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ニュースはこうして造られる?イスラム教の国で感じる「違和感」の正体

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Photo credit: Nakano Takayuki「シリア図鑑 田舎生活編 〜協力隊で生活していた場所ってこんなところ〜

こんにちは。TRiPORTライターのへむりです。

僕はシリアに青年海外協力隊として2年間の滞在を経て、シリアの治安の良さ、シリア人の親切さを、より多く感じる機会に恵まれました。しかし、日本でのイスラム教のイメージは「怖い」「戦争」「テロ」といったマイナスなものばかりです。

シリアってどんな国?ニュースでは伝えない騒乱前の平和な国のエピソード」で書いたように、騒乱前のシリアを知っている僕としては、シリアについて違和感を感じる報道が多くありました。今のシリアを知らない僕が、「どこが間違いなのか」と指摘するのは恐れ多いので、旅や協力隊での経験を元に、イギリスの大学で学んだ「マスコミ学」と交えて、ニュースの見方についての4つの視点を紹介したいと思います。

①珍しいからニュースになる

シリアで日本では走っていないアンティークの車を写真に収めようとシャッターを切ったとき、「こんな写真を撮るなんて!」と、怒られたことがあります。そこはシリアのイスラム教徒ばかりが住む地域だったので、「軍施設が写っていたのかな? それとも、村の女性の写真がよくなかったのかな?」と不安な気持ちでデジカメを見ると、写っていたのはやはり、ボロボロの車だけ。

僕が不思議に思っていると、「こんな写真を見たら、シリアが途上国だと思われるじゃないか」と、当時26歳にして学習塾の経営者をしているシリア人の友人がため息をつきました。「もっと豊かなのがわかる所を撮ってくれよ」、と。しかし僕は「珍しくないものなんて撮ったってしょうがないじゃないか」と心で呟きました。

「犬が人間に噛みついてもニュースにはならないが、人間が犬に噛みついたらニュースになる」と、マスコミュニケーションの授業で学びました。僕が「日本では見ないものだけ」を写真に撮ったように、日常の中にあるものはニュースにならず、珍しい出来事がニュースとして扱われます。

たとえば、日本で癌でなくなる方は1日あたり1000人近いのですが、それを毎日ニュースにするわけにいきません。それと同じように世界では飢餓で死ぬ人は、どんな自然災害よりも死者数で言えば多いのですが、報道の中で見ることが少ないのは「毎日起こっていること」だからです。

重要だからニュースになるのではなく、滅多にないからニュースになるのです。実は報道されていないことの中に、自分たちにとって、世界にとって重要な出来事があるのかもしれません。

②スポンサーの顔色

Photo credit: Nakano Takayuki「シリア図鑑 田舎生活編 〜協力隊で生活していた場所ってこんなところ〜

メディアとスポンサーとの関係を知ったのは、イギリスの授業で紹介されたマードック氏がきっかけです。日本では有名ではないと思いますが、欧米の名だたる新聞・テレビ・映画を買収したメディア王です。彼が、報道の方向性に口を出せば、彼の買収したメディアが同調します。

欧米の新聞やテレビは支持する政党が明確で、市民もそれをわかっているそうです。日本ではスポンサーとメディアの関係が表に出ることが少なく、またそれを意識する市民は少ないように思います。

僕は以前、「アルジャジーラ=アラブの代表的意見」と思っていましたが、この放送局もカタールの王立メディアであり、その意向に沿ったものでないとならず、特に9.11の後に「自由な報道ができない」と辞めていく記者が何人もいたことを知りました。だからダメというわけではなく、「意図を持って記事は選別されている」と気付こう、ということです。メディア関係の友人によると、表立ってスポンサーから指示がなくとも、メディア側で自主規制する場合もあるそうです。

ニュースは「どれを報道するか」を選ぶ必要がある時点で、客観的ではなく「誰か」の主観で選ばれていることは、ニュースを見る上で考える視点のひとつです。

③情報源は誰か

Photo credit: Nakano Takayuki「当たり前って何か?を考える。国際協力に触れたい一歩目。フィリピンのNGOスタディーツアー

フィリピンのスタディーツアーの中で、日本の大学生から「服は何着持ってますか?」という質問が出ました。インタビューを受ける女性は、小さな小屋のような家で、フィリピンの首都のスラム街に住んでいます。1着の服が、部屋の中のハンガーにかけられています。僕の立場はNGOの企画しているスタディツアーの通訳。その日本語の質問を、僕は英語にして、フィリピン人のNGOスタッフに伝えました。インタビューを受ける女性はフィリピン語しか理解できません。しかし、通訳スタッフは女性に質問をすることなく、「数着だよ」と代わりに答えました。

