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魂を呼び戻す沖縄の風習「マブイグミ」を鎌田實医師が語る

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 21世紀になっても古くからの信仰や風習が身の回りに残っていることがある。長野県の諏訪中央病院名誉院長・鎌田實医師が、講演で訪れた沖縄県で出会った「マブイグミ」という風習に出会ったときのことをつづる。

 * * *
 9月、沖縄へ講演に行った。沖縄は、長野県が平均寿命日本一になる前、長らく長寿県を誇っていた。なぜ長寿だったのか、そして、なぜ長寿日本一から転落したのかを知ることはとても意味がある。

 もともと沖縄は昆布を中心にしたダシ文化があり、豊富な魚、新鮮な野菜に恵まれた地域である。そこへ欧米の食文化やファストフードなどが一気に押し寄せ、肥満や生活習慣病を招く結果になった。

 しかし、あきらめてはいけない。沖縄にはまだ健康にいい食文化が残っている。塩分の摂取量も低く、県民一人あたり平均10グラムを切っている。長寿日本一の座から転落した原因を改善し、いい面を伸ばしていけば、長寿王国に返り咲く可能性は高い。

「自分の健康や命を大切にすることは、平和につながる。沖縄でこそ健康、命、平和を模索し続けてもらいたい」講演ではそんな話をした。

 その講演を無事に終え、那覇空港までの帰路、突然、車の中でこんなことを言われた。

「この後、マブイグミに行ってきます」

 マブイグミ? 何のことだかわからない。初めて聞く言葉だった。

「マブイ」とは、沖縄の方言で生きている人の魂のことをいう。「グミ」は元に戻すとか、込める、組み込むという意味らしい。「魂込み」と書いてマブイグミと読むという。

 沖縄では、予期せぬ出来事に驚くと、魂が抜け出てしまうと考えられてきた。そういえば、ひどく驚くことを「魂消(たまげ)る」という。沖縄ではそんなとき、「マブイグミ」という儀式をして、魂を呼び戻すのだという。

 たとえば、子どもが驚いたときも、子どもの胸に手を当てて、魂を呼び戻す。チチンプイプイというおまじないと同じようなものか。

 講演のスタッフが、そのマブイグミを行なうというのにはちょっと理由があった。実は、前日、沖縄に着いて空港から講演会場へ向かう車に、ちょっとしたハプニングがあった。車が地下の駐車場への進入路を間違えて、階段を下りてしまったのだ。すぐに気が付いて止まったが、階段から抜け出せなくなった。ついにJAFを呼んで救出してもらう騒ぎになってしまったのだ。

 もちろん、だれもケガはしなかった。ぼくも、あーあという程度で、大して驚いたりすることもなかった。その後、1200人で満員となったホールで講演すると、その出来事すら忘れていたほどだ。しかし、スタッフたちはしっかり覚えていて、ぼくを空港に送った後、事故があった場所でマブイグミの儀式を行なうのだという。

 儀式はいたってシンプル。「マブヤー、マブヤー、ウーテイクウヨー」とみんなで唱える。魂よ、魂よ、私の体を追って来てよという意味らしい。酒や花を供えたり、霊能者であるユタが行なったりすることもあるという。魂を呼び戻すなんていう風習が、今もしっかり残っているなんて、ちょっとおもしろいなと思った。

※週刊ポスト2015年11月6日号


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