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老衰死が増加 胃ろう等延命治療を選択しないスタイル広がる

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 近年、「老衰」で死ぬ人は増加している。1938年の9万8451人をピークに老衰による死者の数は減少を続けていたが、2000年に2万1213人で底を打った後、大幅な増加に転じ、昨年は戦後最高の7万5340人を記録した(厚労省『人口動態調査』)。この10数年でおよそ3.5倍に増加したことになる。

 その背景には自ら進んで「老衰死」を求める、という考え方が浸透しはじめている面もある。というのも、点滴や胃ろう(栄養などの摂取のために腹部に手術で穴をあけ、胃に直接チューブを入れて流動食を流し込む方法)などの延命治療を行なうと「老衰死」に至らないケースが少なくないのだ。
 
「栄養の摂取は可能になる反面、そもそも身体が受けつけにくくなっているので体内に流し込んだ流動食などが逆流し、肺水腫などを引き起こして亡くなる人がいらっしゃいます」(世田谷区の特別養護老人ホーム「芦花ホーム」の石飛幸三医師)
 
 延命治療を選択しないスタイルが広がっていることが、老衰死増加の背景にあると考えられるのだ。
 
 今年2月、千葉県が行なった『終末期医療のあり方について』という県民アンケートでは、延命治療について、9割以上が「望まない」「どちらかというと望まない」と回答している。

 では老衰死するためには、自分の中で「延命治療はいらない」と決めておくだけでいいのかといえば、そんなことはない。仮にがんなどの大病を患わなかったとしても、延命治療は本人ではなく家族の希望で行なうことがほとんどだからだ。子供は、親に少しでも長生きしてほしいものである。

 石飛医師も入居者の家族から、「老衰死が自然の摂理であると頭では理解できるけど、感情として受け入れられない。病院で胃ろうをつけてでも、もう少し生き続けてほしい」と懇願されることもあるという。この場合は、延命治療を選択することになる。

 また、家族間の意見が食い違うこともある。

 91歳のAさんは脳梗塞で倒れた後、「入院したくない」という本人の希望もあって老人ホームで暮らしていた。食べられなくなった食事も介護職員の援助で少しずつ戻っていたが、誤嚥(食べ物などが誤って喉頭と気管に入ってしまうこと)をきっかけに状態が悪化した。

 Aさんにずっと付き添っていた長女らは「最後までこの施設で過ごさせてあげたい」と望んだが、仕事の都合で遠方に住む長男が、病状の悪化を受けて実家に戻ると状況が一変した。それまで一切、姿を見せなかった長男が「何もせずに死なせられない」と主張し、Aさんを病院に入院させて延命治療をさせたのだ。石飛医師が語る。

「その後、入院先でAさんは亡くなりました。親の死という特別な場面では、家族の間でも考えが食い違うのが現実です。本当は大往生のはずなのに、家族は“何もしないでそのまま逝かせるのは我慢できない”と思いがちです」

 身内の死を受けとめる家族が複雑な思いを抱える一方で、高齢者は「あぁ、やっと死ねる」と考える人が少なくないという。

「人生、やることはやった」という充足感から自ら老衰死を求めるのだ。

※週刊ポスト2015年10月30日号


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