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「食べ放題」スタイルの飲食店が潰れない理由

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 2015年11月24日現在、130名の犠牲者が確認されている、パリの同時多発テロ。現地ではテロ再発に備えて、いまだ厳戒態勢が敷かれています。フランスは観光大国として有名ですが、今回の一件により観光産業が打撃を受けることは避けられないでしょう。また、それがさらにユーロ圏全体へと波及することも予想されます。
 社会で起こる出来事は、経済にも多大な影響を及ぼします。さらにそれは国境を超えて、遠い国の経済をも揺るがす事態になる可能性すらあります。その意味で、経済状況がどのように変動するのかを知っておくことは重要なのです。

 ただ、いきなり経済を勉強しようと思っても、何から手をつければいいのか分からないという人も少なくないはず。そこで参考にしてもらいたいのが『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社/刊)です。本書は、経済について身近な出来事を紐づけながら分かりやすく解説してくれています。
 今回はこの本の著者である塚崎公義さんに経済を学ぶためのコツを中心にお話をうかがいました。今回はその前編です。

――本書の執筆経緯をお聞かせ下さい。特に、ほぼ同時刊行となる『世界でいちばんやさしくて役立つ 経済の教科書』との違いを出すために、どのような点に気を付けたのでしょうか。

塚崎:『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』は、経済の入門の入門ということで、経済ニュースが理解できるようになるための基礎的な経済知識を得るための本です。これに限らず、一般に教科書というものは、役に立つものではありますが、読んでいて楽しい本ではありません。
一方で、『なんだ、そうなのか! 経済入門』は、読者に楽しんでいただくことを第一に考えました。もちろん、読者の役に立つことも目指しましたが、それはあくまで第二目標です。私が当初考えていた本の題名が「いまさら聞けない経済の仕組み−目から鱗の謎解きを楽しもう」であったと申し上げれば、趣旨はわかっていただけると思います。
たとえば、最初の項目は、「ブッフェスタイル(食べ放題)の店は、食欲旺盛で元がとれる自信のある人しか来店しないのに、なぜ倒産しないのだろう」という問題意識から出発したものです。ブッフェスタイルの店を経営しようと考えている人の役には立つでしょうが、一般の読者の役に立つか否かは未知数です。しかし、「なぜだろう」と疑問に思っている人は多いはずですから、読者と一緒に「謎解き」を楽しもうというわけです。
さらにいえば、本書が役に立つか否かは、読者次第でしょう。ブッフェの採算について考える過程で、たとえば固定費と変動費の記述があり、「客の支払った料金のうちで材料費の占める割合が低いならば、客が何人分食べても店にとっては問題ないのであって、4人分食べて3人分の料金を払ってくれるなら有難いのだ」といったことが自然と学べるようになっているので、固定費と変動費が企業収益に与える影響について知らない人や忘れてしまっている人には役に立つでしょう。
「一度に20人分の料理を作る方が注文を受けてから一人分の料理を作るより効率的である」という記述に触れることで、「だから大企業は中小企業より儲かるのだ」といった連想が湧くかもしれませんし、「コックさんがランチタイムだけ猛烈に忙しいよりも、一日を通して忙しい方が良い」という記述からは「我が社も、仕事がピークを迎える月末を楽にするために、月末の作業で前倒しできるものは前倒ししよう。月末だけ割増料金にして客を月末以外に分散することも考えよう」といったことを考えるかもしれません。

――塚崎さんは以前、銀行で経済予測の業務を担当なさっていたそうですが、経済予測とはどのようなことをするのでしょうか。また、経済予測という仕事の面白さや難しさについて教えてください。

塚崎:経済予測の最終目標は、経済成長率を予想することです。経済成長率が高ければ景気が良い、低ければ景気が悪いと言えるからです。「最近モノが良く売れているから、企業は増産するだろう。そのために人を雇うだろうから失業者が給料をもらえるようになるだろう。そうなると元失業者が消費を増やすから、モノがさらに売れるようになるだろう。しかし一方で、インフレが心配だから日銀が金融引き締めで景気をわざと悪くするかもしれない。そうなると借金をして設備投資をする企業が減り、設備機械の売上げが減るかもしれない。また、アメリカの景気が悪くなりそうだから、輸出も減りそうだ。そうなれば設備機械メーカーと輸出企業が生産を減らし、雇用も減らすだろう。どちらの影響が強いだろうか?」ということを考えながら、来年の国内総生産を予想するのです。
経済予測の面白さは、「長年の経験と勘」が勝負だということです。経済現象は複雑すぎて、経済学理論とスーパーコンピューターでは到底予測できません。というのも、人々の心理が大きな影響を与えているからです。たとえば、減税をしたら、人々がその分を消費するのか貯金するのか、その時々の人々の気分で変わります。これを様々な経済情勢等々を考慮しながら予測するのが、経済予測の醍醐味の一つと言えるでしょう。
経済予測が難しい点は数多くありますが、最も悩ましいのは金融市場の動きに振り回されることでしょう。たとえば、為替レートを予測することは非常に難しいのですが、為替レートは時として大幅に変動し、それが輸出入等々の実体経済に大きな影響を及ぼすのです。また、バブルのときに、「現状はバブルなのか、そうだとすると、いつバブルが崩壊するのか」を判断することは非常に困難ですが、それによって来年の景気や経済成長率が大きく影響されるのです。

――経済の知識を身につけることは大変難しいと感じています。塚崎さんはどのようにして知識を得ているのか、情報を自分の中でまとめているのか教えていただけますか。また、本書のなかで「情報に接する際は『そこに書かれていないことは何か』を考えることが重要」とも書かれていますが、そのためにどのような工夫をされていますか?「書かれていないこと」とは、たとえばどのようなものですか。

塚崎:知識を得るためには、多くの良い本を読み、多くの経済ニュースに接することが必要です。私は幸いなことに経済を予測する仕事が長かったので、勤務時間中にも経済の情報を数多く得ることができましたし、勤務時間外でも経済関係の情報には興味を持って接していましたから、これまでに接した経済関係の情報は普通の人よりも多いと思います。
情報は、単なる知識として積み重ねるだけでは役に立ちませんから、それらを頭の中で組み立てて、点と点から線を描き、それが絵になる必要があります。そのためには、過去に似たような情報を得たときのことを思い出したり、過去に異なる情報を得たときとの比較をしたりするように心がけています。たとえば、「ニューヨーク市場の株価が下がった翌朝の東京市場では株価が下がることが多く、上がった翌朝は上がることが多い」ということは、毎日の株価を見ているだけでは理解できません。しかし、「過去にニューヨーク市場の株価が下がったときはどうだったのだろう」と考えて過去の情報と比べて見ることによって、両者の関係が理解でき、点と点がつながって線になるというわけです。
「書かれていないことは何か」を考えることは、とても困難で、私も十分できているわけではありませんが、心がけていることはあります。たとえば不満を述べている人がいる時、黙っている人は賛成しているのか反対しているのかということは考えます。「寒いから暖房を入れてくれ」という人がいた場合、その人以外は快適だと感じているかもしれません。そうならば、暖房を入れた途端に今まで黙っていた人が「暑い」と不満を言い始めるかもしれないのです。総じて言えば、「現状に不満な人は不満を述べるが、現状に満足している人は黙っている」ことが多いので、要注意なのです。

(後編へ続く)


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