ポップで美しい旋律を奏でるレオ・セイヤーの声に酔い痴れる晩秋の夕べ。今宵は“七色の声”に心から魅了されて。

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ポップで美しい旋律を奏でるレオ・セイヤーの声に酔い痴れる晩秋の夕べ。今宵は“七色の声”に心から魅了されて。

またもや【ビルボードライブ東京】に奇跡が起こった!

 なぜなら、英国のポップス・シンガーであり、一流のソングライターでもあるレオ・セイヤーが、1981年以来となる34年ぶりのライブを僕たちの前で披露してくれたからだ。そのヴィヴィッドな魅力といったら! まさか、これほど生命感に満ちた、みずみずしいポップスを聴かせてくれるとは思っていなかったから、僕は冒頭からのめり込んでしまった。名刺代わりの1曲「星影のバラード」でスタートした、初日のファースト・ショウ。レオはこの1曲でオーディエンスを惹きつけるオーラを存分に放った。彼は根っからのスターだ。

 1948年生まれで現在67歳のレオ・セイヤーは70年代当時、その甘いフェイスと技巧的な歌唱法でヒット・ソングを連発したアイドルであり、その実態は本格的なシンガー・ソングライターだ。アイルランド人の母とイギリス人の父の間に生まれ、73年に『シルヴァーバード』でデビューした彼。同タイトルのデビュー曲はイギリスのチャートで2位まで上がり、その後も「道化師の孤独」や「渇いたワイングラス」「遥かなる想い」「恋の魔法使い」「星影の2人」(ボビー・ヴィーの曲のリメイク)といったヒットを連発し、10年間に英国で10曲、米国で5曲がトップ・テン入りを果たし、一躍人気のポップス・シンガーに上り詰めた。

 そして今年、オーストラリアで録音されたという6年ぶりの新作『Restless Years』をリリースし、精力的にヨーロッパなどのツアーをこなしてからの来日。まさに脂が乗り切った最高のコンディションで彼のライブを目にすることができたのだ。

 しかし、彼がポッと出のアイドルでないことは、実はあまり知られていないのでは?実は彼自身がデビューする前、ザ・フーのヴォーカリストであるロジャー・ダルトリーのソロ・アルバムに楽曲を提供し、それらに宿る普遍的な魅力が大きく評価されたソングライターでもあり、彼の書いたナンバーはスリー・ドッグ・ナイトやアルバート・ハモンド、ロッド・スチュワートやバリー・マニロウらが取り上げ、彼の曲作りの巧みさは定評になった。

 そんなレオのステージだが、さすがにツアーの最中だけあって、現役感覚が研ぎ澄まされたキレのいい内容になっているのが素晴らしい。決してノスタルジー・サーキットに甘んじることなく、現役のアーティストとして新作をリリースし、真っ向からヒット・チャートに挑み続けている。曲によっては女性かと聴き違えるほど透明なハイ・トーン・ヴォイスや、ロック・テイスト溢れるナンバーで聴かせる力強いシャウトなど、まさに“七色の声”を持つレオ・セイヤー。彼の書いた曲が普遍的な魅力を備えているのと同様に、彼自身の声も往年のころと不変の声量を誇り、ツヤとハリを保ち続けている。これは、まさに奇跡的と言っていいだろう。

 果たして今回の来日公演は、今年リリースした新作のプロモーションを目的としたものだが、しかし、そのソング・リストにはこれまでのヒット曲が充分に散りばめられ、まるでベスト・ヒット曲集を聴いているような錯覚に陥るほど。また、途中で披露した新作からのナンバーも、輪郭のしっかりした旋律が美しく、彼の才能が躍動していることを伝えてくる。さらには、日本のテレビ・ドラマの主題歌に起用された曲や、CMで流れていたナンバーも披露され、ファンにとっては興奮冷めやらぬライブになった。言葉をていねいに紡ぎ出すように発し、聴き手に語りかけるように歌うレオ。そしてメロディがポップに弾ける。ステージの上での人懐こくてサービス精神に溢れた彼のアティテュードも、とても心地好い印象として残った。

 聴いている人たちは、もちろんうっとりしながら、彼の声に身を乗り出し、一挙手一投足に反応している。やはり、70年代からの“筋金入り”のファンが多いのだろう。また、当然のことながら女子率が高いライブだったのも印象的。歳を重ねても輝きを失わず、現役アーティストとして立派なパフォーマンスを披露してくれるレオ・セイヤーのステージは、想像していた以上に新鮮で、プロフェッショナルな意識に貫かれた素晴らしい内容。僕はライブの最中に何度も目頭が熱くなり、終演後は感動と共に深い吐息をついた。

 残るステージは明日(29日)の2回だけ。彼のライブを観ずしてポップスは語れないと言っても過言ではない。抜かりなくチェックすることを、強くオススメする。

◎公演情報
レオ・セイヤー
2015年10月27日(火) & 29日(木)
ビルボードライブ東京
1stステージ 開場17:30 開演19:00
2ndステージ 開場20:45 開演21:30
公演詳細>

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。秋も深まってきたここ数日。遂にフル・ボディの赤ワインが美味しく感じられる季節の到来だ。ときには、上質の牛肉を最高のコンディションに焼き上げたステーキと、「王のワイン」と呼ばれ、北イタリアで栽培されているネッビオーロ種から造られたバローロやバルバレスコをゆっくり味わうのもいい。ワインの強いタンニンが肉の旨みを引き立たせてくれる。ぜひ、お試しあれ。

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