今週の永田町(2015.10.13~21)

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【1億総活躍国民会議、今月にも設置】

先週15日、政府は、安倍総理が新たな看板政策として打ち出した「1億総活躍社会」の実現に向けた具体策づくりに着手するため、1億総活躍国民会議の事務局機能を担う実動部隊「1億総活躍推進室」を内閣官房に設置した。

司令塔として関係省庁間の総合調整などを行う加藤勝信・1億総活躍担当大臣を機動的に補佐するため、推進室長には杉田官房副長官(事務)、室長代理には古谷官房副長官補を充てた。専従の実務責任者となる室長代理補には、少子化・高齢化対策や雇用などを重視して、厚生労働省の木下前官房審議官を任命した。専従職員は、内閣府・厚生労働省・文部科学省・経済産業省から地方創生・規制改革・少子化対策などの担当を経験した職員約20名が集められた。

政府は、今月29日にも関係閣僚と有識者の20名程度で構成する国民会議を近く立ち上げ、初会合を開催する方向で調整している。経済や労働、障害者福祉などの専門家らが国民会議の有識者メンバーとなる見通しで、議論の重複を避けるため、榊原定征・日本経団連会長や三村明夫・日本商工会議所会頭など政府内の有識者会議メンバーも起用する方針だ。

 

今後、国民会議で、安倍総理が掲げた(1)名目GDP(国内総生産)600兆円、(2)希望出生率1.8、(3)介護離職ゼロの「新3本の矢」にもとづいて議論を重ねる。緊急対策(第一弾)を11月中にとりまとめ、今年度補正予算案や来年度予算案に盛り込む。緊急対策では、経済成長や少子化・高齢化対策、高齢者・障害者を含めた雇用対策などが主要課題となる見通しで、実効性のある政策を打ち出すことができるかがポイントとなる。その後、総合的対策と2020年までの具体的工程表からなる政策パッケージ「日本1億総活躍プラン」を来年前半までに策定する方針だ。

こうした政府の国民会議と並行し、自民党も推進本部を月内に設置し、子育て支援策や介護休業制度の充実などの緊急対策をとりまとめて政府に提言する。1億総活躍社会関連施策を来年夏の参議院選挙公約の柱とすることも念頭にあるようだ。推進本部は、縦割りの弊害を減らし、効率的に政策づくりを進めるため、党内の関係部会を束ねる総裁直属の機関となる見通しだ。近く党総務会で正式決定する。

 

加藤大臣らが司令塔となって、具体化に向けた工程表のとりまとめや省庁間の総合調整、他の重要政策を担う担当大臣はじめ関連部署との緊密連携が期待されている。ただ、経済再生や地方創生、雇用・労働、社会保障など1億総活躍社会の実現に係る政策課題が広範囲に渡り、他の所管とも重なる部分も多い。このことから、政府内でどう役割分担していくかも焦点となる。

 加藤大臣は19日、各省庁にまたがる関連施策を集約するため、関係10府省庁の局長級幹部職員が参加する連絡会議初会合を開催した。加藤大臣は縦割りを排して連携・協力を呼びかけたが、各省庁は看板政策に絡めれば予算要求がしやすくなるだけに、施策の売り込みに動きだしている。(1)強い経済関連では、雇用改善と賃金アップ、企業に対する働き方改革<経済産業省>、国土強靱化<国土交通省>、(2)子育て支援関連では、出産・育児休業の取得率向上や、1人親・多子世帯の支援<厚生労働省>、3世代による近居・同居の促進<国土交通省>、フリースクールの公的支援<文部科学省>、(3)社会保障関連では、介護施設の整備と介護人材の育成、介護休業の取得率向上、意欲ある高齢者への就労機会の提供<厚生労働省>などが浮上している。

特に、関連施策を多く抱える厚生労働省や文部科学省は、大臣を本部長とする推進本部を立ち上げた。厚生労働省は、1億総活躍社会実現本部の下に介護離職ゼロ実現チームなど分野別チームを置き、検討作業を加速させる。首都圏で不足する特別養護老人ホームなど介護施設を増やし、介護職員の需要を喚起するため、社会福祉目的で国有地を貸し出す際に賃料が最大で半額になる国有財産特別措置法の規定を一定期間適用、介護施設を運営する社会福祉法人に定期借地権(原則50年)で国や地方の補助金を組み合わせて民間相場の4分の1程度の賃料にて貸し出す案などが浮上しているようだ。

