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杭打ち偽装は旭化成だけなのか「日本の住宅の危機だ」と識者

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「もはやマンション工事の“杭打ち偽装”は、特定の企業や個人だけの悪習では片づけられない」

 こう大手不動産会社の幹部が頭を抱えるほど、横浜市都筑区の「パークシティLaLa横浜」で発覚した傾斜マンション問題は広がりを見せている。

 11月2日、杭打ちデータの流用・偽装の事実を認めていた旭化成建材が、過去10年に杭打ちを請け負った3040件に及ぶ再調査の進捗状況を発表したが、業界関係者が「やっぱり……」とため息をつく新事実が明るみになった。

 旭化成建材が当初から改ざんの主導的人物と見なし、9都県41物件で杭工事に関わったと公表していた「現場代理人A氏」の“罪状”は、ふたを開けてみれば19件。平居正仁・旭化成副社長は、A氏だけでなく複数の担当者がデータを流用していたとして謝罪した。

「一人の問題ではなく、多くの現場代理人がそういうことをしてしまう状況だった」(平居氏)

 同社はデータ流用された物件総数や偽装に関わった担当者の人数を明らかにしていないが、一部報道によれば300件前後で50人以上の現場担当者がデータ偽装に関与していた疑いが強まっている。

 かねてより当サイトでは、建設業界の無責任な「丸投げ構造」を解明しないまま、特定の人物が“スケープゴート”に祭り上げられていることに疑問を呈してきた。事実、多くのマスコミもA氏の所在を突き止め、生の証言を得ようと取材に奔走するあまり、事の本質を見失っていたきらいがある。

 住宅ジャーナリストの山下和之氏がいう。

「マンション業界は、元請けのゼネコンは設計やスケジュールの管理などはしますが、実際の工事のほとんどは2次、3次……と連なる下請け業者に外注するのが前提です。そんな状況で、杭打ちデータの改ざんが一人だけの怠慢で行われていたとは考えにくい。業界全体に蔓延し、チェック体制も形骸化していた可能性があります」

 そうなると、杜撰な杭打ち工事をしていたのが旭化成建材と、その取引先だけだったのかも怪しくなる。

 民間調査会社の東京商工リサーチが10月30日に発表した「くい打ち業者」の動向調査によれば、全国に454社ある業者のうち、従業員10名未満の企業が5割を超え、資本金1000万円未満も3割を占めるなど、主に下請けの中小企業が請け負っていることが判明した。

〈業界特有の多重下請構造が、今回のデータ偽装の根底にある可能性がある〉
〈調査範囲の拡大に伴い、施工の瑕疵が見つかり補修工事や損害賠償請求がなされた場合、小規模の「くい打ち業者」の経営を逼迫する可能性がある〉(東京商工リサーチの分析)

 すでに湾岸部を中心に、「ウチのマンションは大丈夫か?」と杭の再調査を求める声が全国的に広がる中、新たな杭打ち業者の名前が出てこないとも限らない。

 いまのところ「パークシティLaLa横浜」以外、傾いた物件は報告されていないが、杭打ちデータの改ざんが発覚、公表された時点で“曰く付き物件”としてマンションの資産価値が目減りする可能性もあるだけに、マンション住民の心境は複雑だ。

 10月下旬、販売会社を通じて自分のマンションの杭打ち工事が旭化成建材だったと知らされた都内在住の40代男性がいう。

「いま、建設を請け負った大手ゼネコンが情報収集をしているようです。もちろんデータ偽装の疑惑があれば、しっかりと杭の再調査はしてもらわないと困りますが、物件名が漏れてしまうと資産価値が落ちて売るに売れなくなってしまう。いざというときに、どこまで補償してくれるかも分からないので、あまり口外しないようにしています」

 だが、山下氏はこんな厳しい見方をする。

「ここまで話が大きくなってしまった以上、物件名を伏せるのは難しいでしょう。再調査となれば、たくさんの工事担当者や重機も行き来しますしね。そして、補修工事で済んだ場合でも、その物件は当面値段がつかないほどイメージの回復は容易ではありません。

 ただ、この際、旭化成建材が杭打ちをしていないから安全だと決めつけるのではなく、業界全体がこれまでの『始末をつける』必要があります。販売会社や元請けゼネコンも含め、各社一丸、赤字覚悟で杭打ちの施工状況を徹底的に調査し、データの管理体制を強化する対策を取らなければ、本当に日本の住宅は売れなくなってしまいます」

 ただでさえ、人口減少や空き家問題で不動産市場の先行きを危ぶむ声も多い中、一刻も早く国民の信頼を回復させなければ、“マンション崩壊”がより現実味を帯びてくる。


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