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「明治維新を全否定」の歴史本 会津地方で大ベストセラーに

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「吉田松陰は山県有朋が創った虚像である!」
「久坂玄端は天皇拉致未遂犯である!」
「勝海舟は裏切り者である!」
「長州藩はテロリスト集団である!」

 このように、新聞広告にはなんとも刺激的な惹句が並ぶ。日本を近代化に導いたと教えられてきた明治維新を全否定する歴史書が、ベストセラーになっている。ヒットの背景を探ってみると、やはりあの“遺恨”があった。

 歴史書としては異例の5万部を超えるヒットとなっているのは、「日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト」のサブタイトルを冠した『明治維新という過ち』。出版元・毎日ワンズの松藤竹二郎社長がいう。

「立花隆氏が週刊文春、斎藤美奈子氏が週刊朝日の書評で取り上げて話題になりました。ただし、読みもしないで新聞広告を見ただけで抗議をしてくる人も多いんです」

 著者の原田伊織氏は69歳で、作家のほかクリエイティブディレクターとしても活躍する人物。なぜこんな刺激的な歴史本を書こうと思い立ったのか。

「子供の頃から、自国の歴史を否定する風潮に疑問を感じていました。洋の東西を問わず、戦争に勝った方が自分たちに都合のいいように歴史書を書く。ただし、どの国も戦後100年も経てば必ず当時を検証するものです。ところが明治維新後に生きた日本人はその検証をやってこなかった。そこで明治時代以降の歴史を一冊にまとめておくべきだと思ったのです」

 なかでも原田氏が鋭い筆鋒を向けているのが吉田松陰である。一部を抜粋する。

〈松陰とは単なる、乱暴者の多い長州人の中でも特に過激な若者の一人に過ぎない。(中略)今風にいえば、東京から遠く離れた地方都市の悪ガキといったところで、何度注意しても暴走族を止めないのでしょっ引かれただけの男である〉

〈思想家、教育者などとはほど遠く、それは明治が成立してから山縣有朋などがでっちあげた虚像である〉

〈松陰の外交思想というものは余り語られないが、実に稚拙なものであった。北海道を開拓し、カムチャッカからオホーツク一帯を占拠し、琉球を日本領とし、朝鮮を属国とし、満州、台湾、フィリピンを領有するべきだというのである〉

 そして〈長州閥の支配する帝国陸軍を中核勢力として、松陰の主張した通り(中略)軍事進出して国家を滅ぼした〉と原田氏は主張するのだ。他にも、久坂玄瑞を天皇拉致未遂犯として糾弾し、勝海舟を〈長州・薩摩に幕府を売った張本人〉と指弾するなど、維新の志士、英傑たちをなで斬りにしている。

◆幼稚園のお遊戯は「白虎隊」

『明治維新という過ち』はある地方で突出して売れているという。長州と遺恨の深い福島・会津である。

「会津若松市の方からの反響はもの凄く、『よくぞ書いてくれた』という激励の言葉をたくさんいただいた」(原田氏)

「『長州テロリスト』の言葉を見て、即買った」(48歳会社員)という人も珍しくないようで、同市内では100冊以上売れた書店もあるという。

 明治維新において、会津藩は長州藩・薩摩藩を中心とする新政府軍から「賊軍」の汚名を着せられ、徹底的な弾圧を受けた。会津戦争では「白虎隊の悲劇」に代表される数多くの犠牲者を出し、しかも新政府軍が犠牲者の埋葬を禁じたため、会津の人々は家族の遺体が野に晒され、鳥や獣に食い散らかされる悲惨な状況を目の当たりにしたとされる。

 この時の遺恨は150年経った今も消えていない。2007年、山口県出身の安倍晋三首相が会津若松市を訪れて「先輩がご迷惑をかけたことをお詫びしなければならない」と語り、2011年7月には東日本大震災の義援金などへの謝意を伝えるため会津若松市長が萩市を訪れたが、市長は「和解とか仲直りという話ではない」と語った。

 歴代の会津若松市長が和解を拒否してきたのは、市民レベルで“反長州”が根強い証左でもある。

「幼稚園のお遊戯会の出し物といえば、白虎隊の剣舞。ラストシーンでは刀を抜いて、お友達と刺し違えて倒れるんです。それが当たり前と思って育ってきたので、長州に対して敵対意識が芽生えるのは当然ですよ」(会津在住・50歳会社員)

「亡くなった祖母の口癖は『薩長から嫁はもらうな』。社内の県人会では年配の先輩たちが酔っぱらって『薩長の首を取れ!』とわめくのが恒例になっている」(会津出身・35歳会社員)

 なかには、「会津を通る国道が“49号線”という縁起の悪い数字なのは長州の嫌がらせ」(会津在住・58歳公務員)と真顔で語る人もいる。会津の人たちが同書を読んで溜飲を下げたのは当然かもしれない。

※週刊ポスト2015年11月27日・12月4日号


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