「うなぎ~ぱいぱいぱーい♪」が耳から離れない!年間63万人が訪れる、浜松銘菓「うなぎパイ」の工場見学

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結論から言いますとね。うなぎパイは手作りです。

唐突な出だしで失礼しましたが、お急ぎの読者(……が『メシ通』を見ているかという話はさておき)に向けて、今回は結論を最初に持ってまいりました。それほどお急ぎでない方は、お茶でもすすりながら続きをご覧ください。
いまや全国トップの認知度を誇る「うなぎパイ」は、昭和36年から春華堂が製造している静岡浜松市の代表的なお土産です。「夜のお菓子」という有名すぎるキャッチフレーズとともに、とある調査では全国の認知度96%を誇るお菓子です。その認知度たるや、「鳩サブレー」先輩と肩を並べるといってもいいぐらい。自分で買ったことがない人も、1度はお土産でもらって食べたことがあるでしょう。

実は、うなぎパイはその製造工場も全国屈指の人気スポットなんです。

2005年の開業から今年で10周年になる「うなぎパイファクトリー」は、工場見学の人気ランキングでも断トツのトップ! 平日で800~1,000人、週末や連休ともなると1日2,000~3,000人、年間で約63万人も訪れるという浜松の一大観光名所として定着しているんです。ですってよ。

……なんで?

失礼ながら、県民歴5年(頻繁に静岡推ししておきながら微妙に浅くてすみません)で、うなぎパイファクトリーに行ったことのない筆者は、「作ってるのを見るだけじゃん」と思っていました。しかし、行った人は口を揃えてその満足度の高さを褒め称えます。気になります。気になるので行ってみました。

地味な工業団地の中に突如現れるうなぎパイカラー

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東名高速浜松西ICから車で約15分。浜松の街中から少し離れた工業団地の中に「うなぎパイファクトリー」があります。「○○エンジニアリング」「○○テック」「○○精機」など、周りはお堅い技術・工業系の無機質な建物が並ぶエリアです。したがって、目的地はすぐにわかります。

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その中でひときわ目立つマムシドリンクカラー

ちなみに当初は「夜のお菓子」という意味に精力増強のニュアンスはなかったようですが、いかがわしい解釈をした人が多かったのでパッケージをマムシドリンクカラーにしたところ、爆発的にヒットしたそう(実際にうなぎのパウダーとニンニクが使われているので、あながち間違いでもない)。

この日は平日にもかかわらず、家族連れやカップルが9時半の開館を待っていました。

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巨大うなぎパイを積んだトラックはイベント開催時に活躍するPRカー。来館者のほぼ100%が写真を撮る撮影スポット

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イベントにも出動する「うなくん号」。うなぎパイファクトリーにある「うなくん号」では夏場は「うなぎパイジェラート」や「うなくんアイスもなか」を販売中。土日は運が良ければ「うなくん」にも会える

ふらっと見学できるが予約をすればガイド付きも

明るく綺麗なエントランスに入ったらまず正面の受付へ。館内には甘くて香ばしいあの匂いが漂っています。

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申込書に必要事項を記入。予約不要なので突然見学したくなっても安心です。記入していたら早速気になるものを見つけました。

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唐突にオートバイが登場する小冊子。

戦後にオートバイ産業が立ち上がった浜松市には、国内の主要二輪メーカー4社(カワサキ、ホンダ、スズキ、ヤマハ)のうち、ホンダ、スズキ、ヤマハの3社のルーツや本社があり、「バイクのふるさと」といわれています。

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それにしても唐突に登場する

記入した申込書を受付に出すと、うなくんが印刷されたミニうなぎパイ(3個入り)がもらえます。 もちろん工場見学の限定品!

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ちなみに見学方法は3種類あり、予約不要で自分のペースで回れる「自由見学」のほかに、ガイド付きツアー(所要時間40分)が2種類あります。
●ファクトリーツアー

ガイドが製造工程を説明しながら案内してくれるツアー(定員50名、要予約)

●スマイルツアー

探偵に扮したガイドが謎を解き明かしながら案内する家族向けツアー(毎週土曜開催、要予約)

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平日はツアーの団体客がひっきりなしで、受付のお姉さんも忙しそうであった

味を左右する重要な工程は手づくり!

今回は取材ということで、コンシェルジュのお姉さんに簡易ガイドツアーをお願いしました。よろしくお願いします!

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まずは焼くまでの生地の作り方をパネルで確認します。
ざっくりまとめると、

①バターや小麦粉、うなぎの粉に水を加えた生地を練る
②生地を手で伸ばして折り、何層にも重ねる
③冷蔵庫で24時間寝かせる
④砂糖を加えながら伸ばして折る

という流れ。
※ちゃんとうなぎパウダーが入ってるんですよ!

