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櫻井有紀、自身のソロライブにてRaphaelの名曲たちを熱演

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櫻井有紀がライフワークとして2年前から続けてきた「独唱」の集大成を、彼にとって特別な日である11月1日に開催した。現在、riceのヴォーカリストとして活動する有紀が、彼の音楽キャリアの始まりであるRaphaelのヴォーカリスト・YUKIとコラボすることに決めた今夜のステージ。そこで彼は、時を越えた悠久の空間を作り出した。大掛かりなセットも派手なバックバンドもいない中、櫻井有紀というただ一人のヴォーカリストがその生き様をまざまざと見せつけた──。

11月1日(日)@shibuya duo MUSIC EXCHANGE (okmusic UP's)

rice/Raphaelの櫻井有紀が、riceとしての活動の合間を縫い、2年前より単独で続けてきた“独唱”。これは、コーラス・ハモりなしの1声勝負で挑むライヴスタイルで、riceの曲を中心に、カバーソングも織り交ぜながらピアノ弾き語りで歌い上げるステージだ。Rapahel時代よりその歌唱力に抜群の定評がある有紀の真骨頂を、バンド形式とはまた違った形でじっくり聴くことができるため、ファンの間で好評を博しているが……。実はこの形式でのライヴは、今回のrice×Raphaelを念頭にスタートさせたものだったという。自らの音楽キャリアのスタートとなったRaphaelと相方のHIRO(Dr.)とともに精力的な活動を展開しているrice、ふたつのバンドが紡ぎ出す音楽を、自らの声と演奏で融合させたいという想いが結実したのが、今日この日だった。

白いタキシードに身を包んでステージに現れた有紀は、まず、riceの『煌々』を歌う。riceのサポートキーボーディストとしてもおなじみの文ちゃん(畠中文子)が奏でるピアノが有紀の伸びのある声にやさしく寄り添うが……。亡くした大切な人への想いを綴ったこの曲を歌う有紀の声を、少なからずの緊張感を感じながら聴いたのは私だけではなかったと思う。きっと、リスナーである私たち自身も緊張していたからだと思うが……。Raphaelの活動が止まってから14年を経て初めて、riceとRaphaelが融合するステージが今まさに始まろうとしているのだから、演者にも聴く側にも多少の硬さが存在するのは無理もない。そんな中、有紀は、2曲続けて歌ったところで、こんな言葉を始まりの挨拶として客席に向けた。

“時代やバンドの垣根を越えて、シンガー・櫻井有紀、そしてYUKIが、自分が歩んできた道のりを歌ってみようと企画しました”と──。

その言葉通り、riceのナンバーで幕を開けたステージは、Raphaelの楽曲を織り交ぜながら進み始めた。『僕と「僕」』、『「Sick」~×××患者からのカルテ』といった、Rapahel初期・中期のナンバーが続けて演奏される。この時のステージは、文ちゃんのピアノに代わり、YUKIが自身で鍵盤と向き合う弾き語りスタイルだ。MCでも話していたが、独唱を始めるにあたり、2年前から鍵盤の練習を始めたという有紀。まだまだ満足に弾ける技量はないけれど、想いのピークを迎えた今こそこうして歌いたいという彼の原動力は、Raphaelの同胞・華月が、『lost graduateion』のサイレントバージョンを録った時、“YUKIの歌声はこういうアレンジがすごく似合う。YUKIは将来こういう歌がよく似合うようになるよ”と言ってくれたことだったそう。自身の胸に秘め続けた10数年分の想いを、今は亡き友や今でも彼を支えてくれる仲間たちに背中を押されながらゆっくりと客席に向かって吐き出していく。のちのMCでYUKIは「これ(華月との共作でRaphaelのデビュー曲となった『花咲く命ある限り』)作ったの、17歳の時だよ? 今34歳だよ? すごいことだよね。ネットの恩恵もあるかもしれないけど、今でもこの曲をみんなが知ってくれてるんだもん。みんなの中にいつまでもあるんだもん」と話していたが、私も、Raphaelの初期の楽曲をあらためて聴いて驚いた。年端もいかない少年が、こんなにも慈愛に満ちた感性で鋭い言葉を紡ぎ出していたのかと。人生経験を積み重ね、Raphael時代以上に深い歌が歌えるようになったYUKIが今歌うからこそ、そのメッセージ性がより深みを増して心に届く。まさに時代を越えたコラボレーション。今回のライヴタイトル“悠久”に相応しい世界観が徐々に徐々に展開されていく。

『秋風の狂詩曲』を10曲目に演奏する前、ヴァイオリンの貴恵ちゃん(寺島貴恵)ら4人の弦楽器隊を呼び込んだあとにYUKIは当時のエピソードをこう振り返った。
「『mind soap』というアルバムで、さっき聴いてもらった『「僕」と僕』という曲のストリングスアレンジを僕がやらせてもらったの。その頃から、ストリングスやオーケストレーションに興味があったんだけど、プロデューサーさんやメンバーにデモテープを持っていくたびに、「もうそれ以上目立たないで」と華月に言われ続けてね(笑)『「僕」と僕』以降はオーケストレーションを手掛けさせてもらうチャンスがなかったんだけど……。そんな中でも「今、頭の中で構想している曲には、YUKIのストリンスグワークが必要かもしれない」って華月が言ってくれたりした事もあって。残念ながらそういったアレンジのコラボはかなわぬままRaphaelは休止してしまったけれど。あの日のあの言葉達を信じて今回、Raphaelの曲をオーケストレーションしてみました!!」

