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今週の永田町(2015.12.3~9)

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【野党、閉会中審査で高木大臣の疑惑を追及】

先週3日、衆議院では、交渉参加12カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意の内容と国内対策などをテーマに衆議院内閣委員会・農林水産委員会の連合審査会、くい打ち工事の施工データ不正問題などをテーマに衆参両院の国土交通委員会、9月の関東・東北豪雨災害をテーマに衆議院災害対策特別委員会でそれぞれ閉会中審査が行われた。ただ、閉会中審査の質疑時間は短く、野党側の質問が途中で時間切れたり、議論が平行線をたどるなど、政府を追及しきないまま終わっている。

 

TPP交渉をめぐっては、民主党などが、関税削減やコメの輸入枠拡大が盛り込まれたTPP交渉の大筋合意と、農産物の重要5項目(米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖など甘味資源作物)の保護などを求めた2013年国会決議との整合性や矛盾を追及して、「聖域確保ができない場合、交渉脱退も辞さないとした国会決議と整合していない」などと批判した。これに対し、政府側は「(国会)決議を後ろ盾にして最大限勝ち取った。どう評価するかは国会の判断」(甘利TPP担当大臣)と交渉結果の妥当性などを強調した。

また、野党側の質問者全員が、閉会中審査で「衆議院か参議院のいずれかの4分の1以上の議員が要求した場合、内閣は召集を決定しなければならない」と規定する憲法53条にもとづいた要求であることなどを強調して、臨時国会の召集を求めた。民主党の岡田代表は、参議院の厚生委員会や環境委員会が前委員長の閣僚就任に伴って委員長不在になっていることを問題視して、「委員長がいないから閉会中審査ができない。臨時国会を開かないためにこういうことになっている。緊急事態が生じた場合にどうするのか」(3日の記者会見)などと、臨時国会の召集に応じない政府・与党を批判している。

 

8日には、高木復興担当大臣が出席する衆議院東日本大震災復興特別委員会の閉会中審査が開催された。野党側は、先月の閉会中審査でも取り上げた高木大臣の疑惑を質した。高木大臣には、自身が代表を務める自民党支部と資金管理団体が公職選挙法で禁じている選挙区内の葬儀での香典・枕花代の支出を政治資金収支報告書に記載していた問題や、高木大臣の資金管理団体が2014年に赤飯代約40万円を支出していた問題などの疑惑が次々と発覚している。

高木大臣は、7日の記者会見で、2011~14年に自らの政治団体などから選挙区内で230件・計185万円の香典支出があり、私費で支出していた57件・計45万円分について収支報告書を訂正したことなどを明らかにしたうえで陳謝した。特別委員会の閉会中審査でも、政治資金支出の違法性や窃盗疑惑を事実と繰り返し否定するとともに、「お騒がせして申し訳ない。襟を正して復興担当大臣としての仕事をまっとうしていきたい」と、辞任を否定したうえで復興の加速に取り組む決意を示した。高速増殖原型炉もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構の業務を請け負う企業が高木大臣のパーティー券を購入していたことについては、「私の政治姿勢、信条、復興担当大臣の仕事に何ら影響しない」と釈明した。

 

こうした高木大臣の答弁に、野党側はいまだ疑惑が払拭されていないとして、徹底追及する姿勢を崩していない。「復興の加速策は、復興担当大臣がいますぐ辞めることだ」(民主党の柚木衆議院議員)、「ずっと疑念を抱かれているのであれば、1回辞任して、すっきりした方が復興という政策目標のためにはいいのではないか」(維新の党の松野代表)などと大臣辞任を求めるとともに、偽証罪に問うことのできる証人喚問も要求している。

来年1月4日にも召集される予定の通常国会でも野党側が取り上げる方針を固めており、通常国会や夏の参院選にも影響しかねないといった懸念から、政府・与党内では、高木大臣の進退論がくすぶり始めている。参議院東日本大震災復興特別委員会・原子力問題特別委委員会での閉会中審査が11日に予定されており、高木大臣が政治資金問題について十分に説明できなければ、高木大臣の進退論が再浮上する可能性もあるとの見方も出ているようだ。

 

 

【補正予算案、18日にも閣議決定】

 政府・与党は、1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策やTPP対策大綱などを盛り込んだ補正予算案や、来年度予算案の編成作業を本格化している。