インタビューの時間が終わり、オフィスに戻った後、スタッフの彼がどうして質問を訳さなかったのか、僕に話してくれました。
「彼女はほとんど服を持っていないんだ。着ているものと、ハンガーにかけれられた服だけだったかもしれない。あの質問で、彼女が『服が少ないし、私は貧しい』と感じて、悲しい気持ちになってほしくなかったし、なにより自信を失って、『自分たちができる』という気持ちがなくならないように、彼女には質問しなかったんだよ。君なら分かってもらえると思うから、ここだけの話だけど…」

こうした「ここだけの話」は、通訳という立場で会話に参加したときによくありました。インタビューや交渉などで、公の場で話した後に、言葉が通じる僕にだけ、こっそりとぶっちゃけ話をしてくれるのです。通訳を通したインタビューや、スポンサーなど利益にかかわる人がいた場合、聞き手が欲しい答えを言っている場面はあります。

可能性の話ですが、「市民の声も捏造できる」ということです。ジャーナリストが聞きたい答え、たとえば政権批判の声が欲しい場合、それがほんの一部だったとしても、それだけを映像にして報道することで「大多数の声」にすることもできます。

普通、新聞でニュースを見る場合、「何があったのか」を見ることが多いと思いますが、一度「誰が言っているか」だけに注目して見てみてください。そして、その情報源は「本当に信用できるのか」と疑ってみてください。「人権」「平和」「自由」「市民派」といった、いかにも反論できない『正義』の言葉が入った団体は、いったい誰が、どんな目的で作ったものなのか、ということを疑うことなく受け入れていませんか? その「政府の発表」は、本当に信用できるものですか?

④見出しと本文は違う内容が書かれている

Photo credit: Nakano Takayuki「シリア図鑑 古代都市アレッポ編 〜シリアの大阪(商業都市)。破壊される前に訪れた美しい世界遺産の町〜

効率を重んじる今の日本では、新聞やネットの記事を「最後まで読むこと」が少なくなり、見出しだけを目で追ったり、記事の最初の方だけを読むことが多いのではないでしょうか。ですが、話は最後まで読まないとわかりません。ときに見出しと本文が違うこともあります。「化学兵器の使用」という見出しの記事を読んでみたら、はっきりしない情報源の発言と、対立する政府が「遺憾(攻撃も辞さない)」と「否定(使っていない)」というものだったことがありました。

見出しだと「化学兵器を使った」という事実のようですが、よく読んでみると「使ったかもしれないけど、わからないね」ということだったのです。ここでも、特に注意していただきたいのは「誰が言っているか」です。

イギリスにいるとき、ある新聞を読んで驚きました。一面の記事が3ページ先まで続いており、ある国の飢餓に関する記事だったのですが、それが一人の記者が書いたもので、現地で訪れたときの様子、その国をめぐる政治的な動き、そこで感じた自分の感想に加えて、その地を支援する団体名と連絡先まで書いていたのです。それに比べると日本の新聞の記事は短いですし、そうした記者が名前を出して意見を伝えたり、寄付などの行動を促すような記事を見ることは稀です。

まとめ

Photo credit: Nakano Takayuki「今だから見て欲しい。破壊される前に訪れたシリアの世界遺産パルミラ

僕は「シリア」をめぐる違和感のある報道を通して、メディアリテラシーの重要性を改めて痛感しました。震災後の報道で、何かを感じた人もいるかと思います。そんなとき、自身が体験し、関心のある出来事に、ちょっと踏み込んでみることを提案させていただきたいと思います。

報道されていないけれど重要なことはないだろうか。
その報道は誰が言っているものだろうか。
その報道で得する人は誰だろうか。
そして、最後まで読んでみる。他のメディアで調べてみる。

ニュースの見方が少し変わり、見えてくる世界も変わってくるのではないでしょうか?

ライター:へむり。
Photo by: Nakano Takayuki「今だから見て欲しい。破壊される前に訪れたシリアの世界遺産パルミラ

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