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Album Review:Raury『All We Need』 若くして明確なサウンドヴィジョンを持つ新たなスター候補のデビュー作

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Album Review:Raury『All We Need』 若くして明確なサウンドヴィジョンを持つ新たなスター候補のデビュー作

 英BBCの【SOUND OF 2015】において、イヤーズ&イヤーズやウルフ・アリス、スレイヴス、ジェームス・ベイやシャミールらと共にノミネート(受賞者はイヤーズ&イヤーズ)された米ジョージア州出身のロウリーが、この10月に待望のデビュー・アルバム『All We Need』をリリースした。鮮やかなラップのスキルを持ち合わせたヴォーカリストであり、既に明確なサウンドのヴィジョンを持ったアーティストである。

 ソウル・ミュージックやヒップ・ホップをベースに、エレクトロニック・ミュージックやフォーク、ロックまで多様なスタイルをクロスオーヴァーさせるロウリーだが、彼の名を広く知らしめたのは2014年にフリー公開したミックステープ『Indigo Child』と、UKのポスト・ダブステップ・プロデューサーであるサブトラクトのソウルフルなセカンド・アルバム『Wonder Where We Land』への客演であった。ロウリーのクロスオーヴァーな音楽性は、メジャー・デビュー前に既に明らかになっていたということである。

 アルバム『All We Need』は、その蓋を開けた途端、ロウリーの魅力が一気に溢れ出す構造になっている。オープニングを飾るタイトル・チューン「All We Need」は、ドラマティックな展開を期待させてやまないフューチャリスティックなエレクトロのシーケンスから始まり、唐突にシンプルなアコギのストロークが差し込まれる。そして柔らかくソウルフルなハーモニーのフックが溢れ出し、それを追うようにロウリーのラップで締め括られるのだ。自身のトータルな才能を、この冒頭の一曲に押し込んだ手捌きは凄い。

 RZAやビッグ・クリットら、ヒップ・ホップの先鋭性を証明してきたプロデューサーとコラボする一方で、「Her」ではオルタナ・フォーク風のドリーミーなサウンドとコーラスをデザインしつつ、壮大でドラマティックな展開を導き出している。「Love is Not a Four Letter Word」はまるでビーチ・ボーイズの如き幻想的なハーモニーの中からメッセージを届けるナンバーで、日頃から幾つかのパワー・ストーンを持ち歩いているというロウリーのスピリチュアルな一面が垣間見えるようだ。「Crystal Express」などに見られるイマジネーションの飛翔は、彼のそんなライフスタイルから着想を得たものかも知れない。

 アルバムを締め括るのは、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロをフィーチャーした「Friends」。世界中で友達を作りまくる、というテーマの、楽しくピースフルな一曲だ。音楽表現の可能性は無限大、しかしロウリーの人間性はしっかりと伝わるという点で、これまた見事なフィナーレである。デビューした途端にユニヴァーサルな懐の深さを見せつけた彼は、今後更にポップ・ミュージックを面白くしてくれそうだ。(Text:小池宏和)

◎リリース情報
『All We Need』
2015/10/16 RELEASE
輸入盤

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