急増する「ネット不正送金」被害を防ぐ自衛策

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急増する「ネット不正送金」被害を防ぐ自衛策

現代はボタン1つで商品が手元に届く便利な時代?

パソコンやスマートホンなどの普及に伴い、インターネットの利用者は増え続けています。「欲しいものはお店に出向き購入する」といった光景は、今や昔と言わざるを得ない時代です。遠く離れた国で売っている商品も、ボタン1つで取り寄せ、代金の支払いもボタン1つで完了するとても便利な時代です。

インターネットのなかった時代では、人と人が向き合い、商品を手に取って品定めをし、代金を手渡ししていました。一見、不便に思えますが、ごまかしがきかず、店と客、双方の信用につながる行為でもあったのです。インターネットでは、人と人が対面することなく、商品やお金が行き来しており、信用のハードルが下がっているとも言えます。

また、お金のプロと言うべき銀行でも、ネットバンキングの利用を促し、対面の信用を引き下げて便利を優先させていると言っても過言ではありません。防犯の観点からは、対面ではないことで、銀行強盗から身を守る側面があります。しかし犯罪者側から見ると、ネットバンキングは低いリスクで銀行強盗ができる仕組みとも言えるようで、2014年度の被害額は29億円を超え、前年度の2倍を記録しました。数年前より増加傾向にあったため、銀行側もさまざまな対策を行ってきました。

「ワンタイムパスワード」と「トランザクション認証」

ネット上の不正を防ぐ手段として、IDやパスワードといった暗号が思い浮かびます。しかし、この暗号をあの手この手で盗み取ろうと考えるのが犯罪者です。また、他人が施した防御を突破することだけに達成感を覚える人間もいます。

現在、銀行など金融機関では「ワンタイムパスワード(その場限りの暗号)」の発行に加え、指定した口座以外に振り込めない「トランザクション認証」を模索しているそうです。これは、言わば利用制限であり、ATMでの振り込み時の利用を簡素化する「振り込みカード(事前に情報を登録したカード)」以外、口座から振り込めなくするのと同じです。

つまり、口座から振り込みや送金をする場合、事前に登録が必要になる仕組みです。便利なはずのインターネットに利用制限を掛け、犯罪を未然に防ごうとする本末転倒な発想とも考えられます。しかし、前述の犯罪者と達成感のためだけに防御を破ろうとする2種類の人間がいる限り必ず被害は増えるでしょう。俗に言う「イタチごっこ」が繰り返されるだけです。

だまされないための知恵を絞り共有することが大切

犯罪の原点に立ち返ってみます。そこには経済と同様に、需要と供給が存在します。お金をだまし取る犯罪(詐欺)で例えるなら、お金が欲しい犯罪者(需要)とお金を渡してしまう被害者(供給)になります。経済の場合、製造メーカー(供給)が私たち(需要)の願いを考えて商品化し、私たちはその考えに賛同して商品を購入する構造です。

犯罪は、需要と供給の構造が真逆になっています。つまり、犯罪者が被害者を「いかにだますか」と考えているのに対して、被害者のほとんどが「知らなかった」「わからなかった」など知識不足や経験不足を訴えています。この構造が続く限り、詐欺被害は増え続けるでしょう。そして、被害を減らすためには、構造を変えるほかに方法はありません。被害に遭わないために一人一人ができることは、被害者の悲惨な姿から目をそらさず、寄り添って自身の経験とすることではないでしょうか。

「いかににだますか」を考えている犯罪者に対抗する手段は、「いかにだまされないか」と知恵を絞り、その知恵を共有して広めるほかにないと確信しています。

(神田 正範/防犯・防災コンサルタント)

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