「空き家」が深刻化するキーワードは“相続” “昭和55年以前”

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「空き家」が深刻化するキーワードは“相続” “昭和55年以前”

管理されていない空き家が増加していることが、社会問題となっている。国土交通省では、その実態を把握するための調査を行い、その集計結果を公表した。どうやら空き家の実態には、「相続」や「昭和55年以前」、「腐朽・破損」がキーワードになっているようだ。調査結果を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「平成26年空家実態調査 集計結果について」を公表/ 国土交通省空き家の4割に腐朽・破損が見られる

空き家が注目されるきっかけは、総務省の「平成25年住宅・土地統計調査」で、空き家が820万戸ある(全国の住宅に占める割合:13.5%)と発表されたこと。特に、売却用や賃貸用でもなく、別荘やセカンドハウス用途でもない、「その他の住宅」の空き家の急増が問題視された。

「平成26年空家実態調査」は、この総務省の調査対象住戸のうち、無作為に抽出した「戸建て空き家(建築中の住宅を除く、ふだん人が居住していない戸建て住宅)」の所有者や管理者に対して行ったもの。総務省調査で空き家とされた戸建て住宅が調査母体、というのが前提だ。

実態調査時点(平成26年11月~平成27年2月)では「人が住んでいる」という回答の割合が31.3%、「住んでいない」の割合は65.0%。人が住んでいない戸建て住宅のうち、別荘やセカンドハウスとして利用しているのでふだん住んでいないものが40.7%、賃貸・売却用で空き家のものが11.0%、「その他の住宅」が合わせて42.0%となっている。「その他の住宅」の内訳は、物置にしている(17.1%)、取り壊し予定(5.1%)、転勤・入院等長期不在(5.1%)、その他の利用していない空き家(14.7%)となっている。

【画像1】人が住んでいないものの利用状況(n=2140)(出典:国土交通省「平成26年空家実態調査」より転載)

【画像1】人が住んでいないものの利用状況(n=2140)(出典:国土交通省「平成26年空家実態調査」より転載)

また、実態調査の対象となった住宅のうち「腐朽・破損がある」割合は、全体で41.9%、人が住んでいる場合でも31.2%(人が住んでいないものは46.7%)と高い数値となっている。腐朽・破損は、「その他の住宅」で特に顕著で58.9%と半数を超える。

「その他の住宅」を建築時期別に詳しく見ると、半分以上で「腐朽・破損がある」のは昭和55年以前のもので、古くなるほど腐朽・破損がある割合が高くなる。昭和55年以前のもう一つの特徴は、「腐朽・破損がない」が3割を下回り、20%台で低く推移している点だ。

昭和55年以前といえば、旧耐震基準(建築基準法の耐震性に関する基準が大幅に改正される前)の住宅となる。耐震性の問題とも関係しているのかもしれない。

【画像2】「その他の住宅」の腐朽・破損の状態(建築時期別、n=897)(出典:国土交通省「平成26年空家実態調査」より転載)

【画像2】「その他の住宅」の腐朽・破損の状態(建築時期別、n=897)(出典:国土交通省「平成26年空家実態調査」より転載)

「管理面での心配事(複数回答)」を聞いた項目でも、「住宅の腐朽・破損の進行」が 51.5%と最も高くなっており、管理する側も最大の心配事となっている。管理面での心配事では、次いで「樹木・雑草の繁茂」が39.2%、「不審者の侵入や放火」が34.2%となっている。空き家の過半数が「相続した」住宅

次に、調査時点で人が住んでいない戸建て空き家について、詳しく見ていこう。
その住宅を取得した経緯で「相続した」が52.3%と過半数に及んでいる点が注目される。次いで多いのは、「新築した・新築を購入した」で 23.4%、「中古住宅を購入した」で 16.8%だ。

これを建築年別に見ると、古いものほど「相続した」の割合が高く、昭和55年以前まで過半数の状態が続いている。相続した住宅が古いので住まなくなるのか、相続した住宅に住まないままなので空き家になるのかは定かではないが、「相続」による住宅が空き家と関係することが浮き彫りになったといっていいだろう。

【画像3】「その他の住宅」の住宅を取得した経緯(建築時期別、n=897(出典:国土交通省「平成26年空家実態調査」より転載)

【画像3】「その他の住宅」の住宅を取得した経緯(建築時期別、n=897(出典:国土交通省「平成26年空家実態調査」より転載)

居住するために取得するのではない「相続」で所有することになった住宅は、所有者やその親族が住まないのであれば、売却や賃貸、転用などで活用するべきだろう。しかし、それが古い住宅であるなどの理由で、売却などの活用が難しいとなって、住まないまま放置され、特に遠方や高齢などの理由で管理が行き届かない場合、腐朽・破損が進行する。
調査結果からは、こういった負の連鎖が見えてくるようだ。

こうした負の連鎖を招かないためには、相続する実家の処分については早めに家族で話し合い、活用する方法を考えることが大切だ。行政も力を入れている課題なので、活用が難しい住宅の場合でも、あきらめずに行政の窓口などに相談してみてほしい。●参考
・横須賀市で空き家を強制解体、空家特措法では全国初(SUUMOジャーナル)
・実家が空き家になると、毎年支払う固定資産税は高くなる!?(SUUMOジャーナル)
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/12/02/101704/

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