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とにかく伸ばして折る、折って伸ばす。いったい何回繰り返すんだ

最終的には9千層まで生地を重ねるそうです。9・千・層!!
ちなみに市販の冷凍パイシートだと100~150層ぐらい。

実はこの「仕込み」と「仕上げ」と呼ばれる工程は、うなぎパイの味や食感に関わる重要な工程で、すべて手作業。ベテランのうなぎパイ職人が、その日の気温や湿度によってこね方を変えて生地を作っています。6kgもある生地に体重をかけてこねるので、めん棒は持ち手の部分がすり減るほど使い込んむのだとか。そりゃ9千層も作るんだもの!

特に砂糖を入れてこねる「仕上げ」は、職人の中でも熟練した者のみが担当するそうで、「ネ申」と呼ばれるカリスマ職人も存在するそうです。
――うなぎパイ界は完全に職人の世界!

是非ともその職人技を見てみたいところですが、残念ながら工場見学の中でここだけはイラスト。なぜならこの工程こそが一番の企業秘密だから! うなぎパイの美味しさに関わるノウハウが凝縮されている部分だからこそ、見せるわけにはいかないというジレンマなのです。
ちなみに、一見全部同じに見えるうなぎパイを並べてみると、微妙に異なるのがわかります。この中では一番下が最も美しいうなぎパイ

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上と真ん中は小さなス(空洞)が入っていて、上下の幅が微妙に不均一。一方パーフェクトうなぎパイ(下)は生地の層がびっしり詰まっていて幅も揃っている

職人のクセや熟練度によって、生地のこね方や砂糖の混ぜ方に微妙な差が出るようで、会社の製品基準としては認められるレベルでも、職人によってはダメ出しがあるそうです。厳しい……厳し過ぎる!

製造ラインの見学は焼き窯から

そして切り分けられた生地はベルトコンベアーにのせられて焼き釜へ。ここからガラス窓越しに見学できます。いかにも工場といった機械的な絵が見られるので、メカ好きにはたまらない萌えポイント。

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焼く前は指の細さ程度だったうなぎパイが、ものの数分で見覚えのあるサイズに

そして爆速のハケでタレが塗られていきます。

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ガーリックが含まれるタレのレシピは、一部の職人しか知らされていないトップシークレット

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焼き上がったうなぎパイは急速に冷やされたあと、人の目でひとつひとつ検品。時折、物差しをあてて長さや太さをチェックしています。結構なスピードにのって3列で流れてくるうなぎパイを瞬時に見極めるのは、かなり集中力のいる作業です。
しかも、すぐ横で不特定多数の見学者に見られながら、時にはカメラのフラッシュをたかれたり、真横で変顔されたりしても動じない……この業務は強いメンタルも備え持つ人でなければ務まりません。

圧巻の包装・箱詰めライン

2階の窓からは包装・箱詰めラインを見学できます。どちらかといえば包装・梱包ラインの方が大規模で仰々しい。

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真上からフロア全体が見渡せる。好きな人ならたぶん何時間でも見ていられる景色

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製造ラインは全部で6台。この日は「うなぎパイ(レギュラー)」が4ラインで「うなぎパイV.S.O.P」が2ライン。1日で20万本、土日も稼働していて年間で8千万本生産されています。全然ピンとこない数ですが、年間のうなぎパイをつなげると地球の直径とほぼ同じ長さだとか。

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丸みを帯びた低い椅子なので、小さな子供も安全に見学できる

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個包装されたうなぎパイは、ここでも人の目でチェック。商品の間隔も調整するなど、とにかく流れてくるうなぎパイをひたすら見続けるという作業。これで寝ちゃいけないなんて到底無理な話

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異物混入などはX線検査でチェック

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黄金色に輝くV.S.O.Pのライン。レギュラーより配置されたスタッフの数が多く、さすが最高級パイといったVIPな扱い

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衛生管理とスピードが求められる部分は機械、チェックは主に人の目と、機械による効率化と人による細やかな配慮が上手に融合していて、とても効率的で安全な生産体制が整えられています。これぞ、手作業なのに大量生産が実現できる肝!

うなぎパイの歴代CMがとても楽しい

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企業秘密である生地作りのシーンはシアターの映像で確認できます。うなくんがうなぎパイの成り立ちを説明中。何度も言うけど手作業!

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その後に続くうなぎの寝床のような通路では、うなぎパイにまつわるクイズや、歴代CMが展示上映中。

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なぜか外国人の子供が出てくるのに時代を感じさせられる

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パイのパイのパイ!パイのパイのパイ!
他にもグッとくる映像がてんこもりです。ちなみに最新版のCMはこちら。

このテーマソング「うなぎのじゅもん」は10年前からCMで流れている歌です。そして、次がうなぎパイ生誕50周年を記念して作られた“体操バージョン”

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シュールな振り付けに気をとられて初見では歌詞が頭に入ってこないかもしれませんが、よく聞くとめっちゃいいこと言ってるんですよ。そして甘いイイ声。

「 まってるだけじゃ なにもおきない
 とおいみちでも でかけてみよう
 むずかしそうでも やってみようよ
 つまずいたって あきらめないで
(中略)うなぎ~ぱいぱいぱ~い 」

