「逆境面白くない?」フットサルの若き名将が“ジャイアントキリング”を起こせる理由 | フウガドールすみだ監督 須賀雄大

access_time create folder生活・趣味

高校時代のサッカー部の同級生と作ったチームでプロチームを破り、フットサル日本一となり、その後トップリーグに昇格−−−−。東京都墨田区に、そんな漫画のような軌跡を辿ってきたフットサルチームがあります。フットサルの全国リーグであるFリーグに2014年に新規参入した、フウガドールすみだ(以下フウガ)です。

今年は参入2年目ながら、今シーズン現在3位(第26節終了時点)と健闘。すでにリーグの中でも屈指の集客力を誇る人気チームとなっています。33歳の若さでこれまで数々のジャイアントキリングを実現してきた、フウガの名将・須賀雄大監督へのインタビューから、ジャイアントキリングを起こす秘訣を探ります。

f:id:tyo-press:20151112180023j:plain

元「森のくまさん」がプロを破って優勝

-フウガドールすみだは2009年のプーマカップ決勝で、当時地域リーグ所属でありながらFリーグチャンピオン名古屋オーシャンズを下して優勝しました。やべっちFC(テレビ朝日系)でもロングダイジェストが放映されるなど、快挙として報じられましたね。

須賀監督(以後須賀):そうですね。その時は、Fリーグのチームを倒して優勝してやるぞという気持ちをチーム全員で常に共有していました。「相手の方がカテゴリーは上。環境も選手の能力も上。でももしそんなFリーグのチームに俺らが勝ったら凄くない? 面白くない? ならやってやろうぜ!!」という感じで、モチベーションはとても高かったんです。

-その後2014年に念願だったFリーグに遂に参入し、今でこそFリーグを代表する人気チームとなったフウガですが、元々は高校時代の同級生と結成したチームだったそうですね。

須賀:自分がいた暁星高校サッカー部の同期数名と「森のくまさん」というチームを立ち上げました。その後、同じ学年の都立駒場高校サッカー部OBが立ち上げた「BOTSWANA」(ボツワナ)というチームと一緒になりました。ボツワナが現在のフウガのルーツですね。

-はじめは趣味で始めたチームだったんですね。

須賀:そうですね。当時は土日に民間のフットサルコートで開かれるような大会に出ていました。ただ、結成当初からメンバー間で「トップリーグに行きたい」ということは話していたんです。当時はまだFリーグがなくて、関東フットサルリーグがトップリーグだったので、まずはそこを目指そうと。

大学2年だった2002年に東京都フットサル連盟主催の東京都オープンリーグに参戦して、その後東京都2部、1部と3年連続で優勝し、関東フットサルリーグに上がりました。

-その後、2007年にFリーグが開幕しましたね。

須賀:はい。関東フットサルリーグからも3チームがFリーグに戦いの場を移しました。「で、俺らどうすんの? やっぱ俺らもやろうよ! 」という意見がメンバーからあがり、Fリーグを目指すことに決めました。

逆境をはねのけて果たした“大物食い”

-なるほど。ですがその後、規定の収容人数をクリアするアリーナの確保など、リーグが提示する参入条件を満たしながらも、すぐには参入できませんでしたね。

須賀:参入できなかった理由に「東京にすでにFリーグのチームが2つある」というのがありました。それは自分たちにはどうしようもない理由で、「じゃあどうすれば良いの?」という思いも正直ありました。でも、だからこそ自分たちにとってプーマカップという大会が本当に重要でした。

f:id:tyo-press:20151112180656j:plain

-地域予選を勝ち上がったチームも参加できる、サッカーでいう天皇杯のような大会ですよね。

須賀:ええ。そこでFリーグのチームを倒して優勝して、Fリーグの関係者の方たちの前でジャイアントキリングを成し遂げれば、自然と「何であいつらをFリーグに上げないんだ?」と声がかかるんじゃないかと、ポジティブに捉えていましたね。

たとえ東京にFリーグのチームが3つ、というのが難しくても、インパクトを残し続ければきっと参入できるはずだと。 突きつけられた条件が厳しくても、他人のせいにせず、自分たちがやれることは何かを常に探すようにしていました。

-その結果、2009年にプーマカップ決勝で、Fリーグチャンピオン名古屋オーシャンズを下すという最高のジャイアントキリングを起こすことができたのですね。

「当たり前のことを当たり前に」が難しい

-昨年、念願だったFリーグに参入し、今年で2シーズン目。1年目の昨季の順位を上回る3位(第26節終了時点)につけていますね。ホームの墨田区総合体育館はいつも大勢のお客さんで熱気に溢れていて、とても2年目のチームとは思えません。どうしてこれほどまでに根強い支持を集められるのでしょうか。

須賀:あれだけの人たちに応援していただける理由のひとつに、ほとんどの試合が接戦だったということがあると思います。最後の最後まで勝敗が分からないエキサイティングなゲームが多い。負ける試合でも、前半のうちに引き離されて完敗という試合はほとんどありません。

-格上の相手にもひるまず食い下がる。驚異的なまでの粘り強さというのは、Fリーグ参入前から続く、フウガの最大の持ち味だと思います。どういったところに秘密があるのでしょうか。

須賀:当たり前のことを当たり前にやっている、という部分だと思います。試合の終盤で疲れていても、走るべきところでサボらずに走る、ゴール前で身体を張る。そういうことって、誰にでもできるようで、実はできるものではないんです。

たとえ劣勢でうまくいかない試合でも、最後まで諦めずに全員でやるんだという姿勢を見せていることが、リピーターを増やせている要因なのかな、という気はしますね。日本人の美徳ともされている「ひたむきさ」を見せる。そういう力がうちにはあると自負しています。

