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ピクサーが映画『トイ・ストーリー』20周年を祝福、製作過程の苦難を明かす

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映画『トイ・ストーリー』が公開されて20年、同作はアカデミー賞で祝福され、米ウォルト・ディズニーのテーマパークのアトラクションとなり、スミソニアン博物館の展示物となっている。主演キャラクターのバズ・ライトイヤーは、長期間の宇宙遊泳のために国際宇宙ステーションを訪れるまでになった。

10月26日の夜(現地時間)、サンフランシスコのカストロ・シアターにて、『トイ・ストーリー』のクリエイターとピクサー・アニメーション・スタジオの創設者たちは、世界にコンピューター・アニメーションをもたらした同作と同社に心を奪われている観客たちを、90分間の「パーソナル・ツアー」へと誘い、『トイ・ストーリー』にまつわる画期的なすべての出来事を伝えた。

ピクサーが20年間活躍し続けたのは、優れた技術よりも、創造的なストーリーテリングを高く評価するおかげである、ということはほとんど一般的によく知られた話だろう。しかし、カストロ・シアターですし詰めになった観衆たちの前で、そのありふれた話が真実に思えた。同社の創設者であるジョン・ラセター、エドウィン・キャットマル、ピート・ドクター、アンドリュー・スタントンは、『トイ・ストーリー』の登場キャラクターの当初のネーミング(NASAの宇宙飛行士であるバズ・アルドリンに影響された)から、エキストラのプラスチックの軍人を主演キャラクターたちに変化させるまでのワクワクする絵コンテのセッションや、24時間丸通しで作品の再編に努め、米ウォルト・ディズニーからの支援断ち切りを必死で防いだ話に至るまで、あらゆる舞台裏を明かした。

『トイ・ストーリー』は、完全にコンピューター・アニメーションのみを用いて作られた最初の長編アニメ映画として歴史に名を残した。しかし、プレゼンテーションでは、ピクサーは発足段階から、キャラクターの心をより強く表現するためにコンピューターを用いたことを強調した。ピクサーの共同創設者で、米ウォルト・ディズニー・アニメーションとピクサーの現社長である、コンピューター科学者のキャットマルは、1995年に、『トイ・ストーリー』の最初の批評家からの反応に対する彼のチームのリアクションについての逸話の多くを正式に認めた。

キャットマルは、「ほとんどのレビューは、これはコンピューター・アニメーションだ、とたった1行で述べていた」 「私から言っておかねばならないのは、全ての技術者たちは、このレビューの内容が技術に関することではなかったことをとても誇りに思った。レビューはストーリーついて書かれたものだった。そして、それはその後ずっと同社の基礎となっている」と、イベントの終わり近くで思い出したように語った。

同イベントは、映画制作会社をサポートし、教育プログラムをホストし、毎春行われるサンフランシスコ映画祭のスポンサーをしている非営利団体のサンフランシスコ映画協会に利益をもたらした。同イベントは、『トイ・ストーリー』を祝う限定シリーズのイベントの中でも直近のイベントだった。3月に開催されたサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)のパネルディスカッションでは、最終的な完成作品につながったストーリーを何度も推敲したことについて述べていた。

今年8月、ピクサーは、フロリダにある米ディズニー・ハリウッド・スタジオに新しく11エーカーの広さを持つ“トイ・ストーリー・ランド”を建設するという、『トイ・ストーリー』の偉業となる次の展開を公表した。同作は、10月早々にロサンゼルスで行われた米映画芸術科学アカデミーのパネルディスカッションでも更なる評価と後押しを得た。

ピクサーは、次回作となる11月25日米公開の映画『アーロと少年』に伝統が繋がることを願っている。同作のピーター・ソーン監督は、ピクサーの最新の仲間であるアパトサウルスのアリオと少年スポットが登場する長い予告編を紹介した。

同作のチーフ・クリエイティヴ・オフィサーのラセターとキャットマルは、美術学校での経験や科学を学んでいた頃のパーソナルな冒険を、端的に観客たちに体験させた。キャットマルはそれから、ルーカスフィルムでの自身の若き日々を語った。キャットマルはルーカスフィルムで、映画を作るために技術者40名ほどのグループを率いていた。彼らの実績と成功は、コンピューターを利用した非直線的な映像編集方式(ノンリニア編集)、デジタルサウンド編集、高解像度編集と3Dコンピューター・アニメーションという、現在モダンな映画制作の中心であるコンピューターによりつくられたイメージの基礎的要素となった。

ラセターは、デスクの脇で布団に寝ている姿を表した写真からも分かるように、ピクサー黎明期に、オフィスから殆ど去ることがなかった日々を描いた。ラセターの成功は、1986年に、ゴムボールで遊んでいるデスクランプの親子を描いた『Luxo Junior(原題)』という短編アニメーション作品の製作で訪れた。スティーブ・ジョブズという名の若い技術者は、ダラスで行われたテクノロジーカンファレンスでその短編を見ていた。ジョブズは、「私は『Luxo Junior(原題)』を見た時に感動しました」と、サンフランシスコの観客たちに向けたビデオ上映の中で語った。ジョブズは、「『Luxo Junior(原題)』は、私にとって大きなターニングポイントでした。・・・あなたも作品を見たら、“そうだね、私はこれを1時間でも観ていられる。私はこの作品をぜひ1時間観ていたい”と言うことでしょう」と、語った。

