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朝本千可 テクニックより大事なことを学んだ米国時代語る

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 今の自分を作ってくれた恩師の姿は、温かな記憶とともに甦る。日本人初の女性プロサックス奏者の朝本千可氏(55)が、他校に潜り込んでまで教えを乞うた恩師について語る。

 * * *
 私は音楽を始めたのが遅かったんです。大学時代、交換留学生としてロスの大学で心理学を専攻している時に、ジャズと出会ったのがきっかけでした。アルバイト先のジャズクラブにライブ出演していた伝説的サックスプレーヤーのアート・ペッパーのサックスの音色に魅了され、ジャズを始めたくてサックスを買ってしまったんです。

 音楽大学に入学しようとしましたが、子供の頃から音楽をやっていないとクラシックの音楽学校には行けなかった。仕方なく街の音楽教室に通いながら練習していましたが、私のような経歴でも入学できる音大があるという。それがバークリー音楽院でした。その時はあの渡辺貞夫さんが学ばれた大学だとは知らず、あとで驚くことになるのですが、入るために猛練習をしました。

 入学できたのはジャズクラブでアルバイトをしていたお陰でした。毎日、一流のアーティストが出演しており、演奏が終わって酔っぱらっている時に「レコメンデーション(推薦状)を書いてほしい」と頼むと、みんな喜んで書いてくれましたからね。音楽を始めて間もない私でしたが、推薦状だけは一流アーティストの名前がズラリと並んでいました(笑い)。

 そうしてバークリー音楽院に入学できたのですが、すぐ問題にぶつかった。私が憧れていたヤン・ガルバレクやデイヴ・リーブマンたちの音楽がなかったんです。ガッカリしていた時、近くのニューイングランド音楽院のジャズ科の発表会を聴いて、まさに私がやりたい音楽はこれだと感動しました。

 でもここは超名門で、逆立ちしても私は入ることができない。その時にヤン・ガルバレクやデイヴ・リーブマンの恩師でもあるジョセフ・アラード教授が、週1回のレッスンに来ているという情報を耳にした。これはもう押しかけるしかないと、レッスン日を狙って忍び込みました(笑い)。

 世界的に有名なサックス奏者を送り出した人ですが、当時はもうかなり高齢でした。結果的には別の学校だということでレッスン料を支払うことになったが、ジョセフ・アラード教授から特別レッスンを受けることができるようになったんです。

 ところがレッスンは私が期待していたものではなかった。まず指摘されたのは“歯並び”。いきなり歯を削るヤスリを持ち出した時は驚きました(笑い)。その後も哲学的な話が続き、楽器を触るレッスンはしてもらえない。当時は「レッスン料返して」という気持ちでしたね(笑い)。

 でもその意図は後でわかりました。テクニックは後で付いてくるというのが教授の考えで、まずは演奏するための心の在り方、真の意味での綺麗な音色を追求せよということだったのです。お陰で私なりの音色を持てるようになり、心で吹く演奏ができるようになりました。

 その時に演奏テクニックだけを追求していれば、私は今でも一流アーティストのコピー演奏ばかりやっていたでしょうね。

●あさもと・ちか(サックス奏者)/1979年、アメリカでサックスに出会い、レッスンを開始。1988年に日本人初の女性プロサックス奏者としてデビュー。現在はインドネシア・バリ島を拠点に活躍中。

※週刊ポスト2015年12月11日号


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