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第30回 飲食事情(年末年始編2)

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 拘置所において、元日昼食に配られたお弁当の中にあるプラスチック容器の一つ一つには、おせち料理が綺麗に盛り付けられている。
 いくつかをあげると、海老大、鮭塩焼、いくら、紅白蒲鉾、なます、田作り、鳥唐揚げ、ハンバーグ、栗きんとん、卵焼きなどなどである。
 ほとんど一般社会のそれと異なるところがないし、ひょっとしたらそれ以上かもしれない。お屠蘇やお酒がついていないだけである。

 その量からしてもかなりのもので、この弁当の残飯回収は夕食後となっており、昼と夜に分けて食べればいい。おそらく残飯で出す人はいないだろう。
 2日と3日の朝食も若干見劣りはするもののそれでも十分に豪勢である。すまし汁にお餅がついてくる。海老はなくなったが鶏肉の大きいのが入っている。
 食事は豪華だったが、一人寂しくおせち料理を食べるのは辛い。家族のいる東を向いて小声で「あけましておめでとう」と言う。家族も私以上に辛い正月だろうなと思いつつ。

 食べ物にまつわることについてあと二つ三つのことを書いておこう。
 勾留中にここ宮崎では鳥インフルエンザの騒動があった。日本一の鶏肉消費量をほこる宮崎では大事件であったようだ。

 1月13日に所内放送があり、14日の夕食に予定されていた親子丼が牛丼に、15日昼に予定されていた玉子とじがギョロッケに変更されると伝えていた。ラジオ放送ではしきりに鶏肉や卵を食べても影響がないことを伝えていたが、それでも鳥インフルエンザに配慮した結果の変更だろう。

 所内放送を聞いて「ギョロッケ」って何と思った。知らない人も多いだろう。私もまったく知らなかった。
 文字で「ギョロッケ」と書くとそれなりに想像がつくが、所内放送で一度聞いただけではどんな料理だか分からなかった。白魚のすり身にパン粉をまぶしたものを油で揚げたもので、コロッケが肉の揚げ物なら魚の揚げ物だから「ギョ」と変わるのだと分かった。「魚ロッケ」である。おいしかった。

 食事時間がかなり短いことは前にも書いたとおりである。空下げとなったら食べている途中でも残飯として出さなければならない。そうでないと面倒見の受刑者(雑役係、衛生係ともいう)に迷惑だからだ。
 4号室だか5号室だかの人は毎回、面倒見さんから「早く出してよ。いつも遅いんだから。いい加減にしてよ」と怒られていた。

 完食したい気持ちは分かるけどやはり周りの状況も考えなければ。考えられない人だからこそ、このような所にいるのかもしれないが。
 その人は1月18日に執行猶予でいなくなった。朝に「○○番、裁判所」と刑務官に言われ出ていった。11時ころに番台の刑務官にどこからか連絡があるらしく、連絡を受けた刑務官が部屋の片づけをしなければならない面倒見さんに「○○番執行猶予」と言うのが聞こえたから執行猶予と分かる。
 連絡を受けた面倒見さんが思わず「あんなにルール守らない奴が執行猶予ならみんな無罪だよ」と言ったのには笑えた。心の中では「社会に出られてよかったね」と思いつつ。
 面倒見さんは、その後も、一人でぶつぶつ言いながら、居室の片づけをしていたようであった。

 ついでの話だが、この面倒見さん、新しく来た刑務官に、拘置所での手順をいろいろと教えている。
 幾度も同じことを言っているようで、「何度言っても、○○の親父は分からないんだよな。頭が悪すぎだよ」と他の面倒見さんと話しをしていたが、それが面白かった。(つづく)

元記事

第30回 飲食事情(年末年始編2)

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