実はこのうなぎパイ公式テーマソングを作詞・作曲したのはシンガーソングライターの小椋佳さん。自身も歌手として活躍するほか、「愛燦燦(美空ひばり)」や「俺たちの旅(中村雅俊)」など、アーティストへの作品提供でも知られる超大御所です。

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© 株式会社ゴッド・フィールド・エンタープライズ
小椋佳さんはかつて旧第一勧銀(現みずほ銀行)の浜松支店長を務めていたことがあり(元銀行マン!)、春華堂さんと取引があった縁で10年前に作られたとのこと。
さらに、この「うなぎのじゅもん」は2代目のCMソングで、1代目は正式なオファーのもとに作られたものでしたが、2代目はある日ギターをもってふらっと訪れた小椋佳さんが「これどう?」ってノリで披露してくれた曲だったんだとか。
ノリの力、ゴイスー!!

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過去のCMでご本人登場

つい無意識に口ずさんでしまう「うなぎ~ぱいぱいぱーい♪」
すっかり静岡県民の脳内に刷り込まれています(ですよね?)

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日曜朝のキッズのゴールデンタイム。『手裏剣戦隊ニンニンジャー』を毎週録画している筆者宅では、録画一覧のサムネイル画像は全部コレ(必ず直前に放映される)

ここでしか食べられない、オシャレうなぎパイスイーツ

歩き疲れたら2階のカフェスペースへ。

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今年7月にオープンしたばかりの広くてオシャレなカフェです。

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でも、うなぎパイ!
開業10周年を記念して、今年3月表参道に40日の期間限定でオープンしていた「UNAGI PIE CAFE TOKYO at BAKERYCAFE426」は、期間中に約5万人が来店する盛況ぶりでした。そこで7月、うなぎパイファクトリー内のカフェに表参道で人気を博したオリジナルメニューを逆輸入!

ここではうなぎパイを使ったスイーツはもちろん、

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ご飯ものまで、うなぎパイを使ったオリジナルメニューが楽しめます。
せっかくのオシャレ空間なので、一番オシャレなスイーツにしました。

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「4種のうなぎパイ&抹茶ショコラ」(税抜1,834円)
リッチでスタイリッシュなうなぎパイが出てきました。白いドームはホワイトチョコ。その中にうなぎパイ(ミニ)とフルーツ、シャーベット状のクリームチーズが入っています。

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安心してください! はいってますよ(うなぎパイミニ)

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これにアツアツの西尾抹茶入りのホットチョコソースをかけて、

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どろ~り崩壊したドームと一緒に中身をいただきます。
甘くて温かいチョコソースに、冷たくてさっぱりしたクリームチーズ。
サクサクしたうなぎパイに、とろりと溶けたチョコレートソース。
ーーこの両極端の対比がお互いを引き立てあっていて、この上ない幸せを感じられます。オシャレおいしい!!

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一緒についてくる「うなぎパイ(レギュラー)」とブランデー入りの「うなぎパイV.S.O.P.」「ナッツとはちみつ入り」もチョコソースでフォンデュ。それぞれ味の変化が楽しめます。

お菓子だけではないファクトリー限定品

工場見学で忘れてはならないのが売店。直営店でしか手に入らない限定品に出合えるのも工場見学の醍醐味です。

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うなぎパイ各種、うなぎパイグッズのほかに春華堂のお菓子も揃う。試食ができるものも

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朝のお菓子(すっぽんの郷)と昼のお菓子(しらすパイ)がセットになって一日の時間すべてをカバーする「お菓子のフルタイム」。あまり知られてないが、朝のお菓子はこのセットでしか買えない限定品!
徳用うなぎパイも魅力的でしたが、せっかくなので、ここはファクトリー限定品を買って帰りました(浮かれていた)。

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4歳児かぶりつき(とても目と心にやさしい色使い)

日本一オシャレなうなぎパイスイーツも楽しめる「うなぎパイファクトリー」。
最後にしつこいですがもう1度。
1日20万本も作られているうなぎパイですが、
実は、手づくりです。
(職人さんの愛とこだわりと、うなぎパウダー入り)
 

施設情報

うなぎパイファクトリー
住所:静岡浜松市西区大久保町748-51(浜松技術工業団地内)
開館時間:9:30~17:30(7~8月は18:00まで)
定休日:不定休(メンテナンスのため臨時休業あり)
入場料:無料(カフェ内の飲食は有料)
問合せ:053-482-1765(予約受付時間9:00~17:00)
公式サイト:http://www.unagipai-factory.jp/

 書いた人:山口紗佳

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1982年愛知県出身、静岡県在住。東京の出版社・編プロを経て育児の傍らビール代を稼ぐ編集ライター。家族旅行にブルワリー巡りを絡めたがるビアラバ―。ビールと赤いものが超好き。日本地ビール協会認定ビアテイスター/日本ビアジャーナリスト協会所属ビアジャーナリスト

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