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近藤誠医師 がん手術が転移・再発を引き起こす可能性を指摘

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 手術はがんの標準治療のひとつだ。しかしその手術によって、がんの転移が早められている可能性があるという。

 先月、胆管がんで亡くなった川島なお美さん(享年54)は、2014年の1月に手術を行った。そのわずか半年後の7月に再発。それから1年足らずで亡くなってしまった。同じく先月、胃がんで亡くなったアナウンサーの黒木奈々さん(享年32)は、昨年9月に胃の全摘出手術を受け、今年の7月に再発し、やはり手術から1年後に亡くなった。もうひとり今年の有名人でいうと、俳優の今井雅之さん(享年54)は昨年11月に大腸がんの手術を受けて、5月に死去している。

 3人とも手術後いったんは「経過良好」と伝えられた。しかしそれから1年も経たないうちに再発しているのである。がん治療に詳しく、現在はセカンドオピニオン外来で患者相談を続ける近藤誠医師(元慶應大学病院放射線科)は、手術と転移の関係についてこう話す。

「手術すると転移しやすくなることは、昔から医学の世界では指摘されていることです。大まかに2通りの考え方があります。ひとつは、初発巣(初めにがんができた部位)のがん細胞から、転移先のがん細胞の増大を抑える物質が分泌されているという説。だから初発巣のがんを手術で取ってしまうと、転移先のがんの増大スピードが上がり、転移が発見されるのも早まります。

 もうひとつは、手術で切除した初発巣があった部位に再発するケースです。よく手術後の記者会見で『がんは全部取りました』などと発表されますね。ところが数か月後に同じところに再発が見つかる。理由は、転移性のがんでは、血液中にがん細胞が浮遊しているからだと考えられます。

 メスが入って血管が破れると、血液とともにがん細胞が流れ出て、傷ついた組織に着床します。他方で、メスで傷ついた箇所は、白血球などから正常組織の修復を盛んにする物質が分泌され、がんも成長させてしまうのです」

 手術が転移を促進するとする説は新説でもなんでもない。1950年には世界的な医学誌『ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』に、転移促進説を支持するケースレポートが掲載されている。その後もこの説を裏づける論文は時折、医学雑誌に発表されている。しかし医者からこんな話は聞いたことがない。なぜ日本の医者は手術の転移促進説を知らないのかと、近藤医師にたずねると、こう答えた。

「知らなくはないでしょう。メスを入れた外科医は経験的に、手術をすると再発や死期が早まることを知っています。『空気に触れたからがんが暴れた』なんて酒飲み話みたいに話していますよ。医療界にとって転移促進説は世界的にタブー。がん患者が手術を嫌がり、外科医の仕事が減ってしまいますからね」

 今のところ、がん細胞から分泌されるという「がん細胞増大を抑える物質」が何かは明らかではない。メスを入れた同じ箇所に再発しやすくなるという説も、原因が裏づけられたわけではない。とはいえ、手術をするという選択がベストかどうか、一考する必要がありそうだ。

◆近藤誠(こんどう・まこと):1948年生まれ。慶應義塾大学医学部放射線科講師を2014年3月に定年退職。「乳房温存療法」のパイオニアとして知られ、安易な手術、抗がん剤治療を批判。現在「近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来」を運営。著書に『がんより怖いがん治療』、近著に倉田真由美氏との共著『先生、医者代減らすと寿命が延びるって本当ですか?』など。


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