 

このほか、経済の好循環を実現し、新3本の矢の1矢目「強い経済」で掲げた名目GDP(国内総生産)600兆円を達成するため、安倍総理は、16日の経済財政諮問会議で「民需主導の好循環を確立する必要がある。来春の賃上げ、民間投資の拡大に向け議論を深めてほしい」と指示した。

今後、経済財政諮問会議などで議論を深めていく方針だ。また、同日、政府と経済界が協議する「官民対話」の初会合が開催され、安倍総理はじめ関係閣僚、経済3団体や金融業界などのトップが出席した。来春まで月1回程度の会合を開催していくという。安倍総理は、経済界の代表者らに「投資の伸びは十分ではない。いまこそ企業が設備、技術、人材に対し、積極果敢に投資すべき時だ」と呼びかけたうえで、「産業界には投資拡大の具体的な見通しを示していただきたい」と要請した。大企業などが過去最高水準の利益を上げているものの設備投資の伸びが不十分とみて、内需の柱である設備投資・研究開発・人材育成など生産性を高める投資拡大を企業側に促した。

経済界側も「企業が積極果敢にリスクを取って投資するよう呼び掛けを強化する」(日本経団連の榊原定征会長)と応じるなど、前向きな発言が相次いだ。そして、投資拡大に向けた環境整備として、投資の障害となっている規制の改革のほか、法人実効税率の引き下げや投資減税などの税制措置などを求めた。政府側の要請で企業が国内投資をどこまで拡大させるかは不透明だが、政府は、投資拡大が進まない原因を突き詰め、消費・設備投資の喚起策を着実に実行していくことで成果をあげていきたいとしている。

 

 

【政府、TPP説明会開催と対策づくりに着手】

 政府は、1億総活躍社会の実現に向けた緊急対策具体策や、日米など交渉参加12カ国による環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けた国内対策などを柱とする今年度補正予算案を、年内に編成する方針を固めた。景気下支えのための経済対策は、 内閣府が11月16日に発表する7~9月期の国内総生産(GDP)の速報値などを見極めて判断する。補正予算案は数兆円規模となる見通しで、財源は昨年度決算剰余金一部や、今年度予算の税収上振れ分を充てるようだ。

 

 政府は、TPP交渉の大筋合意を受けての国内対策の議論に着手した。全閣僚で構成する「TPP総合対策本部」(本部長:安倍総理)などの初会合が9日に開かれたほか、経済財政諮問会議(議長:安倍総理)でも議論となった。16日の諮問会議では、麻生副総理兼財務大臣や民間議員たちが、関税引き下げに伴って安価な外国産農産物の輸入増加に備えるため、予算のバラマキではなく、農業の構造改革に資する対策を求めた。民間議員たちは、TPPを成長戦略のコアと位置付け、企業の農業経営や農地集約による規模拡大、農業者の加工・販売への進出、輸出促進などを連名で提言するとともに、国内農業の構造・体質強化を図るための改革工程表を示すよう求めた。政府は、具体的な国内対策を盛り込んだ関連対策大綱を11月中にとりまとめ、12月に経済効果の試算も示す。今年度補正予算案や来年度当初予算に盛り込む方向で検討していくという。

農林水産省や経済産業省も、具体策の検討にそれぞれ着手している。農林水産省TPP対策本部(本部長:森山裕農林水産大臣)では、米国やカナダなどで法制化されている、品目ごとに少額の拠出を生産者などに義務づけて国産農産物の販売促進・海外市場の開拓・消費者向けの情報発信などの原資とする「チェックオフ制度」を念頭においた新制度の検討や、農地整備事業の拡充など、農林水産事業への支援策をとりまとめる。また、経済産業省TPP対策推進本部(本部長:林幹雄経済産業大臣)では、中堅・中小企業を中心に海外市場の獲得や技術開発支援、TPPを活用しやすい環境整備と情報提供などについて検討する。また、農林水産省と経済産業省が連携して、農業と商工業の連携による新事業創出や、農産品の加工・輸出などの支援強化も後押ししていくようだ。

 

