ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

血しぶけ才能! 撮ろうスプラッター! 映画製作の情熱と秘訣が詰まった『学生残酷映画祭2015』レポート[ホラー通信]

DATE: BY:
  • ガジェット通信を≫


スプラッター、好きですか?

激しい人体損壊に飛び散る血しぶき。スプラッター映画というジャンルに高尚なイメージはないかもしれませんが、限られた予算で描写に工夫を凝らし、観客にショックを与え・魅了するスプラッター作品は、映画作りへの強い情熱と独創的なアイデアが求められるジャンルでもあります。

かつて低予算で作り上げた『死霊のはらわた』がスプラッター映画の元祖となり、今や大物監督となったサム・ライミ。彼のような若き才能が日本にも眠っているかもしれない……。そんな若手監督を発掘する、『学生残酷映画祭』が今年も11月21日にロフトプラスワンにて開催されました。

“学生が制作した人体損壊や流血などの残酷描写がある映像作品”を募り上映するこの映画祭では、映画に造詣の深いゲスト審査員を招き、作品を監督した学生らを前に質疑応答や講評をおこなって最終的にグランプリを決定します。優勝者はキングレコード『ホラー秘宝』レーベルより発売のDVDに収録される“ショートムービー監督権”を得ることができ、日本のホラーファン・カルト映画ファンに自身の作品をアピールできるのです。

今年のゲスト審査員は、『別冊映画秘宝』編集長・田野辺尚人さん、映画評論家・イラストレーターの三留まゆみさん、『へんげ』『劇場版 稲川怪談 かたりべ』を手がけた映画監督大畑創さん。その作品をより面白くするためのアドバイスが盛り込まれた講評には、映画の作り手でなくとも興味深く聞き入ってしまうポイントが多々あり、このイベントの見どころともなっています。

ホラー通信では、そんな『学生残酷映画祭』の今年の上映作品とその講評をレポート。応募作品20作が集まった今年は選考が荒れに荒れ「キレる人も出た」とのこと。そんな激しい審査の末に選ばれた6作品とはーー。

すべての画像が表示されない方はホラー通信をご覧ください。

上映作と審査員による講評


一本目に上映されたのは、『爆弾人間』(監督:萩山祐毅)。映画製作に熱意を燃やす映画部部長が、撮影当日になっても現場にやって来ない部員たちにブチ切れ、ショットガンを手に部員たちひとりひとりに復讐していくバイオレンス・ストーリー。

作品のなかではポンポンとテンポよく復讐が進行していきますが、三留さんはストーリーの作りこみの甘さを指摘。「主人公に沸々と怒りが湧き上がっていくさまをもっと感じたかった。もっと練ろうとは思わなかった?」と監督に問うと、「本編と同じで、協力してくれる人がなかなか集まらず作り込めなかった」と告白。これにはかつて自分も自主映画を作っていた三留さんも、「だましてでも連れてきて映画に出しちゃう! それくらいやらないと!」と肩を押しました。

審査員の田野辺さんは、部員がショットガンで撃たれるシーンに対し、「ショットガンをあの距離で撃ったら内臓が出ます。それを是非次回作に活かして」と具体的なアドバイス。大畑さんが「主人公はどこでショットガンを手に入れたんだろう?」と監督に質問を飛ばし、監督が返答に詰まると、田野辺さんが「まあ、男だったら持ってるよね」とマッチョなフォローを入れ、会場をわかせる場面も。


二本目は『PURSUIT (パースート)』(監督:瓜本拓也) 。自作の殺人映像を配信する裏サイトにハマった女子大生の主人公とその友人が、その裏サイトの管理人により殺人映像の犠牲者にされてしまう残酷ホラー。陰惨で情感たっぷりのオープニングに唸らされます。

