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今週の永田町(2015.11.18~25)

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【TPP対策大綱、25日に決定】

 先週20日、自民党と公明党は、交渉参加12カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けての国内対策に関する提言をそれぞれとりまとめ、政府に提出した。与党の提言を踏まえ、政府は25日にも対策大綱を決定する。

自民党は、農林部会・水産部会・経済産業部会・財務金融部会など13部会での検討結果を踏まえ、国内対策に関する提言をとりまとめた。TPPを契機に国産の農林水産品・工業製品・放送コンテンツ・サービスなどの輸出を拡大して新輸出大国をめざす「攻め」の施策と、安価な農産物の輸入で打撃が見込まれる生産農家の経営安定化などを重視した「守り」の対策の2本柱で提言している。公明党は、農業生産者の不安解消を図るための経営安定化対策、TPP活用策に関する相談窓口の整備など競争力強化策、消費者の視点を重視した原料原産地表示を義務付ける加工食品の対象拡大などを求めた。

 

自民党提言では、攻めの施策として、農商工連携や官民連携組で中小企業の海外展開の後押しや、円借款手続きの迅速化やトップセールスでのインフラ輸出促進、農業の6次産業化などによる地域資源のブランド化、TPP活用窓口の設置など情報発信の強化などを積極的に進める。また、貿易・投資が活発に行われる「グローバル・ハブ」をめざして、国内企業のイノベーションを進めるなど国際競争力の強化も図る。農林水産業では、生産者が力を発揮できる「農政新時代」をめざすため、経営感覚に優れた次世代の担い手育成と金融支援措置などの充実、農地中間管理機構の活用・拡大による農地集約・大規模化、リース方式による漁船導入支援、林業の間伐推進などを盛り込まれた。

 関税引き下げに対する生産者の不安払拭や影響緩和の守りの対策では、政府備蓄米の保管期間を原則5年から3年に短縮することにより単年度の購入量を増やし流通量を調整することで国内米価の下落を防止するほか、牛肉・豚肉の所得補填事業を法制化して補填率を赤字分の8割から9割に拡大といった具体的な経営安定対策などが並んだ。自民党提言では対策の予算規模や必要な期間の明記が見送られたが、農林水産対策については「既存の予算が削減・抑制されることなく安定財源を確保」するよう求めた。

政府は、対策大綱をとりまとめ、その一部を補正予算案や来年度予算案に計上する。財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)が24日にまとめた2016年度予算編成に関する建議(意見書)では、1993年の関税・貿易一般協定のウルグアイ・ラウンド合意を受けての農業対策(約6兆円)で農業の体質強化につながらない施策が含まれていたことを指摘したうえで、TPPの国内対策では、構造改革の進捗を客観的に測定できる成果目標を設けるなど、「真に競争力の強化に資する内容」にするよう求めている。自民党は「バラマキはしない」(小泉進次郎・農林部会長)と強調しているが、来年夏の参議院選挙を意識して、農業の土地改良事業費など手厚い予算配分を求める声も出ている。補正予算案や来年度予算案の編成作業が本格化しており、政府・与党内での熾烈な駆け引きが活発となりつつあるようだ。

 

 

【一億総活躍社会の緊急対策、26日にとりまとめ】

 新たな看板政策として打ち出している1億総活躍社会の実現に向け、自民党と公明党は24日、政府の緊急対策(第一弾)に反映するべく、それぞれの提言を政府に提出した。

自民党がとりまとめた提言では、子育て支援策として、保育士不足の解消をめざして原則年1回実施している保育士試験を2回にする都道府県を増やすことや、介護福祉士をめざす学生への修学資金拡充、介護職員の待遇改善、企業内保育所を新たに設置した場合に助成される補助金の支給期間(運営開始から5年間)の延長、第2子以降の児童扶養手当増額などひとり親世帯への支援強化、病児・病後児保育の充実、住宅建設の補助を拡充するなど3世代同居・近居の支援などを挙げた。介護支援策としては、介護休業・休暇の分割取得が可能な制度見直し・職場環境の整備や、用地確保の困難な都市部で国有地を安価で貸し出すなど介護施設・サービスの整備推進などが明記された。