また、TPP交渉への不安は情報不足も手伝っているとして、農林水産省は、国内対策のとりまとめに先立ち、15日から水田・畑作、園芸、畜産などの分野別説明会を、自治体・関係団体向けに地域ブロック単位で開催している。畑作のほとんど品目で関税の即時撤廃または段階的な撤廃となることや、関税引き下げで安い輸入豚肉の流入が増えるなど、生産者に一定の影響が出る可能性が、農林水産省の説明で明らかとなった。農林水産省は、経営所得安定対策の継続と備蓄米で米価下落の抑制で国産の再生産が可能と説明する。

これに対し、参加者からは、農産物の関税削減・撤廃に対する懸念や、自民党がレッドラインと位置付けた日豪経済連携協定(EPA)の水準を超えた関税引き下げへの反発、場当たり的な対処などの批判が噴出したほか、より詳細な情報開示や影響試算、国会決議との整合性、農業支援対策とその財源確保などで責任ある対応を求める声も相次いだ。

 農林水産省は、引き続き交渉結果や施策に関する説明を丁寧に行うことで、ひろく理解を得ていきたいとしている。経済産業省も、輸出拡大の後押しを図るべく、各都道府県や中小企業、日系企業向けに説明会やセミナーを開催するほか、利活用方法に関する電話相談窓口を設置する。

 

政府は、自治体や関係団体、事業者などの要望なども踏まえ、国内対策を策定していく方針だ。また、国内対策や農業の競争力強化へ向けた課題などについての議論が、自民党でも本格化する。党内の意見集約・調整のほか、農林水産事業の関係団体・事業者を説得するなどの役回りを担う政務調査会農林部会長には、小泉進次郎・前内閣府政務官(復興担当)を起用する予定だ。23日の党総務会で、国会の常任委員長人事などとあわせて決定する。

発信力があり知名度・国民的人気の高い小泉議員を部会長に起用することで、経験を積ませるとともに、来年夏に実施される参議院選挙対策として、事業者のTPPに対する批判を和らげるねらいもあるようだ。国内対策に絡めた歳出圧力が強まるなか、部会長は政府と農林族議員・関係団体との間に立って難しい調整・交渉を担うこととなるだけに、今後、その手腕が問われることとなりそうだ。

 

 

【軽減税率導入を前提に制度設計の議論スタート】

2017年4月に消費税率10%への引き上げに伴って負担緩和策として、飲食料品・生活必需品の消費税率を低く抑える「軽減税率」の導入をめぐっては、安倍総理が14日、自民党税制調査会長に就任した宮沢洋一・前経済産業大臣と会談し、具体的な制度設計は党税調や与党税制協議会での専門的議論に任せるとしつつも、「10%になる時点で、何らかの形の軽減税率を導入する方向で検討してほしい」「公明党とよく話をしてほしい」と指示した。また、軽減税率導入により中小企業の事務負担が増えることへの懸念・不安があることを念頭に、「商工業者などに無用の負担になるようなことは避け、混乱しないような現実的な解決策を考えて欲しい」と要請した。

これを受け、16日、宮沢税制会長は自民党税制調査会の非公式幹部会合を開き、消費税率引き上げと同時に軽減税率を導入することや、消費税率を一律で10%に引き上げたうえで消費者に軽減税率分2%相当を還付する財務省案「日本型軽減税率制度案」を議論の対象から外すことを確認した。

 

自民党と公明党は、安倍総理の意向に沿って具体的な制度設計を行うため、軽減税率に関する与党税制協議会での検討・調整作業を本格化させる。軽減税率の対象品目の線引きや代替財源の確保、中小企業はじめ事業者の事務負担軽減策などについて議論していく見通しだ。

焦点となっている軽減税率の対象品目をめぐっては、税収減規模を1兆円未満におさめるべきだとして絞り込みを図る方針でいる。現在、「酒・外食除く飲食料品全般」(軽減税率8%で年約1兆円減)や、「生鮮食品のみ」(軽減税率8%で年3400億円減)とする案が浮上している。ただ、公明党は「国民の痛税感を和らげ、消費を落とさないことが消費税率10%の引き上げ時に最も必要」「軽減税率は経済対策にもなるとして、景気の下支え策として軽減対象をなるべく幅ひろく確保することが望ましい」(山口代表)として、対象品目を「酒を除く飲食料品(外食含む)」とすべきだと主張している。また、「新聞・書籍は国民に必要な情報を提供するという、民主主義の基礎を支える制度的インフラとして考えるべきだ」と、新聞・書籍も対象品目に含めたほうがよいとの考えも示す。ただ、公明党案では年1.32兆円以上の税収減となるため、今後、対象品目をめぐる綱引きが激しくなっていきそうだ。

