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老衰で死ぬとはどういう状態を指すのか 最新研究で明らかに

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 9月20日放送のNHKスペシャル『老衰死 穏やかな最期を迎えるには』は大きな反響を呼んだ。番組は平均年齢90歳の高齢者約100人が生活する東京・世田谷の特別養護老人ホーム「芦花(ろか)ホーム」に密着し、延命治療を施さず、徐々に人生の最終ステップに向かう人たちと見守る家族の姿を伝えた。

 増加する老衰死は「自然なこと」だと番組にも出演した同ホームの石飛幸三医師は指摘する。
 
「老衰死とは直接の死因となる病を持たず、老いによる身体機能の低下で死を迎えることです。共通する特徴は『食べる』という機能が低下することで、それが身体全体の機能を低下させていく。平均寿命(男性80.5歳、女性86.8歳)あたりが老衰死を迎える年齢の目安になります」
 
 そして、「老衰で死ぬ」とはどういう状態を指すのかが最新の研究では明らかになってきた。注目されているのが継続的な「体重の減少」だ。
 
 2013年に東京有明医療大学の研究者が介護保険施設で亡くなった約100人の高齢者のデータを収集・分析している。この研究では高齢者が1日に摂取したカロリー量とBMI(体重を身長の2乗で割った値)の変化を追った。
 
 すると興味深いことに、毎日一定量のカロリーを摂取している高齢者は、死を迎える5~6年前から体重が減り続けていた。バランスよく健康的な食生活を続けていたのに、体重維持に結びつかなかったのだ。
 
 この不思議な現象についてNスペでは、老衰のメカニズムを研究するジョンズ・ホプキンス大学のニール・フェダーコ教授が「細胞の変化」が原因だと指摘した。

 フェダーコ教授によると、年齢を重ねるにつれて体内の細胞の数が減り、栄養素を吸収する小腸の組織や筋肉などが萎縮する。小腸の内壁は襞(ひだ)状になっており、それによって表面積が広くなり、より効率的に栄養を吸収できるようになっている。その襞が萎縮してしまうと、摂取した食事の栄養を体内に取り込めなくなり、体重も維持できなくなる。
 
 また、老化した細胞からは「炎症性サイトカイン」と呼ばれる免疫物質が大量に発生する。この物質が細胞の外に分泌されると周りの細胞の老化を促進し、体内の臓器や細胞が慢性的な炎症状態になり、機能低下を引き起こす。
 
 例えば筋肉が炎症すると運動機能が衰え、肺を動かす筋肉の炎症は呼吸機能の低下を招く。これらが互いに結びつき、少しずつ生命の維持を困難にしていくと考えられている。
 
 このように老化が進み、死期が近づくと、体重だけでなく「食事量そのものが減少する」と指摘するのは石飛医師だ。
 
 今年3月、「芦花ホーム」で93歳の女性が老衰で亡くなったが、亡くなる2か月ほど前から食事量がそれまでの半分に減っていた。施設は通常の食事から介護用のプリンにメニューを変えたが、それでもなかなか受け付けなかった。
 
「この女性は段々と食事の最中にも眠るようになり、亡くなる1週間ほど前から何も食べられなくなりました。年老いた体が食べ物を受け付けなくなるのは“終わりのサイン”。これは老衰死の典型的なパターンです」(石飛医師)

※週刊ポスト2015年10月30日号


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