公明党がとりまとめた提言では、妊娠や出産を理由に退職などを迫るマタニティーハラスメント防止のための法整備や、ひとり親家庭の親の就労・子どもの学習への支援拡充、介護従事者の一層の待遇改善などを求めている。

 

 政府は、安倍総理が掲げる新3本の矢(強い経済、子育て支援の充実、社会保障制度改革)を前提に、「経済の好循環を通じて、夢を紡ぐ子育て支援や、安心につながる社会保障を実現する」との基本的考え方を緊急対策で打ち出す。

2020年代半ばまでに「希望出生率1.8」を実現する子育て支援関連では、待機児童の解消に向けて2017年度末までの保育受け入れ枠を40万人から50万人に拡大することや、雇用契約満了までに子どもが2歳にならなければ取得できない非正規雇用女性の育児休業を子ども1歳半であれば取得できるようにするなど取得しやすい制度への見直しなどが盛り込まれる見通しだ。

介護を理由に仕事をやめる介護離職者(年間約10万人)を減らす「介護離職ゼロ」関連では、国有地を社会福祉法人に民間相場の最大半額で貸し出し、介護休業の分割取得も可能とする制度見直し・介護休業給付金の引き上げなどを打ち出すという。慢性的に介護人材が不足するなか、介護施設などの整備目標を2020年代初頭までに約40万人増へと拡充するため、厚生労働省は、介護職員らの事務作業負担の軽減や、離職した介護職員に再就職支援として数十万円を貸付ける制度新設など介護分野の人材確保にも取り組む。

 

24日に開催された経済財政諮問会議では、国内総生産(GDP)600兆円の達成で希望を生み出す「強い経済」を実現するため、消費喚起策や投資促進などを柱とする緊急対応策のとりまとめに着手している。2015年7~9月期実質GDPが2四半期連続のマイナス成長となったが、緩やかな景気回復が続いているとの認識のもと、短期的な景気刺激策という位置づけにはしない方針だ。

議長の安倍総理は、経済界に賃金引き上げを要請するとともに、「年率3%程度をメドに、GDPの成長率にも配慮しつつ引き上げていくことが必要」「(2020年代前半に最低賃金の全国加重平均が)1000円になることをめざす」と、経済の好循環には最低賃金の引き上げが不可欠との認識を示し、企業が賃上げできる環境整備を進めるよう関係省庁に指示した。人件費負担が増える中小・零細事業者などの反発も予想されるため、業績改善を通じて賃金上昇の原資を確保できるよう、中小・零細事業者を対象とした生産性向上や取引条件の改善などの支援策も講じていく考えだ。

また、経済財政諮問会議の民間議員から「賃金引き上げの恩恵が及びにくい低年金受給者にアベノミクスの成果が波及するよう対応すべき」との提言があったことから、別途、賃上げの恩恵を受けられない低所得の年金受給者への給付が必要と判断した。1人3万円の給付金となる方針で、低所得の年金受給者の家計を支援することにより、個人消費の底上げをならっている。このほか、女性や高齢者の働く意欲を抑えているとされる税・社会保険料負担の「103万円の壁」への対策検討や、省エネ住宅や燃料電池車の購入費負担軽減なども盛り込むようだ。

 

政府は、11月26日に開催予定の「1億総活躍国民会議」(議長:安倍総理)で、新3本の矢からなる緊急対策をとりまとめる。これを受け、TPP大筋合意を受けての国内対策や、1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策などを柱に補正予算案を編成する方針だ。このほか、9月の関東・東北水害の復旧や河川整備に重点的に置いた災害対策や、パリ同時多発テロを受けた緊急のテロ対策費用などが補正予算案に盛り込まれるようだ。

補正予算案は3.5兆円規模となる見通しで、昨年度決算剰余金(約1.58兆円)や、消費税や所得税など今年度予算の税収上振れ分などを財源に充てる。財政再建への懸念が強まることを避けるため、国債の追加発行は見送るという。政府は、補正予算案を12月中旬に閣議決定し、来年1月4日に召集する通常国会に提出する。

