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中東政治の専門家・臼杵教授、「ソーシャルメディア革命」という呼称に違和感

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日本女子大学文学部の臼杵陽教授

 日本女子大学文学部の臼杵陽教授は2011年7月11日、ニコニコ生放送の視聴者とともに議論していくジャーナリズム番組「朝日新聞 Journalism 『メディアが動かした中東革命』」に出演し、中東各地に広がる民主革命の背景などについて語った。その上で、革命に大きな役割を果たしたと言われるフェイスブックなどのソーシャルメディアについて、「メディアが今回の革命を扇動したわけではない。メディアが生み出した革命というのはちょっと言い過ぎかな」と、一部報道でも使われる”ソーシャルメディア革命”という呼称には違和感を示し、その理由を説明した。

■「アラブ革命」が一番正しい言葉

 現代中東政治・中東地域研究が専門の政治学者である臼杵教授は、「中東革命」という言葉に疑問を呈す。中東地域にはアラビア語のアラビア世界、トルコ語などのトルコ世界、ペルシア語などのイラン世界が含まれていることを指摘し

「(中東革命ではなく)『アラブ革命』が一番正しい言葉。イランでも(反政府デモが)起こったが、結局つぶされてほとんど報道もされない状態になっている。もしこの革命がイラン、もしくはトルコにまで波及していけば、おそらく『中東革命』と言っていいと思うが、今の段階ではそこまで波及していないので、『アラブ革命』と呼ぶのが正しい」

と述べた。そして「アラブ革命」が起こった背景については

「軍人出身の政治家が長期の独裁的な支配をしていたことへの不満が起こった。また経済的に言えば、グローバル化の中での新自由主義的な経済政策をとってきたことで、貧富の差が拡がった。とりわけ高等教育を受けた人たちの職がなく、不満を持った。それらが発火点になり、大衆的な運動に展開したことが大きな特徴」

と、反政府民主化運動が起きた背景を分析した。また、一連の民主化運動とイスラムとの関係について、臼杵教授は「少なくとも当初の段階においては『イスラム』というのがスローガンとして出ていない。また、ムスリム同胞団が前面に出てこなかった点から見ても、イスラムは関係ない」と、民主化運動とイスラムとの関係を否定した。

■メディアが今回の革命を扇動したわけではない

日本女子大学文学部の臼杵陽教授

 一連の革命では、「ツイッター」や「フェイスブック」などが大きな役割を担ったとして、一部では”ソーシャルメディア革命”と呼ばれている。番組の視聴者からも「エジプトとチュニジアの革命の背景には、国策としてネット環境に力を入れていたことがあると言われている。これは事実か」という質問があった。これについて臼杵氏は

「メディアが今回の革命を扇動したわけではない。あくまで媒体であって、新しいメディアである『フェイスブック』や『ツイッター』などが革命を生んだみたいに、逆に誤解が生じているのではないか。決してそんなことはない。むしろもっと違う理由で、たまたま(前述のアラブ革命の原因のような)いろんな条件が重なったと考えるべき」

と述べ、民衆側と権力側の力関係次第で、例えばネット環境が整っているイランでも権力側が民衆を統制できている事例を挙げた。

 そして”ソーシャルメディア革命”という言葉に対しては違和感があるとの認識を示し、「デモなどの運動を扇動する人たちは、メディアをかなり意識的・意図的に利用し、若い世代が今回(革命の)主体になった」としながらも、「メディアが生み出した革命というのはちょっと言い過ぎかなという印象を持っている」と話した。

(三好尚紀)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 革命とネットの関連についての視聴者質問から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv55660108?po=news&ref=news#26:12

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