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元共産党外交部長 日韓関係改善には「左翼が妥協を」【3/3】

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 日韓関係改善の障壁として両国の間に大きく横たわる慰安婦問題。それを解決するにはどうすればよいか。元日本共産党政策委員会・安保外交部長で、新刊『慰安婦問題をこれで終わらせる。』が話題のジャーナリスト・松竹伸幸氏は、「左翼の“妥協”」が必要だと説く。慰安婦問題をいかに解決すべきか、松竹氏に訊いた。(全3回の第3回)

──著書では、慰安婦問題を納得のいく形で「終わらせる」ためには、国内世論の中で続いてきた深刻な対立を解消し、左右の壁を超えた対話をしていく必要があると提言されています。そして、中でも重要なのは「左翼の“妥協”」だと主張されています。

松竹:背景には、私の「原体験」があります。1993年に「河野談話」が出されたとき、私は日本共産党で働いていたのですが、周囲の反応に非常に驚かされたんですね。

 今では、左派が河野談話を「堅持すべき」と主張し、右派は「見直すべきだ」と批判するという構図が当たり前のようになっていますが、本の中でも書いたように、当時はそのまったく逆でした。読売新聞や産経新聞が河野談話に一定の評価を与えていた一方で、日本共産党のような左派は、「政府としての反省や謝罪が足りない」と強く批判していたんです。

 それも、「これだけでは不十分だ」というのではなく、談話自体が有害であるかのように激しく攻撃する。本当に批判すべき「敵」は別にいるはずなのに、そちらには目もくれなかった……。「これじゃダメだ」と思わされましたね。さらに、その2年後に「アジア女性基金」が立ち上がったときも、まったく同じことがありました。

──結果として、「女性基金」は、韓国では元慰安婦の女性の7割が受け取りを拒否、この問題に関する日韓関係を改善させるには至りませんでした。

松竹:本来ならあそこで問題に区切りをつけられるはずだったのに、そうはならなかった。私は、それは左派の責任だと思っています。

 その後も、この問題は左右の対立ばかりがどんどん深まり、解決の糸口さえ見えないような状況になってしまいました。これを打開するのは容易ではないけれど、まずは左派が過去の過ちを認めた上で、立場の違いを超えて対話を進めるしかないのではないか。そう思って、本を書いたのです。

──しかし、「対話を進める」以前に、日韓首脳会談があってなお、この問題についての一般的な関心が高まっているとはいえない状況が続いています。

松竹:それを非常に危惧しています。政府間が「妥結」に向かって動いているのはいいことですが、今後何らかの合意ができたとしても、その土台に国民的な議論がなければ意味がない、また今までと同じことの繰り返しになってしまうのではないでしょうか。

 例えば、合意文書の中で「責任」という言葉が使われたときに、それが法的責任を指すのか道義的責任なのかということをめぐって、再び対立が起こる可能性があります。しかし、先立ってきちんとした議論が行われて、「道義的責任」とは単に法的責任回避のために使われている言葉ではなく、非常な重みのある言葉なんだという認識が両国民の間にできていれば、そうはならないでしょう。

──国民的な議論なしに外交当局だけで合意をしても、非常に不安定で脆いものになってしまう。

松竹:だから、本来なら日韓首脳会談について、日韓のメディアはもっと報道すべきだったと思います。両国政府は「妥結」に向けて動きはじめた。ここからはこれまでのような、左右が互いに潰し合うための議論ではなく、「合意をつくる」ための建設的な議論が必要なのです。この局面で、メディアとしてどういう立場での報道をしていくのか。この20年間の対立構造をそのまま引きずっていくのか、それとも終わらせるために努力するのか。それを、日韓双方のメディアに問いたいと思います。

──そうした状況下で、先日は韓国で、『帝国の慰安婦』の著者、朴裕河さんが、元慰安婦の名誉を毀損したとして韓国の検察に起訴されたというニュースが飛び込んできました。

松竹:私自身は朴さんの本は非常に大切な内容が提起されていると好感を抱いていますが、それを抜きにしても、これまで以上に自由な議論を広げていかなくてはならないこの局面で、検察が一方の側の議論を封殺する行為に出たというのは非常な驚きです。韓国の検察や裁判所は、世論を扇動する機関に成り下がっているのでは、とすら感じます。

 日本のメディアも、『帝国の慰安婦』への賛否を超えて、きっちりと批判すべき問題だと思います。同時に、これをきっかけとして、日本と韓国両国で慰安婦問題における合意を探ろうとする世論が盛り上がってほしいですね。(了)

◆松竹伸幸(まつたけ・のぶゆき):1955年長崎県生まれ。一橋大学卒。ジャーナリスト・編集者。かつて日本共産党政策委員会で安全保障と外交を担当する安保外交部長を務めるも、自衛隊に関する見解の相違から2006年に退職。現在は、「自衛隊を活かす会」、正式名称「自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」(代表は元内閣官房副長官補の柳澤協二氏)の事務局も担っている。


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