 

 

【与党、税制改正大綱のとりまとめ作業に着手】

与党は、今年12月までに2016年度与党税制改正大綱をとりまとめに向けた作業に着手した。2017年4月に消費税率10%への引き上げに伴って負担緩和策として導入する軽減税率の制度設計や、法人実効税率(国・地方)のさらなる引き下げなどが税制改正の主要焦点になるとみられている。

法人実効税率の引き下げをめぐっては、2016年度に32.11%から31.33%に下がることが決まっているが、経済再生や企業の国際競争力向上の観点から、税率引き下げ幅のさらなる上乗せをめざしている。2016年度に30.88~30.99%に、2017年度に20%台をめざす案が有力だ。ただ、税率引き下げの前提としている財源確保について、給与総額など企業規模に応じて課税する「外形標準課税」(地方税)の拡大や、租税特別措置の廃止などによって捻出する方針としているものの、いまのところ具体策は決まっていない。どのように財源を確保し、「数年で20%台」(2015年度税制改正)を実現する具体的道筋をどう示すのかが主なポイントとなる見通しだ。

 

地方創生の一環として2016年度からの導入をめざしている、地方自治体への寄付を企業が全額損金算入できる現行制度に加え、本来支払うべき税額から3割を差し引く税額控除を新たに設ける「企業版ふるさと納税」について、自民党は、与党税制改正大綱に盛り込む方向で調整を進める。また、震災復興の支援税制として、2016年3月末に期限を迎える被災者を雇用した企業に認めている法人税軽減の時限措置などは延長の是非を検討するようだ。

 経済の好循環の実現に向けて、企業が投資拡大や賃上げに積極的に取り組むよう、約354兆円と過去最高を更新した内部留保への課税を検討すべきだとして、自民党次世代の税制を考える会の中堅・若手議員らが政府や党税制調査会などに働きかけている。賃上げや設備投資・研究開発・人材育成を経済界に要請している安倍総理を後押ししたい思惑がある。ただ、内部留保への課税は、法人税納入後に残る利益剰余金に再び課税(二重課税)することになるため、政府は「政策的な議論を深めることが先決」(菅官房長官)と否定的な見解を示している。官民対話などを通じて経済界に働き掛けていく方針で、「法人税を下げて、下げた分だけ内部留保がたまるのでは意味がない」「企業は給料を増やす、株主に配当を増やす、設備投資を増やす。この3つに利益は使われてしかるべき」(麻生副総理兼財務大臣)などと強調している。

 

飲食料品・生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率の制度設計をめぐっては、自民党と公明党が協議を重ねているが、対象品目や税収減を補う財源などで隔たりが大きく、平行線をたどっている。

18日の与党税制協議会・軽減税率制度検討委員会(座長:宮沢洋一・自民党税制調査会長)で、自民党は、事務負担が増える事業者への配慮や財源確保の観点から、2017年4月の軽減税率スタート時は飲食料品の対象品目を絞り、事業者の準備が整う3年後をメドに対象品目を拡大する「2段階案」を主張した。自民党は、加工食品の線引きが難しいとして「生鮮食品を基本」(年間軽減額3400億円)とすべきであり、穴埋め財源も医療・介護や保育などの自己負担の合算額に上限を設定し上限を超えた分を国が給付する「総合合算制度」の実施見送りで捻出できる年4000億円以内にすべきだとしている。

これに対し、国民の痛税感の緩和や分かりやすさ、景気対策になることなどを重視して対象品目を可能な限り幅ひろく設定するよう求めている公明党は、線引きを行えば混乱も招きかねないとして、対象品目を「酒類を除く飲食料品(外食を含む、年間軽減額約1.3兆円)」とするよう改めて求めた。穴埋め財源は、対象品目の設定議論と切り離して、税制・財政全体で捻出すべきだと主張している。

 