政府は、補正予算案を12月18日にも閣議決定のうえ、通常国会冒頭にも提出する方針だ。3.3兆円規模で編成する方針で、財源として昨年度決算剰余金(約2.2兆円)や、法人税・所得税や消費税など今年度予算の税収上振れ分(約1.9兆円)などを充てる。財政再建への懸念が強まることを避けるため、2015年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を半減する目標を堅持し、国債の追加発行は見送り、国債新規発行額を2015年当初予算編成時より約4500億円分を減額する。

 

1億総活躍社会の実現に向けて緊急性の高い事業約1.2兆円を計上する。具体的には、来年前半の民間消費の下支えや生活支援を目的に低所得の年金受給者約1100万人(65歳以上で住民税の非課税世帯など)に1人あたり約3万円を支給する臨時給付金(約3400億円)のほか、地方創生加速化交付金(約1000億円)、介護施設整備(約900億円)、保育士の確保(約800億円)、保育所などの整備前倒し(約500億円)、介護人材確保(約500億円)などが盛り込まれるようだ。臨時給付金は、来年10月ごろに65歳未満の障害基礎年金・遺族基礎年金受給者(約150万人)へも支給する方針で、来年度予算案に約500億円を計上する。

 TPP対策大綱関連として、農産品の輸出増加のための施策といった国内農家の競争力強化策など(約3000億円)を計上する。また、東日本大震災の復興事業の着実な推進と被災事業者の自立支援などに向けて復興特別会計に約7900億円の繰り入れ、9月の関東・東北水害の復旧や河川整備(約5000億円)、パリ同時多発テロを受けた緊急のテロ対策やテロ対応と2016年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)開催に向けた対策費(約140億円)なども盛り込む。このほか、2017年4月に消費税率10%への引き上げに伴って負担緩和策として導入する軽減税率に係る中小事業者向け相談窓口の設置など関連対策費(約170億円)、米軍再編にかかる経費(約760億円)、マイナンバーカードの早期交付(約280億円)も追加されるようだ。

 

 一方、来年度予算案の編成をめぐっては、国の一般歳出の多くを占める社会保障関係費の自然増を概算要求額(6700億円)からどこまで抑制できるかが一つの焦点となっている。財務省が約1700億円を削減するよう求めており、厚生労働省はその抑制分を医療サービスなどの公定価格「診療報酬」のマイナス改定でほぼまかなう方向で調整を進めている。

薬の値段などの「薬価」部分は、医療費全体で1.5%弱を引き下げる見通しとなった。厚生労働省は、医療費の抑制・適正化に向け、割安な後発医薬品(ジェネリック)の価格を、来年4月から先発薬の原則6割から5割に引き下げるほか、後発薬が10品目以上あって市場規模が大きいものは現行の5割を4割へ引き下げる。研究開発費がかかるバイオ医薬品は、現行の7割を維持される。患者の服薬情報の一元管理や服薬指導を手掛ける「かかりつけ薬局」の調剤報酬を手厚くする一方、特定病院の処方箋のみを集中的に受け付けている「門前薬局」の調剤報酬を引き下げるなどの見直しを行っているものの、医師や薬剤師の技術料など「本体」部分への切り込みは見送られるようだ。

 

 

【与党協議、軽減税率の品目などで平行線】

 12月10日をメドに2016年度与党税制改正大綱とりまとめるべく、与党の検討作業が大詰めを迎えている。安倍総理は、7日に開かれた政府・与党連絡会議で「法人税改革や軽減税率をはじめ、税制改革は大詰めを迎えている。取りまとめに向けて党の協力をお願いする」と、与党内の調整を急ぐよう指示した。

 

焦点となっている法人実効税率(国・地方)の引き下げ幅のさらなる上乗せをめぐっては、経済再生や企業の国際競争力向上、景気の底上げにつながる企業の投資拡大と賃上げを後押しするため、1年前倒しして2016年度に29.97%まで引き下げる。給与総額など企業規模に応じて課税する「外形標準課税」(地方税)の拡大と欠損金繰り越し控除の縮小を一部前倒しすることなどで税率引き下げの穴埋め財源を捻出する。外形標準課税の拡大に伴い、資本金が数億円レベルの中堅企業に対しては2016年度3年間、法人事業税の負担額が増えた分から25~75%を軽減する措置を設ける。