ジャイアントキリングを生む「逆境って面白くない?」の精神

-先日行われたシュライカー大阪戦でも、退場者が出て一人少なくなった直後に、逆にフウガの方が点を奪って勝ちましたね。本当に逆境に強いなと感じます。

須賀:元々僕らは関東フットサルリーグにいた頃から「絶対王者である名古屋オーシャンズに勝つ」という絵空事のような目標を持っていました。それを目指すのが楽しいし、それを起こせるという自信もあった。逆境を楽しんでやってきたんですね。そういう“逆境を楽しむ精神”は現在のチームにも受け継がれていると思います。

立ち上げメンバーである太見寿人と金川武司がうちでプレーし続けているというのも、フウガのメンタリティを引き継ぐという意味で大きいです。 実は、先ほど話に出たプーマカップで名古屋に勝った後、Fリーグの他チームへの移籍などで9人のメンバーがフウガから抜けたんです。

5対5で戦うフットサルで、9人抜けるっていうのは大変な状況でした。しかしその時も「この状況からまた這い上がったら面白くない?」という気持ちでやっていましたね。そういう感覚を全員が持っているのが、何よりの強みかなと思います。

-選手が入れ替わっても、フウガの粘り強いフットサルはしっかりと継承されているわけですが、新入団希望の選手などを見る際にはどんなところを重点的に見ているのですか?

須賀:どんな選手も試合に出て活躍したいと思っているはずです。しかしその思いが、「いいプレーを見せてやろう」といった個人プレー優先に向いていたらダメ。チームの勝利のために活躍したいというように、チームに想いを向けられる選手は、逆境のなかでもブレずに戦えるはずなんです。今は若くて技術が高い選手はたくさんいるので、あとはその辺りがフィルターですね。

f:id:tyo-press:20151112180631j:plain

-当然それは普段の練習でも選手たちに要求されているのだと思います。日頃からそういったことを突き詰めているからこそ、あの驚異的な粘りが可能になるのですね。

須賀:ええ。相手にシュートを打たれそうになったとき、あと10センチ足を伸ばしてブロックしに行けるか。誰かのミスで失点したときにチームメイトに不満を言うのではなく、「誰が悪いとかじゃないからみんなで取り返そうぜ!」という意識を持てるか。うまくいかなくても他人のせいにせず、「今この状況で、チームが勝つために自分に何ができるか」を常に考えられるか。そういう部分は、チーム全員で追求しています。

小まめなモチベーションコントロール

-粘り強いフットサルを続けるには、チームとして高いモチベーションを維持するのが重要なのではないかと感じるのですが、指揮官として選手たちのモチベーションをどうコントロールしていますか。

須賀:話し合いを小まめにするのはすごく大事だと思います。やはり人間なので、自分ひとりでは気持ちを上げられないこともあると思う。だからそれを引き上げてあげるのはすごく大事です。「上がってこいよ」って上から言っているだけじゃなくて、具体的な課題を提示して、それに向けて「一緒に上げていこう!」っていう姿勢を持つようにしています。

たとえば、満足してしまっている選手には競争が必要だし、もしくは競争が起きないほど優れた選手であれば求めるものを一段上げる。常にその求めるものを念頭に入れて「この前言ったプレーできた? 無理じゃないよ、できるよ」って言うことを日々続ける。

試合に出られていない選手には、出られていない理由や状況をしっかり説明します。何が足りないかとか、「長所であるここをもう少し伸ばせば、出られる可能性が少し上がってくる」とか。「いま控えの何番手だから、あとひとつ上がれば出られるよ」とか、噛み砕いて具体的に話すんです。

抽象的な話をしても仕方ないので、ストレートに今の状況はこうだよというのを伝えて、課題と向き合わせるしかないと思っています。

-インタビューの最後に、今後に向けたビジョンを是非お聞かせください。

須賀:ホームアリーナの墨田区総合体育館は収容人数が約2,000人なのですが、フウガはまだ全ての試合で満員になるというわけではないので、まずは毎試合超満員にできるように、より魅力溢れるチームにしていきたいです。 Jリーグの人気クラブと比べて規模は小さくても、同じくらいアツい2,000人のお客さんが観に来てくれる。そんなチームを目指したいですね。

当たり前の積み重ねが、大きな成果を生む

スポーツチームというと一般企業とは全く別の世界というイメージがありますが、須賀監督の言葉は、どんな仕事にも通じることばかりでした。

自分がやるべきことを、サボらずに常にやりきる。どんな時も他人のせいにせず、自分に何ができるかを考える。厳しい状況でも、「ここから逆転できたら面白い!」とポジティブに捉える。当たり前のようで難しいこれらのことの積み重ねが、ジャイアントキリングを起こすための秘訣なのでしょう。

Fリーグは現在終盤戦に突入。残り試合も僅かとなってきています。フウガの選手たちのひたむきなプレーを観に、是非一度墨田区総合体育館へ足を運んでみることをおすすめします。もしかしたら、みなさんが大きな壁を乗り越えていくためのヒントが得られるかもしれません。

WRITING:福田 悠

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 「逆境面白くない?」フットサルの若き名将が“ジャイアントキリング”を起こせる理由 | フウガドールすみだ監督 須賀雄大
access_time create folder生活・趣味

リクナビNEXTジャーナル

ビジネスパーソンのための、キャリアとビジネスのニュース・コラムサイト。 キャリア構築やスキルアップに役立つコンテンツを配信中!ビジネスパーソンの成長を応援します。

ウェブサイト: http://next.rikunabi.com/journal/

TwitterID: rikunabinext

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。