ニコニコ動画きっかけに漫画家へ 『するめいか』作者・ルーツ先生に話を聞いてみた

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『するめいか』作者 ルーツさん

 ニコニコ動画で漫画が読めるサービス「ニコニコ漫画」で、2011年6月15日から漫画『するめいか』の連載が始まっている。この作品の作者は、ニコニコ動画への動画投稿をきっかけに漫画家としてデビューした「ルーツ」さんだ。

 ルーツさんは、大学在学中に自作のゲームをプレイする「ゲーム実況」と呼ばれる動画などをニコニコ動画へ投稿していたことがきっかけで出版社「幻冬舎」から声がかかり、「幻冬舎コミックス」発行の「月刊コミックバーズ」で漫画『するめいか』を連載することになったという経歴を持つ。

 『するめいか』は女子高生4人が織り成す日常を描いたギャグ漫画。2009年4月から「Webマガジン幻冬舎」で連載を開始し、同年7月からニコニコ動画に自主制作アニメ版の『するめいか』が公開され人気に火がついた。同年11月からは「月刊コミックバーズ」に移動し、現在も連載が続いているが、ニコニコ動画でも出版社公認のもとで連載が開始された。

 コミックスの2巻が6月24日に発売され、今勢いに乗っているルーツさんと『するめいか』。そこで、物語の舞台ともなっている東京・亀戸の自宅兼仕事場にうかがって、ルーツさんが『するめいか』という作品にかける思い、そして漫画家としての原点であるニコニコ動画について、話を聞いてみた。

ルーツさんの作業風景

――まず始めに、漫画を描こう、漫画家になろうと思ったきっかけを教えてください。

 中学生の頃にずっと友達が漫画を描いていて、それが本当に下らなくって面白くって、じゃあ自分もやってみようって感じで始めたのがきっかけですね。

 本格的に描き始めたのは大学に入ってからです。ニコニコ動画でゲーム実況の動画を投稿してたら、それを見た出版社(幻冬舎)の人が「おもしろいな」って声をかけてくれた。「このまま普通に就職してたら面白くない」とちょうど思っていた時だったんで、本当にタイミングというか運が良かったんです。

――出版社から声がかかった時どう思いましたか?

 本当に嬉しかったです。でも、はじめは「Webマガジン幻冬舎」で漫画を連載したんですけど、まったく盛り上がらなかった(笑)。それで、せっかくニコニコ動画をきっかけに声をかけてもらったんで、連載していた漫画を自分でアニメ化して週に1本(ニコニコ動画で)公開してみようと思って。そしたら結構勢いがついた感じですね。

――動画への反応やコメントとか見てみてどうでしたか?

 それまでの動画で僕のこと知ってくれている人が「何やってんだお前」「ちょwwwルーツwww」みたいな感じ来てくれて、それも嬉しかったんですけど、全然知らない人が「誰だこいつ」「何これ」みたいにコメントしてくれて、新しい風が吹いていると思いましたね。

■自主制作アニメを作っていて「不審がられた」!?

ニコニコ動画に投稿された『するめいか』の一コマ

――ニコニコ動画に投稿した自主制作アニメ版『するめいか』では、背景に実写を使っていることが特徴的ですが・・・

 単純に背景を描く技術がなかったんですよ(笑)。

 (背景を書くことが)当時の自分では、未知の「オーパーツ」状態だったんで(笑)。「綺麗な背景、イコール、写真と同じじゃないか!」って意味不明な理論が自分の中に出来てきて、「じゃあ、実写でいっか!」みたいな。

――背景は自分で撮影しているのですか?

 はい。街中で写真や動画を撮影していると、よく不審な目で見られますが・・・気にしたら負けだと思います。

――小ネタやギャグも満載ですが、ストーリーはどうやって考えているのですか?

 割と思いつきですね。作っているときに「こうしたら面白いんじゃないか」と思ったらすぐやってみる。面白くないときも多いんですけど(笑)。昔から自作のRPGとかを作っていたんでストーリー作るのは好きです。

■漫画家なるために必要なことは「家族を大事に」!?

