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「この男たちの運命に手に汗握ってほしい」――月村了衛インタビュー(後編)

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 出版界の最重要人物にフォーカスする『ベストセラーズインタビュー』!
 第76回となる今回は、9月に発売された最新作『影の中の影』(新潮社/刊)が好評の月村了衛さんが登場してくださいました。
 『コルトM1851残月』で第17回大藪春彦賞、『土漠の花』が第68回日本推理作家協会賞と、今最も注目される小説家といっていい月村さんですが、『影の中の影』はそれらを凌ぐ「最高傑作」という声があがるほど大きな支持を集めています。
 アクションあり、冒険あり、そしてサスペンスとヒューマン・ドラマの要素も併せ持つこの作品がどのように作られていったのか、月村さんに語っていただきました。前回、前々回と連載してきたインタビューの最終回です。

■「この男たちの運命に手に汗握ってほしい」
――月村さんご本人についてもお聞きしたいです。小説家になる前は脚本家のお仕事をされていたそうですね。

月村:10年くらい前に廃業していますが、前職は脚本家です。

――小説を書こうと思ったのはその後ですか?

月村:それは最初からで、昔から小説家になりたかったのですが、たまたま運命のいたずらというか、出会いがあったんですよ。私は早稲田大学の文芸学科を出ていまして、文学と並行して演劇や映画の勉強もしていたのですが、それを知っている人から脚本をやってみないかと声をかけられて。私もそれでお金がもらえるなら建築現場でバイトしているよりはいいなと思ってやってみることにしました。「ただし使えなかったらそこまで」と最初から言われていました。それはいいのですが、ほどほどに仕事があったこともあって、小説の方に戻ってくるのに長い年月を要してしまいました。このあたりはいろいろあったので、話し出すといくらスクロールしても終わらないインタビューになってしまいますよ(笑)。

――作家志望だから脚本の仕事に誘われたのでしょうか。

月村:そんなことはないと思います。それに、一度やってみて自分には向いてないなとずっと思っていました。しかし脚本家時代に手がけた作品に関しては今でも誇りを持っていますし、その都度全力でやったという自負はあります
脚本家をやってから小説家になったせいか、脚本の経験が小説の方にも生きているのかとよく聞かれるのですが、これはもう何の関係もないと断言できます。小説と脚本はまったく別のメディアです。完全に別物なのですがあまり理解してもらえないみたいです。

――今後、書いていきたいテーマがありましたら教えていただきたいです。

月村:それはもうたくさんあるのですが、デビューが遅かったものですから、書ききる前に死んでしまうんじゃないかと気が気じゃないですよ。『機龍警察』が完結するまで生きているか自信がないと言ったら「書いてから死ね」となぜか版元ではない新潮社の担当編集に怒られてしまいました。

――月村さんが人生に影響を受けた本がありましたら、3冊ほどご紹介いただけますか?

月村:絞るのが難しいですよね。本当は100冊くらい挙げたいところですけど、あえて3つとするなら、「シャーロック・ホームズシリーズ」と山田風太郎さんの『魔界転生』、あとは、ジャック・ヒギンスの『鷲は舞い降りた』でしょうか。
ホームズは、最初に読んだのが『バスカヴィル家の犬』なんですけど、特別に好きな話があるわけではなくて、シリーズ全体が好きです。
それと『鷲は舞い降りた』については、どこがいい、どこが泣けるという話を現在発売中の「ミステリマガジン 11月号」で語っていますので、興味がある方は読んでみていただきたいですね。ファンの一人語りみたいになってしまっているのですが…。

――最後になりますが、読者の方々にメッセージお願いします。

月村:『影の中の影』はありがたいことにご好評をいただいておりまして、自分としても手応えを感じる作品になりました。作者としては、読んでいただきたいというのはもちろんなのですが、それ以上にこの男たちの運命に手に汗握ってほしい、この事件に関わった人々がどう成長するのか、あるいは成長しないのかということを見届けてほしいという気持ちです。

■取材後記
 登場人物の死に涙を流すほど執筆に没入するという、その作品への熱度にお話を聞きながら鳥肌が立ちました。その熱と、エンターテインメント小説を広く深く網羅する知識の厚さが、一気読みせずにはいられない月村さんの作品群の源泉なのかもしれません。
『影の中の影』と前作『土漠の花』を読んで取材に臨みましたが、これで終わってはもったいない、と文庫になった『機龍警察』を買った帰り道でした。
(取材・記事/山田洋介)


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