これには、大畑さんも「学生残酷映画祭でこんなクオリティのものが見られるのか!と思いました」と太鼓判。しかし、思い入れたっぷりに作られた残虐シーンと、おそらくそうではない通常の演技シーンによってクオリティの差がだいぶ異なる部分も指摘。更に、「殺人サイト自体のアイデアをもっと練るとよかった」とし、すばらしいアイデアのある殺人サイト映画の例として、アクセス数が増えると被害者が殺されてしまうというストーリーの『ブラックサイト』の名を挙げました。

田野辺さんは、「殺人鬼(殺人サイトの管理人)が徘徊し、サイトを見た人間を殺していく動機をあえて描かなかったところが怪談調で面白い」と、情報の少なさが良い方向に働いている点を高く評価。「ただ、飛び出す内臓が白かったですね。血の色や内臓の質感っていうのはスプラッターではすごく重要なところ。ほんのワンカットしか映らなくても、観る者はその違和感が引っかかってしまう」との指摘も。これはホラー映画好きもかなり共感する指摘ではないでしょうか?


三本目は『ポップコーン』(監督:高瀬夢)。ホラー映画の製作に熱意を傾ける主人公は、学校で「ホラーなんて低俗なジャンルは映画じゃない」と否定されてしまいますが、誰かが感動してくれると信じ、自らの体を張ってひとり奮闘し作品を作り上げていきます。衝撃と笑撃の展開を迎え、会場に笑いを起こした作品です。

三留さんは「声上げて笑いましたし、すごく面白く見ました!」と称賛。あまりに想いのこもった作品に、「なにかホラー映画にまつわる恨みがあるの?」と高瀬監督に質問すると、監督は本編と同様に学校側からホラー映画を否定されてしまったという悲しいエピソードを明かし、「映画の中でそういう奴らをぶっ殺す映画を撮ろう!と思ったんですけど、それよりも作った映画を見せて復讐をしようと」と、ネガティブな感情を創造性に消化した作品であることを吐露。

監督自身が演じる主人公の着ているシャツが燃えてしまい、あわや火事になりそうなスリリングな弾着シーンには三留さんも大畑さんも「泣けちゃったよね」と心を揺さぶられた様子。田野辺さんは、そのシーンに「通常ボツにするフッテージを採用しているところに魂を感じた」としつつも、「専門の方にお願いしないと本当に大変なことになっちゃうので、気をつけて」とアドバイスを送りました。


四本目は『喜怒殺楽』(監督:篠原三太朗)。ストレスで“ねじれ腸”になってしまった女性が、その“ねじれ腸”を武器にストレスの根源に復讐をする話から、女性の生理ネタまで盛り込んだ、“感情”をテーマにした衝撃の短編集。監督は三太朗という名前からして男性かとおもいきや、実は女性です。

大畑さんは各短編がグロテスクなストーリーながらも残酷描写を曖昧に描いている点を指摘し、「残酷描写の撮影は工夫が必要だけど、それをやってこその映画。グロテスクでおぞましい表現をもっとやってみてもいいんじゃないかな」とアドバイスしました。

田野辺さんは、「『バトル・ロワイアル』なんかで使われていたヴェルディの“怒りの日”が、この本編にも使われていて。ぼく今年に入って“怒りの日”が流れる映画を結構観てる(笑)。それでちょっと点数が下がっちゃったかなと」と、よくある表現を使っていることに対し厳しい指摘をする場面も。


五作目は『KILL THE CRUTCH』(監督:吉岡光)。松葉杖に機関銃を仕込んだ流れ者が、夫を殺された未亡人とイカれたヤクザとの戦いに巻き込まれていくスプラッターアクション。

田野辺さんは「ついに残酷映画祭で本格アクションが出たな!」と嬉しさを見せ、「銃で撃たれた時の身体の飛び散り方もうまく編集がなされていて、銃で撃たれる怖さがあったなと思います」と残虐シーンの表現も高く評価。「一番良かったのはヤクザのボスですね。彼の黒スーツにちゃんと血のシミがついてる。“こいつは日頃から人殺してるやつだな”と。」と細かい作り込みにも感嘆した様子。

