「ご苦労さん」は失礼なあいさつなのか? 大阪知事選の投票所で47歳会社員が激怒

access_time create folder生活・趣味
「ご苦労さん」は失礼なあいさつなのか? 大阪知事選の投票所で47歳会社員が激怒

よかれと思ってしたあいさつが「失礼だ」とされて相手を怒らせる――。そんなマナーの難しさを感じさせる事件が起きた。11月22日の大阪府知事選の投票所で、47歳の会社員の男が70代の投票管理者に暴行を加えたとして逮捕されたという。

報道によると、投票を終えた有権者に投票管理者が「ご苦労さんです」と声を掛けていたところ、男が激怒。「ご苦労さんという言葉は、目上の者に使う言葉ではない。俺は大阪府民として当然の権利を行使してるんや。謝れ」などと言いながら机をひっくり返し、投票管理者の男性の左側頭部を平手打ちして「机の角を脳天に突き刺すぞ」と脅したという。
「自分で自分を目上だって言う奴にはろくな奴いない」

「お疲れ様」と「ご苦労様」は、確かにビジネスマナーとして使い分けが注意される言葉とされることもある。違いが分からない新入社員が役員に「ご苦労様です」と言って叱責された、という例は枚挙に暇がない。

今回の場合も、接客サービスの感覚でいえば「投票者が上で、管理者が下」と言えるかもしれない。しかし対等な関係として「ご苦労様」でも問題ないという見方もできる。少なくともマナーに対する認識の違いであって、管理者の悪意が感じられるほどのものでもない。

このニュースを知った人からは「いくらなんでもブチ切れ過ぎだろ」と驚くとともに、あいさつの言葉から「上下関係」を過剰に感じ取って暴力に走る男を非難する声が相次いだ。

「自分で自分のことを目上だって言う奴にはろくな奴いない」
「『お客様は神様』と自分で言い出すタイプだな。ああ、やだやだ」
「選挙管理委員会の人は下じゃねーぞ?っていうか、飲み屋でも、客は客で、店員との上下関係なんて無い。いまだにこういうバカがいるのかよって気持ちになる」

中には70歳の投票管理者の方が「人生の先輩なんだから目上だな」という意見も。47歳男の謙虚さが足りなかった、ということだ。
「ご苦労」「お疲れ」の使い分けマナーに根拠なし?

この男と同様に「ご苦労様」を使うのは不適当と考える人もいるようだ。ネット掲示板には「いきなりご苦労さんですなんて言われたらイラっとくるわ。お前は何様のつもりなんだよって思う」という書き込みが見られる。

Yahoo!知恵袋には、2004年の質問として「『ご苦労様でした。』と市役所の職員に言われ…」という投稿があった。期日前投票をした際、市の職員から「ご苦労様でした」と言われたが、「それは目上の人は目下の人に使うものなのではないのか」と疑問に思ったという。

しかし、これらの使い分けマナーも、実は確かなものとは言えないようだ。三省堂国語辞典編集委員の飯間浩明氏(@IIMA_Hiroaki)はツイッターで「ご苦労さまは目下に、お疲れさまは目上に」というマナーは、歴史的に見て根拠がないと指摘している。

飯間氏によると、「ご苦労」は江戸時代にも臣下が主君に対する場面などで使われ、現代でも警察・自衛隊などでは改まったあいさつとして「ご苦労さま」が使われているという。投票管理者が「ご苦労さん」と言ったのは、この感覚のようだ。

一方、「お疲れさま」はずっと新しい言葉で、元は芸能界の言葉ともいわれているという。目上にもふつうに使っていたという。誰かが任意で決めたビジネスマナーが杓子定規で用いられ、それを知らない人を「非常識」と非難する――。世知辛いこと、この上ない。そんな理由で労をねぎらう言葉が伝えにくくなるとすれば、本末転倒というものだろう。

あわせてよみたい:上司に出す印鑑は「左に傾ける」のがマナー?
 

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 「ご苦労さん」は失礼なあいさつなのか? 大阪知事選の投票所で47歳会社員が激怒
access_time create folder生活・趣味
local_offer
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。