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今までなかったの? 壁に釘が打てる新築分譲マンション

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日本の賃貸住宅では、壁に棚を付けたり色を変えることは「できない」「敷金が戻らない」「大家さんの許可が…」というのが一般的な見解。だから、持ち家になったら何でも自由にできる!と思っている人も多いのでは? でも実は、家を買ったとしても壁に重いもの取り付けるのは、意外と簡単ではないようだ。いったいなぜ?
日本の分譲マンションはつくりこまれすぎている、もっとシンプルなのがあってもいい

その答えは、10月4日に東京都台東区・浅草橋で行われた、これから販売開始となる新築分譲マンションのトークセッションイベントにあった。テーマは「暮らしを編集する家」。「編集」にはいろいろな意味が込められているのだが、今回は主に「壁のカスタマイズ」について紹介したい。

【画像1】トークセッション登壇者の3名。左からデザイン監修を手掛けたOpen Aの代表 馬場正尊さん、インテリアスタイリストでDIYの実践者である石井佳苗さん、東京ガス 都市生活研究所の稲垣勝之さん(画像提供/双日新都市開発株式会社)

馬場正尊さんは「東京R不動産」をはじめ、街や建物のリノベーションなど数多くの事業に関わっている。そんな馬場さんは10年ほど前にアメリカ各地で見たリノベーションやDIY物件に大いに刺激を受けたという。デパートが美術館になったり、ビール工場の跡地が住居とオフィスの複合施設になったり。そして、ハコ以外何もない、いわゆる「スケルトン」の状態で販売されているマンションなどを見て、これが究極の未来の分譲マンションの姿では、と感じたそう。

【画像2】左:ロサンゼルスにある美術館、元はデパート 右:シカゴで売り出されていた「スケルトン」状態の住居用マンション、元はオフィス(画像提供/DAICI ANO)

日本でもここ数年リノベーションの認知が高まったり、DIYが身近なものになりそれを楽しむ人たちが増えてきている。にもかかわらず、日本の新築分譲マンションでは、住み手が手を加える余地がないほど、いろいろつくりこまれている、と感じていた馬場さん。今回の双日新都市開発の新たなプロジェクトの話を受け、ともに企画をすることになったそうだ。

物件のコンセプトは「暮らしを編集する」。特徴は、3つのデザインタイプの部屋から選べたり、壁にペイントを施し自分らしく出来ること、そして棚などが打ち付けられるよう合板下地を入れた壁があることだ。

【画像3】左:3つのデザインのうちの1つ「エイジングウッド」。床や木枠など本物を使用、壁は新築マンションでは珍しい漆喰。ビニール素材ではない触感を味わってほしい、と馬場さん 右:例えばこんな風に自転車を吊ることも。浅草橋界隈はサイクリストが急増しているのだとか(画像提供/左:双日新都市開発株式会社 右:R不動産toolbox)家を買っても、壁に釘が打てない!?

これからのマンションのあるべき方向性を熱く語る馬場さんが、一番熱く語った(と筆者には思われた)ところ、それは「家の壁に釘が打てない問題」だ。

多くのマンションの壁は壁紙が貼ってありその下は釘が止まりにくい石膏ボードになっている。もちろん、石膏ボードアンカーといわれるもので釘を固定したり、下地が入っている箇所を探すツールなどを使えば、棚などの取り付けもできなくはない。しかし、止めやすいところを探す手間がかかったり、思い通りの場所に設置できないことも多い。

なぜそうなっているのか? 「石膏ボードや一般的にマンションでよく使われる壁紙は材料費が安いし、施工の手間が少なく扱いやすいなどのメリットがあります。また、壁紙自体が少し凹凸のあるものだと多少のキズなら目立ちにくくなるということでよく使われているのだと思います。しかしそれはあくまでも供給者側の論理」(馬場さん)

そこで今回、壁については石膏ボードの下に合板を入れ、釘を打ちやすくするとともに、壁紙ではなくペイントにした。ペイントの方が暮らしながら壁の色を変えたり、釘の後を修復したりしやすいためだ。

東京ガス都市生活研究所の稲垣勝之さんは、「建築の専門家にしてみればささやかな違いだけれど生活者にとっては画期的。家についてこだわりたい人は注文住宅のように一から全てを自分でつくることを望んでいる方ばかりでなく、近年は、基本のプランはありつつ、暮らしながら自由にできる余地が残されていることを望む人も多い。今回のように、あとから変更・追加するのは難しい水まわりにはあらかじめ機能的な設備を用意し、リビングの壁などに自分らしさを表現できる場を設けたという点は生活者のニーズに合っているのでは」と話した。壁を自由にカスタマイズできると自分らしい暮らしの空間づくりができる

インテリアスタイリストでDIY実践者の石井佳苗さんは5年前に都内から横須賀に引越し、中古の古い家を購入したのだが、自由にものが打ち付けられるよう、壁三面に合板を付加してもらったそう。

「壁は家の中でとても大きな面積を占める部分。これを自由にカスタマイズできる意味はとても大きいです。棚やフックをつけることで自分らしい暮らしの空間ができるし、この場所じゃないと思ったら外して、穴が開いた部分をパテで埋めてやすりをかけてまた同じペイントを塗れば何度でもきれいになります」(石井さん)

【画像4】石井さんのご自宅の壁。左は棚やフックを活用してさまざまなものを飾って楽しげに。右は古道具屋さんで見つけたという棚を壁に打ち付けた。実は左右どちらも同じ部屋。壁一面だけでも部屋の印象はがらりと変わる。よい気分転換ができそう(画像提供/石井佳苗)

最近の新築マンションでは、将来の間取り変更がしやすい設計になっていたり、壁の色、床の素材を選べる物件は増えてきてはいるが、壁に重いものでも取り付けられるような、カスタマイズを意図した物件はあまりない。

注文住宅や中古を買ってリノベーションという選択肢は、住まいにこだわりや思いのある人にとってはよいが、そこまで手間をかけられないという人も多い。また、家は買って終わりという“モノ”ではなく、買った後に住みながらどんどん使い勝手をよくしていく“暮らしの場”だ。そういった意味で住まい手の思い・関与が重要だ。

SUUMOジャーナルでも「新築で家を建てて最後の仕上げはDIY」や「中古一戸建てのリノベーション物件に住みながら手を加えていく」などの事例を紹介している。これからはそんな余白を残した物件が「新築分譲マンション」にももっと増えてほしい。そう強く感じた1日だった。●取材協力
インプレスト コア 浅草橋
元記事URL http://suumo.jp/journal/2015/10/19/99291/

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