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ブラック企業だと問題に!従業員のミスによる損害賠償の行方

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従業員のミスで発生した損害が給与から天引き

「アリさんマークの引越社」が2015年の「ブラック企業大賞」で「web投票賞」を受賞しました。建物、車両、機械・器具、運送品等に毀損・紛失が発生した場合、損害賠償の責に任じますとの誓約書を交わし、従業員のミスで発生した損害を給与から天引きするという行為が問題になったことも関係しています。この件に関してはユニオンが対応し、平成27年11月25日付けで労働局や労基署に申告しています。

もし、業務上で労働者に過失があった場合、人事評価を下げる、職種を転換するなどの措置を取ることは、人事裁量権の範囲で許されると考えられますが、会社に発生した損害対応の問題が残ります。損害が発生したとなれば、通常は損害賠償の責任を負うと考えるのが自然ですが、使用者の指揮命令下で発生している関係上、労働者のみに責任を押し付けることは公平性を欠くと言われています。

事業活動で発生した損害のみ労働者負担とすることは不公平

最高裁(茨城石炭商事事件)は、損害の責任範囲の問題を判定するにあたり、考慮すべき要素があると言っています。労働者側の要素として、加害行為の態様やそれまでの勤務態度、使用者側の要素として、事業の性格・規模、業務に必要な設備の状況、業務内容、労働条件、加害行為の予防もしくは損失の分散についての配慮などです。そのうえで最高裁は、損害の公平な分担という見地から信義則上認められる限度において、労働者の損害責任が求められると判断しています。

しかし、裁判例を見ると、業種や損害発生のプロセス・背景などによって微妙に異なります。たとえば、美容師が顧客に対して傷害事故を起したことに関する報告義務違反や注意義務違反があったとして損害賠償が命じられた例(アール企画事件)では、労働者は軽過失でした。入金前に自動車を引き渡し、15台の損害の50%である2578万円の損害賠償が命じられた例(株式会社G事件)では、高額なうえに2分1の損害額が課せられています。

また、内規等に反する貸付をさせた行為であるものの、人事体制の不備や目標未達成店が叱責と批判を浴びる状況などから、1割の限度で損害賠償が命じられた例(株式会社T事件)では、使用者側の圧力が考慮されています。高額になる例では、人たるに値する生活の保障の問題(労基法1条1項)を考慮する必要があると思われますが、仮に損害賠償が認められる場合でも、使用者は労働者の働きにより売上・利益をあげ、それが会社に帰属するため、事業活動で発生した損害のみ労働者負担とすることは不公平と考えられます。

給与からの損害額の天引きは同意が必要

労働者は、使用者の指揮命令において業務を遂行していますが、業務対応の内容や職務違反があっても、その程度によって賠償責任が変わってきます。たとえば、債務不履行があったと言えない場合(武富士事件)、顧客に対する多少の不適切な点はあっても、悪質な職務違反があったとは言えない場合(光栄機設工業事件)、外務員の顧客に対する説明不足が注意義務違反だとしても、就業規則の重大な過失に当たらない場合(つばさ証券事件)などは、損害賠償が認められていません。

もっとも、元事務局長が私利を図る目的から行った出金や虚偽の事実記載をした書簡を団体会員の役員に送付した行為は違法であるとして損害賠償が命じられた例(社団法人日本国際酪農連盟事件)を見ると、労働者側も故意に発生させた損害に対しては、損害賠償責任が問われると考えられます。

このように、多くの事例で非常にグレーな要素を吟味して損害賠償問題を検討することになります。ただし、表題の例のように、給与からの損害額の天引きは労働者の自由意思に基づく同意が必要になります。

(亀岡 亜己雄/社会保険労務士)

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