また、早期に20%台に引き下げる道筋を付けるため、政府・与党は、2018年度に29.74%まで引き下げる方針も固めた。設備投資減税の時限措置期限2016年度末で打ち切るほか、欠損金繰越控除の上限を2016年度から3年間で毎年5%ずつ縮小、購入した生産設備などを耐用年数に応じて費用に分割計上する減価償却制度の見直しなどで、恒久的な財源を確保するとしている。

 

このほか、医療費削減につなげるため、年間計1.2万円超の医療用医薬品から市販薬に転用した「スイッチOTC医薬品」を購入した額の一部を所得額から差し引く所得控除(控除限度額10万円)や、地方創生や中小企業支援につなげるねらいから、機械や装置など中小企業の新規設備投資を対象に、生産性向上の効果が見込めることなどの条件を満たせば償却資産にかかる固定資産税(市町村税)を3年間軽減する措置などが盛り込まれる。また、消費税率引き上げに伴う消費低迷を引き続き防止するとともに消費を喚起するため、大企業が接待・交際費のうち飲食費50%までを費用として認めて課税対象外の損金に算入できる特例措置や資本金1億円以下の中小企業が交際費800万円まで損金に算入できる特例措置を2018年3月末まで延長するようだ。

また、消費税率引き上げに伴って地方税の自動車取得税が廃止されることが決まっているため、それに代わる新たな自動車税制として購入時の自動車税と軽自動車税を拡充し、上乗せ分を低燃費車ほど段階的に税率が低くなる「環境性能割」を導入する方針だ。景気減速を回避する観点や国内販売落ち込みを懸念する自動車業界の懸念を払拭する観点から、全体として実質的に減税となるようなしくみとする方向で調整している。さらに、温暖化対策として森林整備を進めるため、国税に「森林環境税」(仮称)を創設する。個人住民税に上乗せするかたちでひろく薄く徴収するしくみにする方向で検討されており、導入時期などについて調整が続けられている。

 

軽減税率の制度設計をめぐっては、自民党と公明党が軽減税率の経理方式として、現行制度を一部変更して軽減税率導入時に請求書で軽減税率適用商品に印を付けて合計額の税率・税額を記す「簡易な経理方式」を採用し、一定期間を経過した後に納税額を正確に把握できる「インボイス(適格請求書等保存方式)」に移行することなどで大筋合意したことを受け、軽減税率の対象品目と財源の調整を急いでいる。

軽減税率の対象に加工食品を含めることを前提に幹事長レベルで断続的に協議しているが、いまだ与党間の膠着状況が続いている。事業者の準備が間にあわないことや財源確保の見通しが立っていないことなどを理由に、まず導入時の対象品目を生鮮食品に絞り将来的に加工食品にも広げる「2段階拡大案」を主張する自民党に対し、国民の痛税感の緩和や分かりやすさ、景気対策になることなどを重視する公明党は軽減税率の導入時に加工食品も含めるよう求めている。麻生副総理兼財務大臣は、店舗のレジなどのシステム対応に準備期間が必要なことを挙げて「加工食品を入れるなら、2017年4月に間にあわない」(8日の閣議後記者会見)と強調したうえで、食品表示法上の線引きから「生鮮食品だけというなら整理がついている」と軽減税率の対象品目を絞るよう強調している。

 

 

【税制改正大綱のとりまとめに注目を】

 8日、安倍総理・自民党総裁と公明党の山口代表が会談し、幹事長レベルで軽減税率の制度設計の協議を継続するについて確認した。与党税制改正大綱のとりまとめ期限が迫るなか、幹事長レベルでの協議・調整が引き続き行われることとなった。ただ、自民党と公明党が互いの主張を譲らず、軽減税率の対象品目と穴埋め財源をめぐる激しい攻防が続けている。解決の糸口がつかめず調整難航も予想されており、与党内からは与党税制改正大綱のずれ込みもやむをえないとの見通しや、党首会談での最終的な政治決着を期待する声も出ているようだ。

 与党税制改正大綱のとりまとめがヤマ場となっており、軽減税率の制度設計をどのように決着するのかが最大の焦点となっている。また、来週末には、政府が補正予算案を閣議決定する予定で、編成作業は大詰めを迎えている。政府・与党内での検討動向も踏まえつつ、最終的にどのような内容が盛り込まれることとなるのか、引き続き見極めることが重要だ。
 

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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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