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【日曜版】機甲天使ガブリエル・30年目の徒花【書評】

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日本のSFの“絵”は、1979年をエポックメーキングにすることにそう異論はないと思います。まず、ロバート・A・ハイラインによる『宇宙の戦士』の早川文庫版の出版です。その本を飾ったスタジオぬえの二人、つまり宮武一貴がデザインし加藤直之によって描かれた“パワードスーツ”は、それ以降のSF兵器、そして究極的には日本のオタク産業への大きな影響点となりました。つまり、その小説『宇宙の戦士』がきっかけとなって生まれたアニメーションこそ『機動戦士ガンダム』であり、その企画段階での『突撃攻撃型機動歩兵ガンボーイ』の機動歩兵というネーミングや、初期のガンキャノンのデザインなどからも“ぬえ版”パワードスーツの影響は色濃く、その後30年に渡って続くガンダム王国がたった1冊の本から始まっていくことになるとはとても感慨深いものがあります。

パワードスーツは、その概念以上にその絵的な魅力によって日本のSFファンの間で圧倒的に支持されました。しかし初期ガンダムのクローバー社製超合金を見ても分かるように、当時のトイフィギュアの造型力には大きな難があり、立体化はされることなく月日は流れていきました。そこにはたった数年、しかし数年もの時間が必要だったのです。

そして1冊の本が発刊されます。『How to build Gundam』。ホビージャパン社から発刊されたそれはリアルの魅力に満ちあふれていました。同時期に発売された『GUNDAM CENTURY』で、メカの持つ設定の魅力に(これもスタジオぬえの仕業でした)ファンは圧倒されました。ホビージャパン誌上では『SF3D』の連載も開始され、アニメーションや特撮に依存しないオリジナルSFキャラクターの時代がいよいよ始まろうとしていました。

1982年、スタジオぬえの功労は正しく評価され、超時空要塞マクロスの制作と放送が開始されます(後年にはマクロスの著作権裁判やバルキリーの権利問題など寂しい事件も起きますが)。それから3年後、つまりオーガスをもって下ろされ、勝手に作られたシリーズである超時空騎団サザンクロスが終了した頃、この『機甲天使ガブリエル』の企画は始まります。テレビとトイという窮屈な関係の枠から出て、まず魅力あるデザインありき、説得力あるデザインありきで動き出したガブリエルには、数多くのデザイン画とイメージボードが描かれました。

今見てもなお、心がときめくほどのメカニックの数々が何故商品化されなかったのか、何故映像化されなかったのか、それを探ることに意味はありません。間違いないことは、ガンダムを生み、静岡のおもちゃ屋を世界有数のプラモ屋にし、キャラクタービジネスという日本有数の産業を生み、秋葉原という街を生み出すトリガーになったものは、間違いなく『宇宙の戦士』であり『パワードスーツ』であり『スタジオぬえ』であり『宮武一貴と加藤直之』だったのです。たった7年の間にそれは灼熱のブームを呼び、たった7年の間にそれはスタジオぬえから引き剥がされました。

この本には、そんな歴史が詰まっています。あの時代に思いを馳せることは、さほど悪いことではないと思います。そして何より、今、この瞬間、あなたが好きなアニメーションを生み出すきっかけになった人は、この本を描いた人です。

パワードスーツから30年。ガブリエルから23年。宮武一貴は今年還暦を迎えます。

『機甲天使ガブリエル』
加藤 直之・ 宮武 一貴 共著
3045円(税込)
出版社:株式会社ラピュータ
ISBN-10:494775284X
ISBN-13:978-4947752840
発売日:2008/11/5
 

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