この日の有紀は、数曲演奏するごとに、当時の記憶、今の想いを、曲に関するエピソードに絡めながらゆっくりと言葉を選びながら話していた。中でもとても心に響いたのは、「音楽は聴いてもらってナンボなんだよね」「本当に亡くしてしまうというのは、たぶん、忘れられてしまうってこと。忘れられてしまわないために歌い続けていけば、楽曲は輝きを失わない」「音楽は色褪せないよ」といった言葉たちだった。ここにこそ、有紀が時に傷つき時に迷いながらも、今日この日を迎えた意味がある気がしてならない。リーダーの死という結末を経て途中で歩みが止まってしまったRaphaelの曲と、現在進行形で未来へと向かうriceの曲を並べて演奏することはとても勇気がいったことだと思う。華月が空に昇ってもう15年、されど15年。まだまだ悲しみを背負ったままの人はたくさんいる。有紀本人もそんな中の一人だからこそ、今日こういったコンセプトのライヴを決行するまでに15年もかかったのだと思う。でも、ただ並べて演奏するだけではなく、楽曲の存在価値や今この時間を使って演奏することに意味を見出した上での歌唱・演奏だからこそ、客席は有紀の声を温かい気持ちで迎えることができたのだろう。

そして本編は、Raphaelの代表曲といえる『eternal wish〜届かぬ君へ〜』を奏でた後、『lost graduation』からriceの『リルゴマキアート』に続く2曲の流れで幕を閉じた。大人になろうとする少年が幼い自分から卒業していく過程の痛みを綴った楽曲と、大人になった自分が感じる死生観を描いた楽曲のコントラストは、この日のライヴで有紀が伝えたかったメッセージのひとつだったのではないかと感じながらステージを去る有紀を見送った。

『Evergreen』と『夢より素敵な』をアンコールで披露し、明るい曲調で会場の空気をハッピーに染め上げたあと、「今のみんななら、もう話しても大丈夫そうだね」と前置きして、有紀はゆっくりと話し始めた。

「Raphaelは、メンバーが出会って、あいつ(華月)の言葉を借りて言うなら『青の邂逅』から来年で20年を迎えます。そして、華月の17回忌でもあります。2016年4月7日、もう一度Raphaelをやらせてください」

音楽から完全に離れることになったメンバーがいることもあり、考えていた以上にずっと早く、Raphael・YUKIとしてのお役目が果たされる日が来たと有紀は語った。ずっとステージ袖で有紀の「独唱」を見守っていた盟友・YUKITOとHIROをステージに呼び込み、揃いの白い衣装を着た3人は、癒しの天使としてもう一度だけ羽ばたく決意を「自分たちが信じる音楽を、自分たちの愛するRaphaelを、2016年、全身全霊を込めて全力を賭して奏でていきたいと思います」と語った。

この発表を、「独唱」での有紀の歌声を聴いたあとのオーディエンスたちがどう受け止めたか、私には計り知れない。100人いれば100通りの受け止め方があるだろう。でも、これだけは信じてほしい。有紀は、YUKITOとHIROは、けして感傷に浸るためだけにRaphaelとして全国を駆け抜けることを決めたわけじゃない。今の自分たちがRaphaelを奏でる意味を見出し、3年前の「再演」以来止まっていた時を再び動かすことを決めたのだから。過去の遺物ではない、“今を生きるRaphael”を今の私たちの感性で受け止めることができたらどんなに素敵だろうと考えながら、櫻井有紀とYUKIが奏でた「独唱」の終焉を見届けた。

Text:きーぼう(Vicious)
Photo:Kumiko Suzuki

【セットリスト】
01. 煌々
02. コバルト
03. 胸に零
04. 僕と「僕」
05. 症状1. 潔癖症
06. 症状2. 分裂症
07. 症状3. XXX症
08. Hello
09. カサブランカ
10. 秋風の狂詩曲
11. Fake star
12. 花咲く命ある限り
13. Never
14. eternal wish~届かぬ君へ~
15. lost graduation
16. リルゴ・マキアート
<アンコール>
17. Evergreen
18. 夢より素敵な

【Raphael ライブ情報】
KAZUKI 17th memorial「蒼の邂逅」
4月07日(水) Shibuya O-EAST
開場/開演 18:00/19:00
<チケット>
1Fスタンディング:¥6,500

Raphael Live Tour 2016「癒し小屋」
5月23日(月) 横浜・Bay Hall
6月02日(木) 名古屋・DIAMOND HALL
6月12日(日) 札幌・PENNY LANE24
6月21日(火) 大阪・BIG CAT
7月03日(日) 仙台・CLUB JUNK BOX
7月11日(月) 赤坂BLITZ
7月17日(日) 広島・SECOND CRUCH
7月24日(日) 福岡・DRUM LOGOS
<チケット>
1Fスタンディング:¥5,500

11月1日(日)@shibuya duo MUSIC EXCHANGE (okmusic UP's) 11月1日(日)@shibuya duo MUSIC EXCHANGE (okmusic UP's) 11月1日(日)@shibuya duo MUSIC EXCHANGE (okmusic UP's)
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