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医療過誤事件パート2

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医療過誤事件パート2

 知人の小学生の娘が盲腸となり、緊急入院をした。しかし、1週間か10日ほどで他の病院に移り(両親いわく、看護師からここはダメなので転院しろと言われたとのことであるが、その事実は不明)、直ちに緊急手術となった。

 転院先で開腹してみると、盲腸が破裂しており、腹部全体に膿が溜まっている状態となっており、「ドレーン」と言われる吸引器具で膿を排出しての手術であった。
 手術は成功したが、小学生本人の苦痛はかなりのものであったし、それよりも膿が滞留していたことが原因で、将来子供ができない可能性があると指摘された。
 不安を抱えた生活となってしまう。しかも、何年も後のその時になって、不妊が盲腸手術との因果関係があると立証することはおよそ不可能である。そのような痛ましい事件であった。

 簡単にいえば、当初の病院でより早く手術をしていれば、そのような大事に至らなかったということで提訴となった。いろいろと調べ勉強をした。盲腸に対するその当時の最新の考え方は、できるだけすぐの手術というものであった。

 盲腸には薬などで散らす「保存治療」と手術で摘出する治療とがある。
 保存治療の場合には、慎重に経過観察を行い、3日ほどで実効性がないとなれば「手術適応状態」ということで、盲腸の摘出手術に直ちに切り替えるというのが一般的な考えである。

 裁判での争点は、手術適応状態にあったかどうかであった。それが認められれば、手術適応状態であったにもかかわらず、これを見過ごして漫然と保存治療を継続したとして、病院側の過失が肯定される。
 手術適応状態であったかどうかは、血中の白血球濃度、体温の推移、食事の量その他諸々の要素を検討して判断されることとなる。そこで開示された看護記録を精査すると、白血球濃度も体温も上昇下降を繰り返していた。
 病院側の主張は、幾度か白血球の数も減少し、体温も下がったので、保存治療の効果が出ており、その後増加や上昇があっても、その時点では手術適応状態とはいえないというものであった。
 しかし、投薬との関係を見ると、白血球の増加を抑制する薬を投与し、解熱剤を投与した後に減少や下降が見られるのであって、それは投薬のせいであって、保存治療の効果によるものではないと主張した。

 その病院での最終日、主治医は非番であったが、体温が急上昇し、慌てた看護師が連絡をとったものの、解熱剤投与を指示しただけであった。外科は、チーム医療が一般的で、主治医がいなくとも、他の医師が代替できる体制が整えられていなければならない。
 代替医師はいなかった。それで、他の病院に移り、緊急手術となったのである。医療体制の不備も裁判で指摘した。
 保存治療を継続したこと、医療体制のいずれについても、医師に過失はないと判断されて、敗訴であった。

 両親は当然納得せず、控訴となった。高裁では和解勧告がなされた。病院側はなかなか応じなかった。国立病院というせいもあったのだろう(国家賠償請求訴訟であった)。
 しかし、高裁の裁判官の説得もあって、病院側は和解案を受け入れた。両親も当初は和解に消極的であった。しかし、裁判官の一言で和解を受諾した。
 「負けますよ」といったような脅しとかいうものではない。両親に対して「お子さんが辛かっただろうこと、ご両親が苦しんだことはよく分かります。本当に痛ましいことだったと思います」と真摯に語りかけたのである。両親は、裁判官がそこまでの心情を抱いていてくれていることで精神的に十分に満足できたと私に語った。

 人間味にあふれた裁判官に心から感謝した。
 それにしても、知り合いの医師に意見書の作成をお願いし、聞き取りをした結果を忠実に書面としたのだが、裁判に提出するとの段階で、大幅に書き換えられてしまった。
 重要な点はすべて曖昧な表現となってしまった。身内意識の医師にはあきれるばかりである。

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