事業者の事務負担軽減策をめぐっては、複数税率で事業者が品目ごとに税率・税額を明記するインボイスの義務化は周知徹底と準備に相当程度の時間を要することから間にあわないと判断し、数年程度の猶予期間、公明党が提案している現行の帳簿や請求書に軽減税率の対象品目に印を付ける「簡易な経理方式」でつなぐことも含め検討するようだ。

 

ただ、自民党や財務省では、依然として軽減税率に否定的な声がくすぶっている。自民党は、支持基盤である中小事業者が軽減税率の導入に反発していることもあって、根強い慎重論がある。旧大蔵省出身で財務省案の作成に関与した野田毅前調査会長が事実上の更迭により名誉職的な党税調最高顧問に就任したとはいえ、ナンバー2にあたる額賀福志郎・小委員長が続投するなど、非公式幹部会のメンバー(8人)に、軽減税率導入に慎重だった人たちがほとんど留任する見通しだ。党税調内には、安倍総理の指示により方針転換が余儀なくされているだけに、官邸主導への反発や戸惑いもあるとみられている。

財務省も「財務省は、本当は(軽減税率の導入について)反対だ。面倒くさいとみんないっている。きちんとやるのはすごい手間になる」(麻生大臣)として、税収の減少で社会保障財源が減ることへの懸念、軽減税率の導入にあたっての手続きや準備に必要な時間的余裕がないことも危惧している。軽減税率の導入には消費税法改正が必要で、来年の通常国会に改正案を提出して年度末までに成立させたとしても、実施まで1年程度しか猶予がないからだ。もっとも、消極的な財務省の姿勢には「財務省案の方がよほど面倒くさいというのが国民の反応だ。財務省は大臣をはじめとしてもっと謙虚に受け止めてほしい」(公明党の山口代表)、「財務省も与党に協力するのは当然」(菅官房長官)など、政府・与党内から牽制する声も出ている。

 

軽減税率をはじめとする負担軽減策を今年12月にとりまとめる2016年度与党税制改正大綱に盛り込む方針で、作業時間は限られている。そのうえ、宮沢税制会長は、軽減税率の導入に積極的な公明党と、消極的姿勢をみせる自民党税調や財務省との間に立って、制度設計や政府・与党間の調整を進めていかなければならない。また、円滑な導入・実施には、慎重姿勢の経済界や事業者への説得も不可欠となる。協議難航も予想されるなか、どのように結論を出すのか、宮沢調査会長の力量が問われそうだ。

 

 

【臨時国会、召集見送りへ】

政府・与党は、臨時国会の年内召集を見送る方針を固めた。中央アジア歴訪やソウルで開かれる日中韓首脳会談、トルコで開催される20カ国・地域(G20)首脳会議、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議などへの出席と、今月下旬から来月末まで安倍総理の外交日程が立て込んでおり、来年度予算案の編成作業が本格化する12月中旬までの間も十分な審議時間が確保できないことを理由にしている。

労働基準法改正案など通常国会で積み残した法案処理や、12月上旬で任期切れとなる会計検査院検査官と公正取引委員会委員の国会同意人事が存在するものの、目玉案件が乏しく臨時国会を開会するメリットが少ない。また、TPP交渉の妥結が遅れたことにより最終合意・参加各国の協定署名が来年1月となる見通しで、国会承認案や関連法案の国会提出も通常国会以降となる。TPP参加各国の署名が済んでおらず、国内対策とその予算措置も提示できる段階にはないとして、十分に審議できる状況にはないと判断している。このほかにも、参議院選挙への影響を懸念して、新閣僚が国会答弁でつまずいたり、第3次安倍改造内閣発足直後から相次いで発覚した疑惑について追及されたりすることをなるべく回避したいとの思惑があるともみられている。

 

