景観に厳しい京都。個人宅を建てるときもルールってあるの?

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古都の風情が漂う街、京都。その街並みの美しさは厳しい景観に関するルールがあるからこそ保たれている。では、もし京都に一戸建てを建てるとしたら、どんな建物なら良くて、どんな建物がNGなのだろう。京都の建築事情に詳しい「いたや工房建築事務所」代表の石巻充啓さんにお話をうかがった。
個人宅も“京都っぽい”和風の建物しか建てられない

――昨年は京都市で看板などを厳しく規制する条例が施行されました。一戸建てに関してもルールがあるのでしょうか?
京都市は市街地を中心に多くの部分が景観地区に指定されています。景観地区に家を建てようと思えば、一戸建ての場合もさまざまな細かいルールを守らなければなりません。どのエリアか、主要な観光名所の近くかどうかなどによって、高さ、屋根の形や色、勾配の角度、壁の色、材質に至るまで細かい規制があるんです。われわれ専門家でも難しくて毎回調べなくてはならないほどです。
そのルールを一言で言うと「京都っぽい建物しか建ててはだめだよ」ということですね(笑)。基本的に“和風”の外観でなければならず、最近人気の四角い豆腐みたいな形の建物はNG。まあ、「和モダン」ぐらいまでは許されます

――具体的にはどんな規制があるのですか?
例えば、市街地の景観地区と呼ばれるエリアでは「日本瓦および平板瓦はいぶし銀とする」「銅板以外の金属板およびそのほかの屋根材は、原則として光沢のない濃い灰色か黒とすること」「塔屋等の高さは3m以下とすること」などが決められています。景観地区のなかでも下鴨神社や京都御所の周辺の「歴史遺産型美観地区」に当たる所は、さらに「特定勾配屋根(原則として軒の出60㎝以上)とする」などが加わります。ややこしいでしょう?誰もが知っている観光名所付近は規制も厳しい

――エリアによって違うんですね。
四条東山・祇園あたり、それから誰もが知っている観光名所、例えば金閣寺とか銀閣寺などのお寺の付近も厳しいですね。昔からお寺の周りに人が住んでいますから、超有名なお寺の近くに宅地が売りに出ることもあります。でも「いい場所が売りに出た」と飛びついて購入すると、思いのほかいろんな規制があって、好きな建物が建てられなかったり、規制に従うとコストがすごくかかったりすることもあるので、しっかり確認する必要があります

――景観を守るための高さの制限も厳しそうですね。
京都市内全域は五重塔以上の高さ(60m以上)の建物は建てられない。60mというとだいたい20階ぐらいです。だからタワーマンションは建ちません。
例えば銀閣寺周辺なら「左大文字山」と銀閣寺の景観を妨げてはならない。視点場という基準地点があって、そこから見たときに大文字や銀閣寺の景色を妨げる高さがあってはいけないんです。京都は高い建物がなく、五重塔だけがすっと立っているイメージがあるでしょう。あの光景は変わらないわけですね

――ほかにも特有のNGパターンはありますか?
意外ですが、京都市内では真っ白い壁はNG。でも、本漆喰ならOK。外から見える室外機には格子などでカバーをつけなければいけないこれから京都の街はもっと美しく整備されるはず。資産価値も上がるかも!?

――一戸建てを建てるときにまず注意する点は何ですか?
京都での施工の経験が多い、良心的な工務店や設計士に頼むことが大事です。和風建築はコストがかかるので、安価を売りにする不動産会社や建築会社だと、すごく安っぽい“なんちゃって和風”になる危険性があります。また、ルールが厳しくて分かりにくいことにつけ込んで、高いコストをふっかける業者もいるかもしれません。これはわれわれ専門家の仕事ですが、普通、家を建てるときは、まず建築確認をとりますが、京都市の場合はその前に「ここにこんな家を建てたい」と市の担当者と相談して許可をとる必要があります。建築基準法に適合しているかどうか以外に、「景観保全」「眺望景観」「屋外広告物」など京都市特有の項目があり、それらに合致した建物でないといけないからです

建築家にとっては、個人の財産である土地にその人の好きな家を建てられないというジレンマがありますが、景観ルールのおかげで、超高層ビルが建ったり町家の並びに奇抜な家が建つこともないわけですから、京都の雰囲気が好きな人にとって、とても安心です。新築やリフォームのとき、みんながこのルールを守っていけば、今後、京都はどんどん美しい街に整備されていくと思います。京都の資産価値はこれからも上がっていくのではないでしょうか。●取材協力
自然住宅 いたや工房建築事務所●参考資料
京都の景観ルール(京都市都市計画局)
京の景観ガイドライン 建築デザイン編
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/11/12/100599/

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