 こうした膠着事態を早期に打開するため、19日と20日、谷垣・自民党幹事長と井上・公明党幹事長も加わって非公式協議を重ねた。与党税制改正大綱をとりまとめる12月10日までに結論を出すことを確認しあったものの、隔たりの大きい対象品目や穴埋め財源について互いに主張を譲らず、一致点を見出すには至らなかった。

格上げした幹事長レベルの協議でも解決の糸口をつかめなかったことから、安倍総理は24日、谷垣幹事長や宮沢調査会長と会談して「国民の理解がえられ、事業者に混乱が起きないよう、わかりやすい制度にしてほしい。財源はいわゆる社会保障と税の一体改革の枠内で議論してほしい」「財政再建計画や一体改革など議論の積み重ねがあり、用意できる財源は限定されているので、それをしっかり守ってもらわないといけない。ない袖は振れない」と、導入段階では対象品目を限定し、一体改革の枠内で安定財源を確保するよう指示した。

 

自民党は、安倍総理の指示を踏まえ、対象品目を「生鮮食品」か「生鮮食品、パン類など一部の加工食品」で調整していく方針で、公明党の歩み寄りを期待する。これに対し、加工食品も対象に含めるよう主張している公明党は、安倍総理が対象品目や軽減額を明言するはずがなく、総理指示を都合よく解釈していると反発を強めている。菅官房長官も「一体改革の枠内とは聞いていない。安定財源の中でということであり、具体的な形で突っ込んだ指示はしていないと思う」「具体的金額は承知していない」との認識を示した。公明党は、譲歩しない姿勢を貫いており、安倍総理・自民党総裁と山口・公明党代表による党首会談での最終的な政治決着を期待する声もある。

両幹事長が交流事業として中国を訪問する12月2日までに大筋合意へこぎつけたい考えで、25日にも非公式協議を開く。ただ、総理指示の解釈をめぐっても溝が深まっており、協議難航の様相を呈している。

 

 

【予算編成や税制改正論議に注目を】

自民党と公明党は、与党税制改正大綱のとりまとめを進めている。最大の焦点となっている軽減税率の制度設計をめぐって、自民党と公明党の溝は深まったままだ。協議期限が迫るなか、自民党と公明党がどのように決着するのかが最大の焦点となっている。一方、政府は、今週中にもTPP対策大綱や1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策を決定し、これらを踏まえて、補正予算案や来年度予算案の編成作業を加速させる。

 

来年度予算案の編成にあたり、政府は、予算編成の基本方針の策定を経済財政諮問会議で進めている。24日に財政制度等審議会がまとめた2016年度予算編成に関する建議では、2016年度予算を財政健全化計画の成否が懸かっている予算と位置付け、政策経費から国債費・地方交付税交付金などを除く一般歳出を2016年度から3年間で約1.6兆円増という抑制目安を「逸脱することは断じてあってはならない」と、歳出改革に厳しい姿勢で臨むよう求めた。具体的には、社会保障関係費を「確実に高齢化による増加分の範囲内にしていくことを求める」と、概算要求6700億円増(2015年度比)から5000億円弱の増加に抑制するよう求めた。医療サービスなどの公定価格「診療報酬」では、診療報酬の本体部分のマイナス改定や、薬の値段などの「薬価」部分の抜本見直しなどを求めている。また、文教予算も、少子化傾向を踏まえて公立小中学校の教職員定数を約3.7万人減らせるとしている。

このことから、政府は、財政健全化計画の路線を「十分踏まえたうえで予算編成を行う」「着実な一歩を踏み出す」と、堅持する姿勢を基本方針に盛り込む。また、TPP対策や1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策の費用は「補正予算での対応とあわせて適切に対処」と、補正予算案と一体で計上することも打ち出すようだ。こうした基本方針を早急に固め、12月1日の閣議で決定することをめざしている。

 

 政府が決定するTPP対策大綱や1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策の内容を抑えつつ、当面、補正予算案や来年度予算案の編成動向をウォッチしていくことが重要だろう。また、軽減税率の制度設計をはじめとする税制改正論議もチェックしておいたほうがよさそうだ。
 

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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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