三留さんは「観ていてすごく懐かしいものがありました。“自主映画、こういうの作りたかったんだよ!”という想いが蘇ってきた」と声を大きくしながら熱い想いを語りました。


最後の作品は『血飛沫く生命』(監督:平岩諒一)。学校の部活動を牛耳る“カッタークラブ”という集団に対し、刃の出ないカッターを武器に立ち向かう図画工作部員の少女の奮闘を描いたハイテンションなスプラッター。会場も審査員も沸かせる大きな熱量を持った衝撃作。

大畑さんは「ついに内藤瑛亮フォロワーが現れたなと(笑)」と雰囲気の類似性を指摘しつつも、「監督のテンションと勢いに任せて撮って、それにみんながついていってるという幸せな映画だなと羨ましくなりました。だって訳分かんない話だもん(笑)。それにみんなついていってる」とこの作品が持つパワーに称賛を送りました。
三留さんも「面白かった! 今日の作品みんなどこかお行儀が良くて、もっと爆発してもいいのになという想いがあったんだけど、最後にドカンときたなと。まだ興奮してます!」と高評価。
田野辺さんは、「この監督は去年も出品していましたけど、それに比べると格段の壊れ具合になってきた。あともう一息! がんばってください」と期待を寄せるコメントを送りました。

上映作品は以上6作品。厳正なる審査の上、この場で各賞の受賞作品が発表されます。

受賞作品


カルト映画などの完全日本未公開作品を発掘するDVDレーベル『HIGH-BURN VIDEO』が選ぶ“HIGH-BURN VIDEO賞”「ひとりでがんばっている姿に胸を打たれた」とし、『ポップコーン』が受賞。高瀬監督は昨年この映画祭に出品した際にもHIGH-BURN VIDEO賞を受賞しており、「2年連続賞をいただいて嬉しいです。CGを使わずに昔ながらの手法での映画作りというのを大事にしているので、とても励みになります」と喜びのコメント。
観客からの投票で選ぶ“観客賞”には、同率一位で『KILL THE CLUTCH』『血飛沫く生命』が選ばれました。

そして、ゲスト審査員の選考による栄えあるグランプリは……残念ながら、該当なし。

代わりに、“またまた来年も出しやがれ賞”として、平岩諒一監督の『血飛沫く生命』が受賞。実は昨年もグランプリの該当作品がなく、平岩監督が出品した『神』という作品が、さらなる飛躍を期待された“また来年も出しやがれ賞”を受賞しています。この選考に対し、田野辺さんは「去年以上にモメました。決定打がないわけではなく、グランプリを出すにはまだ早いだろうという意地悪な教師根性。平岩監督に限らず、最終選考に残った6人はそれだけのポテンシャルを持っているだろうと期待しています」とコメントしました。



筆者は今年初めて『学生残酷映画祭』を観覧しましたが、作り手の「映画を作りたい・表現したい」という熱意と、審査員の「面白い作品が見たい・新しい才能に出会いたい」という期待がぶつかり合う、胸の熱くなるイベントだと感じました。学生の作るホラー映画は、技術的に足りない部分ももちろんありますが、プロフェッショナルでないからこそ出てくる表現・荒っぽさの魅力も多分に秘められています。そこに、目の肥えた審査員からの「もっとこうしたらよくなる」という講評が加わると、これらの作品や監督がどう魅力を増していくのか、期待せずにはいられないのです。

今回の出品監督の今後の新作にも期待をしつつ、来年の『学生残酷映画祭』にはどんな才能を持った監督が現れるのか? 今から楽しみでなりません。映画監督を目指す若き才能よ、『学生残酷映画祭』に集え!

学生残酷映画祭 公式サイト:http://szff.web.fc2.com/[リンク]


レイナスの記事一覧をみる ▶

記者:

デザイナーと記者の二足のわらじ。ふだんはホラー通信(http://horror2.jp/)で洋画ホラーの記事ばかり書いています。好きなバンドはビートルズ、好きな食べ物はラーメンと角煮、好きな怪人はガマボイラーです。

TwitterID: _reinus

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP