仕事の半分は「保護者対応」!? 現役保育士に「理不尽クレーム」の実態を聞いてみた

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仕事の半分は「保護者対応」!? 現役保育士に「理不尽クレーム」の実態を聞いてみた

保育業務に携わる人の9割が、保護者から理不尽なクレームを受けた経験がある――。キャリコネニュースがそんな記事を公開したところ、配信先のmixiニュースに1700件近くのコメントが寄せられた。

読者の中には保育士もおり、2才男児の母親から「遊んでいるとき転ばないようにしてください」と注文をつけられた人も。ケガや汚れを防ぐためというが、それは無理というものだろう。しかし立場上、正面から反論もしにくいと同情する人も少なくない。

「保護者からの理不尽な要求。上司も守ってくれるどころか、叱責。そりゃ、離職者も多くなるわ」

そこでキャリコネニュース編集部では、首都圏の保育園に勤める20代後半の保育士Aさんを取材し、保育士の業務や保護者対応の実態についてさらに詳しく話を聞いた。
「もはや何がクレームなのか分からなくなっている」

Aさんは今年6年目、園の中ではすでにベテラン扱いだという。それだけ若い人たちの出入りが激しい職場ということだろう。記事にあるクレームは「席替えで〇〇君と同じグループにして」「保育園で汚した服は洗濯して返して」といったものも含め、実際にあるどころか日常茶飯事だという。

「新人の頃はショックを受けたこともありましたが、今はこれくらいではクレームだと思いません。もはや何がクレームなのか分からなくなっているのかも」

トイレトレーニングを家でも始めるように協力を頼んだところ、「汚れるからヤダ」と返されたことも。印象に残っているのが、子どもたちの劇にまつわるエピソードだ。

子どもたちの話し合いで「どろぼう」がテーマの劇をすることに決まったが、女の子の保護者から「なんでお姫様が出ないんですか!」「女の子なのにどろぼうをやらせるんですか!」とクレームが入ったという。劇の趣旨を説明して事なきを得たというが……。

B君という子がC君をからかっていたところ、それを見ていたC君の保護者が激怒。B君に罵声を浴びせるとともに引っ叩いたことも。これをB君の保護者に伝えたところ、こちらも激怒。園ではそれぞれの保護者と個別面談を行って詳細を聞くなど、対応に追われたとのことだ。
プリントの作成は就業時間外「でも残業代は支払われない」

まったく手が掛かる親たちという感じだが、Aさんによると「保護者対応」は保育士の重要業務のひとつであり、子ども相手の「保育業務」との比重が半々という人もいるそうだ。毎日のミーティングでも、親からのクレームは必ず全体で共有するという。

そんな負担の重い保育士の仕事だが、勤務時間や給与はそれに見合っているのか。Aさんの職場では早番や遅番など8種類のシフトがあり、実労働時間は8時間となっているが、それはあくまで形式上の話。

「毎日2~3時間の残業は当たり前。3時間で帰れたらいい方かもしれません」

保護者に配布するプリントやクラスの飾り物の作成などは、就業時間後に行うことが多い。行事の負担もあり、運動会の職員の出し物の練習を19時から行う場合、早番で16時に上がる日でもそのまま業務を続け、練習に参加するという。

21時に練習が終わると5時間の残業になるが、その分の残業時間はカウントされないという。給与が払われるのは8時間分だけ。「後の時間はいないことになっています」というAさんは、これは他の園も同様ではないかと話す。
給与が低く、未婚の保育士は実家暮らし「これでは人が集まらない」

この仕事量に対し、1年目の手取りは12~13万円。6年目の今も16万円ほどだ。Aさんは「予想以上に低かった」と驚いたという。このため未婚の保育士のほとんどが実家暮らしをしており、Aさんは「せめて残業代が欲しい」と語った。

厚労省は保育士の人材不足を指摘しているが、Aさんは「まずは給与を上げることが必要ではないでしょうか」と訴える。また保護者に対しては、「園と協力して子どもの成長を見守っていくという態勢を取っていただけたら」と思いを語った。

保護者から見れば、お金を払って預けているのだから諸々のサービスは当たり前と思いがちだが、その先では自分と同じ「人間」が働いていることを忘れないでもらいたいものだ。

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