ルーツさんの描く漫画『するめいか』の原稿

――ニコニコ動画には漫画が好きで、ルーツさんのような漫画家になることが夢だという人もいると思います。面白い漫画を描くコツはありますか?

 それがわかれば100万部ですよ(笑)。

――では漫画を描くときに注意してることなどは・・・

 えっと・・・まぁ・・・「家族を大事に」・・・ですかね。

――「家族を大事に」!?

 やっぱり親は偉大ですね。やりたいことをやらせて貰って、それこそ金銭もですけど、信頼してくれてる。本当にダメになっても、最後は実家に帰れば親がいてくれる。そういうところはやっぱり両親には感謝してます。

――では、連載漫画を持つことになって、ご両親はすごく喜んでくれているでしょうね。

 はい。ただ、(「月刊コミックバーズ」連載の『するめいか』)第1話が載ったときには「載ったぞ!」って伝えたら、10冊くらい買って親戚や友達に配ったって言われて・・・さすがにそれはやめてくれと(笑)。実家に帰ったら自分の漫画が積んであって、何度も「やめてくれよ」って言ったんですが、それでもまだ買ってるみたいです。

ニコニコ動画を楽しむルーツさん

――漫画家になるために必要なことはありますか?

 うーん・・・やっぱり親に感謝すること(笑)。あとは、自分が、「面白いな」、「盛り上がっているな」と思えることが、ネットを見ると世の中にいっぱい散らばっているので、そういうものを見つけたらとにかくチャレンジしてみることかな。

――それがルーツさんにとっては「ニコニコ動画への投稿」だったのですか?

 そうですね。ニコニコ動画に投稿したりとか、それこそ自主制作でアニメをつくったりしたときも、「面白そうだな」と思ってやりました。やってみてダメだったら切り替えて次を探せばいい。とりあえずやってみれば何かしら技術とか、知り合いとか増えるし、全く意味が無いということはないんで。何もしないでいるよりは、何でもいいから色々とやってみるということは大切ですね。

■「魅力を自分で言うのは恥ずかしいんでやめて下さい(笑)」

――漫画『するめいか』が新たに「ニコニコ漫画」でも連載され始めました。あらためて作品の魅力やこだわりを教えてもらえますか?
 
 ネーム(=コマ割りや台詞の下書き)の段階で台詞ひとつをとってみても面白くしたりとか・・・あんまり魅力やこだわりとか自分で言うのは恥ずかしいんでやめてくださいよ(笑)。

ルーツさんの描く漫画『するめいか』の一コマ

――6月24日には「月刊コミックバーズ」で連載中の『するめいか』の2巻も発売されます。みどころはどこですか?

 1巻ではまだ序盤で方向性がふわふわしたところもあったんですけど、2巻ではだいぶキャラそれぞれの個性が(自分の中でも)分かってきたんで、それが滲み出ているところかな。

 ミッちょん(=渡辺三木・わたなべみき)というツッコミのキャラがいるんですけど、その子が話の中心になってきて話が進むところが増えてきたんで、ミッちょんがみどころですね。

――最後に、作品を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします。

 「びっとやってっからよぉ」・・・あ、こんな感じでいいですか。

――(笑)。ありがとうございました。

(文・西川真帆、聞き手・丹羽一臣

◇関連サイト
・[ニコニコ静画]するめいか – ニコニコで漫画を描いてみた
http://seiga.nicovideo.jp/manga/surume
・月刊コミックバーズ – 公式サイト
http://www.gentosha-comics.net/birz/
・Webマガジン幻冬舎 – 公式サイト
http://webmagazine.gentosha.co.jp/
・[ニコニコ動画]するめいか氏 – ルーツ さんの公開マイリスト
http://www.nicovideo.jp/mylist/25795308
・[ニコニコミュニティ]【どうも】ルーツ氏【ぼくです!】
http://com.nicovideo.jp/community/co2641

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