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感染源は犬や猫 ペットから除菌後も注意必要なハイルマニイ

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 ヘリコバクター・ピロリは、胃の粘膜に感染し、胃潰瘍や胃がんを引き起こす。ピロリ菌以外に人間の消化管に感染する細菌として、1987年ドイツ人のハイルマン博士により発見された複数の菌の総称がハイルマニイだ。

 形はピロリ菌と同じ螺旋(らせん)形だが、大きさはピロリ菌の数倍もある。ピロリは片側に鞭毛(べんもう)があるが、ハイルマニイは両側にあり、新体操のリボンのように、うねりながらすごいスピードで移動するのが特徴だ。北里大学薬学部の中村正彦准教授に話を聞いた。

「ハイルマニイは、昔から獣医さんの間ではよく知られていました。豚などの家畜のほか、犬や猫などのペットでもよく感染しています。私たちのグループでは、北海道から九州までの25医療機関で、胃炎や胃潰瘍、胃のリンパ腫と診断された患者のうち、ピロリ菌に感染していなかった27人の胃の組織を調べたところ、約60%にあたる16人がハイルマニイに感染していることがわかりました。

 ピロリ菌が霊長類だけに感染するのに対し、ハイルマニイは人獣共通感染症で、近年は犬や猫などペットからの感染が増えていると推察されます」

 ピロリ菌は、便や尿中の抗体などで診断が可能だ。しかし、ハイルマニイは純粋培養の方法が確立しておらず、菌に特異的な遺伝子を増幅させて菌の有無をみるPCR法しか確定診断方法がない。PCR法実施施設が限られているため、現在は簡便で確実な診断方法の研究が進められている。

 ピロリ菌が胃の粘膜層にいるのに対してハイルマニイは粘膜の他に胃腺腔深部(いせんこうしんぶ)や胃酸が出る壁細胞(へきさいぼう)の中でも生息する。ハイルマニイによるペットの胃炎はあまり重症化しないが、感染力は強く、人間ではリンパ球の集積による濾胞性(ろほうせい)胃炎やマルトリンパ腫などの発症に関与しているとされる。

 治療に関しては、ピロリの除菌と同じ薬と、投与方法で除菌可能だ。

「今問題になっているのが、ピロリ菌の除菌による影響です。日本人のピロリ菌感染は20代が20%、60代が50%ですが、ピロリ菌除菌が保険承認されたために除菌が進み、陰性の方が増えています。実は胃粘膜にピロリ菌がいると、ハイルマニイは競合せず感染しません。しかし、ピロリが除菌されると、ハイルマニイの感染が起こる危険性は高くなります」(中村准教授)

 感染を防ぐためには、ペットに口移しで餌を与えない、飼い主の口をペットがなめたら、すぐにキレイにふき取るなど感染源との接触に気を付けなければいけない。感染しているペットが身近にいると、除菌してもペットから再び感染することもある。一度感染して除菌後、再度同じ菌に感染すると、リンパ球のメモリー機能が働き、症状が早く起こりやすい。

 ペットの除菌は、人間と同じ薬が使えないので、乳酸菌製剤などを利用した感染予防法の開発が待たれる。

■取材・構成/岩城レイ子

※週刊ポスト2015年10月30日号


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