い替えれば、スマートフォンの技術。ドローンは“空飛ぶスマホ”だと思えば、エンジニアはみな何かやりたくなるんじゃないか。スマホが私たちのインターネット体験を革命的に変えたように、いまドローンが空の産業革命を進めようとしている。ITの人にもその変化を後押ししてほしい」と西脇氏はけしかける。

世界シェアの6割以上を占める中国DJI社は広東省深センにあるスマホ部品メーカー。その製造ノウハウをドローンに活かした。

内部技術は完全にクローズしているが、それでもビジネス参入が他社より先行したため、これだけのシェアを獲得した。

これに対抗して、アメリカの3Dロボティクス社は、オープンソースのコミュニティを形成して、ドローンビジネスを開始している。

日本のメーカーも出だしは後れたが、なんとか追随しようとしている。

「中国の独自技術が勝つか、アメリカのオープンソースが勝つか、それとも日本か。この1年が見物。私は実はどっちでもいい(笑)。どこのメーカーのどの機種が広まっても、ドローンが広まれば面白いことが始まるんですから」

2015年がドローン・スタートの年だとしたら、2016年はその利活用の元年になる。まだドローンに触ったことがない人がいたら、ぜひ触れるべき。西脇氏も言う。

「実際に飛ばしてみれば、技術的に何が重要か、何がこれから必要か、これを使えばどんなビジネスが可能になるか、そういう気づきがきっと生まれるはず」

(執筆:広重隆樹 撮影:刑部友康)

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