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亀和田武氏 「そもそも」を使う人は中身がないインチキ野郎

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 近年、嫌~な日本語がやたらと使われている。コラムニストの亀和田武氏は、そのひとつとして「そもそも」を挙げる。いったいなぜなのか。

 * * *
 最近「そもそも」という言葉を、よく耳にしませんか。これまでは「そもそも」と頭にアクセントが付いていたのだが、近ごろ使われる「そもそも」はフラットに発音される。いわゆる平板語だ。

 この二十年あまり、多くの言葉が日常会話で平板化し、私も少しのことでは驚かなくなった。しかしアクセントを欠いた「そもそも」を初めて聞いたときは、一瞬ギョッとなった。

「そもそも日本の社会って、そういうふうに出来てるわけじゃないですか」

 いきなり「そもそも」って早口で言われても、こちらは困惑するばかりだ。そう、いま流行中の「そもそも」は、かつて町内の御隠居が「そもそも茶の湯というものはだな」と、物事の成り立ちを熊サンにじっくり説いて聞かせた類のものでなく、ささっと何の意味も込めず、会話の冒頭に発せられる。

 私の経験では、当初、平板語は固有名詞の領域で発生した。たとえばエリック・クラプトンという名ギタリストはそれまで「クラプトン」(“ラ”にアクセント)と呼ばれていたが、あるときから「クラプトン」と平板に発音されるようになった。

 発音がフラットになると、固有名詞の意味自体もニュートラル化され、本来の意味や色合いまで変化する。私見では、クラプトン(“ラ”にアクセント)と尊敬の念を込めて語られていた人名を、フラットかつ無表情に発することで、(別にクラプトンといわれても、有難がったりしてない俺様)をアピールしているようにみえる。

 アクセントを取っ払うという簡単な言語パフォーマンスで、いきなり相手より優位なマウントポジションを獲得する。そうした心理が、平板語の流行につながったと思う。

 その行き着いた先が、現在の「そもそも」現象ではないか。大体が「そもそも」という言葉自体、例にあげた長屋の隠居や大家など物識りが、無学な与太郎や熊サンに講釈を垂れる、まさに上から目線の偉そうな言葉である。

 それをキャリアも浅いサラリーマンや若手芸人が、悠長に「そもそも(“そ”にアクセント)、流行のパターンはですね」と偉そうに前フリしたら「誰が決めたんや!」と突っこまれるところだ。

 相手より優位に立ちたい。しかしマジで議論すると、ボロが出るかもしれない。ということで、無意識に多くの日本人が、会話の冒頭に早口で「そもそも」とフラットに発音しだしたのだ。

 自分の言語スキル、ひいては思考能力に自信を持てないものが、会話の場において、苦労しないで勝つために案出されたのが「そもそも」だ。

 物事の由来を説明する際、冒頭に置かれる「そもそも」は、いまでは逆に説明をシャットアウトする言葉として使われる。「そもそも、あの人って、もう終わってるじゃないですか」という具合に。俺が「そもそも」って言ったんだから、オマエら余計なこと訊くなよ、というわけだ。

「そもそも」を口にする人間には、ご用心。中身も自信もない癖に、自分を実際よりも偉そうに見せたいというインチキ野郎の証拠だから。

※SAPIO2015年11月号


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