米アップル社の創設者であるジョブズはピクサーを買収し、その後、キャットマルとラセターの確固たるパートナーとなった。二人は、故人となったジョブズに関して、最近の伝記映画にあるように、規律に厳格な人とは異なる見解で思い返す。二人は、ジョブズが彼らに真摯に「何が起こっても、私たちはお互いに信じなければいけない」と、告げたのを思い起こす。

後に『トイ・ストーリー』となるものは、実際は30分のホリデー向けの特別番組を作るところから生まれ、アカデミー賞を受賞した『ティン・トイ』のスピンオフ作品であった。後におもちゃのカウボーイであるウッディとなるそのキャラクターは、かつては腹話術師の人形だった。そのプロジェクトは立ち消えてしまった。米ウォルト・ディズニーと配給契約を結んだ時、新興の会社であったピクサーは突如、長編映画のアイデアが必要となり腹話術師の人形のコンセプトに戻った。ラセターは、糸で吊るしたパペットは即座に「気味が悪すぎる」と判断した、と説明した。スーパー・クリエイターでアニメーターのドクターは、すぐにラセター、ライターおよびクリエイターのアンドリュー・スタントン、アーティストおよびアニメーターのジョー・ランフトと、このコンセプトをより良くするための企画会議に参加した。そして、空手チョップをするアクション人形を思いつき、それがバズ・ライトイヤーに姿を変えたのだった。

チームは、あべこべな仲間が主演の、友達の映画のような作品を構想した。彼らは、映画『おかしな二人』のような明らかな試作品、あるいは、映画『手錠のまゝの脱獄』のような思いもよらない試作品に没頭した。同時に、作品のヒーローたちは逆境の中で連携を築かないといけない、とラセターは信じていた。ラセターは、「私たちは、子どもが大好きな古いおもちゃのために出来ること、古いおもちゃの人生のなかで最も恐れられた日である誕生日(加えてクリスマスもある)に、新しいおもちゃを手にする子どもについて考え始めた」と、述べた。

ピクサーの製作者たちは、初期の『トイ・ストーリー』の草案はぼんやりとしすぎだ、という米ウォルト・ディズニーからの指導に従いながら、多数の失敗を受け止めた。製作者たちは、「尖らすように、もっと突き詰めて」と言われた。彼らは、ウッディというキャラクターを全く手に負えなくなるポイントまで突き詰めた。それは、イベントで観客たちのために上映された、一連のスケッチの中ではっきりと示された。ラセターは、平たく、「結果は酷いものだった」と、表現した。

「だが美しい、ある意味では」と、スタントンは冗談を言った。米ウォルト・ディズニーのエグゼクティヴたちは、ピクサーのチームに、米ウォルト・ディズニーは映画を支援できるとは考えていない、と話した。米ウォルト・ディズニーに悲惨なプレゼンテーションをした日は、ピクサーの周りでは「暗黒の金曜」として知られるようになった。しかし、クリエイティヴ・マスターのラセターは、米ウォルト・ディズニーに対し2週間の猶予を懇願した。「2週間ください、そして見たものがもしお気に召さなければ、我々は今よりも小さなところ(ロサンゼルス)へ引っ越し製作を停止します、と私は言った」と、ラセターは述べた。

それは大騒ぎになり、限られたすべての時間で映画を書き換えることになった。ラセターは、「私たちは完全に作品をやり直した」と、言った。その過程で、若い会社は教訓を学んだ。「私たちは、映画を良くすると思う記録を残し、そう思わないものを捨てた。そして私たち自身の直感をその時点で信じ始めた」と、ラセターは語った。その2週間後、米ウォルト・ディズニーは、その作品の劇的な改良に驚いた。手作りのビデオには、ボニー・アーノルドを含む米ウォルト・ディズニーのエグゼクティヴたちから『トイ・ストーリー』が再度許可を得た、という良い知らせを受け取っているクリエイティヴチームの姿が映っていた。

スタントンは、若い時から、ピクサーのチームが自分自身の天賦の才能を持つことを固く決意していたと語った。チームは、過去のディズニー映画が大好きだが、チームのルールを作ることを欲した。そしてこれらは、(わずかにふざけて)「歌は無し、幸せな村も無し・・・悪人も無し」というのも含んでいた。このルールは曲げられるかもしれないが、創作過程は変わらないままだ、とピクサーチームは語る。

ピクサーの顧問団は、サンフランシスコでのイベントでいままでの記録をレビューする必要がなかった。多くの出席者たちはすでに知っていたからだ。シリーズ続編の『トイ・ストーリー3』(2010年)の興行収入は、初回作の3億6200万ドルに比べ、全世界で10億ドル以上を叩き出し、初回作をたやすく追い越した。ピクサーのひときわ高い水準から比較すると、『トイ・ストーリー2』(1999年)のような堅実なヒットは、ただ無難なだけとして記録される。大半の映画製作者ならば、4億8500万ドルの売上のためなら何でもするだろうが。

この夏、ピクサーは、社会通念にさからう違ったコンセプトの作品で再度ヒットを狙った。映画『インサイド・ヘッド』は、抱えている悲しみは人の幸せに不可欠な一面だという子ども向けの映画に、革新的な奇想を採用した。その決断は、より重要な高い評価の点だけでなく、巨額の興行収入の点でも利益をもたらした。6月に米公開して以来、悲喜こもごもの『インサイド・ヘッド』は、全世界で8億4200万ドル以上を記録している。

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