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断るつもりだった小説が90万部のベストセラーに 川村元気インタビュー(1)

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 出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
 第75回となる今回は、90万部を超えるベストセラーとなり、映画化、オーディオブック化などさまざまな形でメディアミックスが進む大ヒット作『世界から猫が消えたなら』の作者の川村元気さんが登場してくださいました。
 『世界から猫が消えたなら』は、川村さんにとって初めての小説です。余命わずかと宣告された郵便配達員のもとに現れた悪魔との取引によって、1日生き長らえる条件として世界から1つ何かを消してゆく、という普遍的で力強いストーリーがどのようにできあがったのか。それよりもまず、映画プロデューサーだった氏がなぜ小説を書くことになったのか!?
 川村さんご本人にたっぷり語っていただきました。

■断るつもりだった小説が90万部のベストセラーに
――今日は川村さんの著書『世界から猫が消えたなら』についてお話をうかがえればと思います。90万部を超える大ベストセラーとあってさまざまなメディアミックスがされ、ラジオドラマ化、映画化に続き、このたびはオーディオブックとしても発売されました。まず、作品が「音声」に置き換えられる「オーディオブック」について、どのような印象をお持ちだったのか教えていただけますか。

川村:「音声」ということだと、2013年に妻夫木聡さん主演でラジオドラマ化された時に聞いたのですが、文章や映像とは違った発見があっておもしろかったですね。
今回のオーディオブックでは「地の文」も含めて声優さんが読まれるというのを聞いて、ラジオドラマともまた違った表現になるんだろうなと思って楽しみにしていました。

――また、映画「世界から猫が消えたなら」も2016年に公開されます。映画プロデューサーとして『告白』『悪人』『モテキ』などさまざまなヒット作を手がけてこられた川村さんですが、現時点での出来栄えはいかがですか?

川村:僕もある程度関わらせてもらったのですが、出来には納得していますし、すごくいい映画になったと思っています。
作中に出てくる「イグアスの滝」には実際にアルゼンチンまで行ってロケをしましたし、「猫」にしてもやはり本物の猫を撮っている。佐藤健さんや、宮崎あおいさんのお芝居も素晴らしく、実写に置き換えたことで強烈に迫ってくるシーンがいくつもありました。感動的な映画になったのではないかと思っています。

――函館はまだしも、アルゼンチンまでロケに行くというのはすごいですね。

川村:お金かかってますよね(笑) ブエノスアイレスの街のシーンや、エビータ(アルゼンチンの政治家、エバ・ペロンの愛称)のお墓のシーンもありますし、イグアスの滝のシーンもあります。
小説を読んでいて「イグアスの滝ってどんな感じなんだろう」と思った方は多いと思いますが、実際に行くと想像の10倍くらいすごいんです。映画ではそれがうまく収められている気がします。

――『世界から猫が消えたなら』は川村さんにとって初めての小説です。どうして小説を書くことになったのかといういきさつを教えていただけますか?

川村:本を書きませんかというお話は何度かいただいていたのですが、僕自身映画を作っていて満たされていたし、いっぱいいっぱいでもあったので断っていたんです。
そんな中でマガジンハウスの担当編集の方にオファーをいただいてお話ししていた時に、携帯電話を失くした時の話をしたんです。携帯電話がないから公衆電話から電話をかけようと思ったら自分の母親の番号も職場の番号もわからず、自分の記憶を携帯電話に預けている状態だということに気づいたという、まさに作中で書いている話ですね。
 携帯電話を失くした日の話の続きですが、帰りに電車に乗っていたら窓から虹が見えたんです。携帯電話を失くしたからこそ、その虹に気づくことができたわけですが、周りの乗客を見回したら、僕以外の全員が携帯電話に見入っていて誰も虹に気づいていませんでした。その時に「何かを得るためには何かを失わないといけないんだな」と思ったという話をして、あくまで冗談として「1年間携帯電話なしで生活してそのドキュメントを本にしたらどうか」と提案しました。断るための口実ですよね。
 でも、彼はその企画を面白いと言って、「でも電話だけが消えるのではなく、いろんなものが消える話はどうですか?」とアイデアを出してくれたんです。それを聞いた時に、「旧約聖書」の「創世記」で、一週間かけて神様が世界を創っていくのと真逆のイメージが浮かんだんです。世界から一つずつ物が消えていくという構成と最後の場面が思い浮かんで、これなら書けるかもしれないと思えた。なので、書き始めるまでに、ずいぶんと長いことうじうじやっていたんです(笑)。

――断るつもりが逆にアイデアが膨らんでしまった。

川村:そうなんです。だから小説を書きたいという能動性は当初まったくなくて、話しているうちにアイデアが浮かんで、それを形にしてみようと思って書き始めたという感じでした。

第二回「死」を想像することで、生きる意味を見つける「体験」をしてほしい につづく
(新刊JP編集部)


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