 与党は、臨時国会に代えて、民主党などの要求するTPPなどに関する閉会中審査を11月9~11日の3日間、衆参両院の予算委員会で行う予定だ。これに対し、安倍内閣との対決姿勢を鮮明にしたい野党側は、臨時国会の早期召集を求めている。内閣改造に伴う新閣僚からの所信聴取とそれに対する質疑も見送られることとなる点について、野党各党は「新しい内閣が何をしようとしているのか全く説明がなされていない。常識として国会を開き、国民に説明する責任がある」(民主党の岡田代表)、「これだけ閣僚が代わって所信表明をやらないことはありえない。国会軽視と言わざるをえない」(維新の党の今井幹事長)などと批判した。

また、TPPにより農林水産物の関税が撤廃・引き下げとなることに、生産者などの間で不安が広がっていることを背景に、野党側は、TPP交渉の情勢と大筋合意の内容について早期に質す必要があるとも主張している。政府側は「関税撤廃の例外に加えて、セーフガードの確保、関税削減期間の長期化などの有効な措置を獲得できた」(森山大臣)など関税撤廃による影響が少ないと説明しているが、畑作や園芸、水産品など多くの品目で関税が撤廃されるうえ、農産物の重要5項目(米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)も加工品など約3割(174品目)が関税撤廃となる。通常国会では予算審議が優先されるため、TPPをめぐる議論が来年4月以降になることが濃厚となっているが、交渉結果が国益に反していないかや、重要5項目の保護と国民への十分な情報提供などを求めた2013年の国会決議に違反していないかなどを追及していく方針だ。

 

 さらに、1億総活躍社会の実現方法や、マイナンバー制度に絡む厚生労働省の汚職事件の真相解明と再発防止策、通常国会で成立した安全保障関連法、米軍普天間飛行場移設問題、原発再稼働などについても審議を求めたい考えだ。

このほかにも、「追及するに値する問題を抱えている大臣がいれば、追及するのは当然」(民主党の枝野幹事長)と、談合に絡んで鹿児島県から指名停止措置を受けた建設業者10社から献金698万円(2011~13年の合計)を受けていたことが浮上した森山大臣、顔写真と名前入りのカレンダーを支援者に無料配布して公職選挙法違反(寄付行為)にあたる可能性が指摘されている島尻沖縄及び北方担当大臣、過去の不祥事が明るみになった高木復興担当大臣らに照準をあわせ、新閣僚の資質問題を徹底追及する構えもみせている。

 

 臨時国会を召集するか否かをめぐって与野党が対立するなか、19日、民主党・維新の党・共産党・社民党・生活の党の幹事長・書記局長と国対委員長、参院会派・無所属クラブの代表が会談し、新閣僚からの所信聴取とそれに対する質疑やTPPに関する審議を行うため、臨時国会の召集を政府に要求することで一致した。

 20日の与野党幹事長・書記局長会談で、野党は、臨時国会の速やかな召集を申し入れたが、与党は十分な審議時間が確保できないとして慎重姿勢を崩さなかった。野党側は、21日にも「衆議院か参議院のいずれかの4分の1以上の議員が要求した場合、内閣は召集を決定しなければならない」と規定する憲法53条にもとづき、政府へ国会召集を要求する意向を伝えた。

 

 

【臨時国会召集をめぐる攻防の見極めを】

 政府・与党内では、1億総活躍社会の実現に向けた具体策や、TPP大筋合意を受けての国内対策、軽減税率導入に向けた制度設計などの検討作業がスタートしている。一方、臨時国会を召集するか否かをめぐって、早期召集を強く求める野党と、召集を見送りたい政府・与党との心理戦が水面下で繰りひろげている。

野党側は、自民党が国会召集の要求に応じる考えがないとみて、21日にも憲法53条にもとづく召集要求書を議長に提出する方針だ。ただ、召集要求書が提出されたとしても、召集期限が憲法条文に規定されていない。召集するか否かは内閣の最終判断に委ねられている。官邸側は今後の世論の動向などを見極めて判断するとしているが、見送られる可能性が高い。野党側も召集が見送られることを見越しており、引き続き政府・与党の消極的姿勢や憲法軽視を批判して国民にアピールしていきたい考えだ。 

臨時国会の召集をめぐる与野党の攻防が大きなヤマ場を迎えているだけに、ひとまずその動向を見極めることが大切だろう。
 

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