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「音」だけの食レポなんて汚いだけだ!――『孤独のグルメ』をめぐってラジオ好きが考えた

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 「ラジオで扱うには無理があるもの」がいくつかあると思う。そのひとつが「食レポ」だ。ラジオには「絵」がない。どんなに美味しい料理でも、見た目がまったく分からなければ食欲の湧きようがない。少なくとも私の場合、ラジオの食レポを聴いて「自分も食べてみたい!」と思ったことは一度もない。
 2014年4月24日に放送された『荻上チキ session 22』(TBSラジオ)に『孤独のグルメ』(扶桑社/刊)原作者、久住昌之さんがゲスト出演した回もそうだった。
 番組中で久住さんが「簡単にできるおすすめ夜食」を紹介するくだり。コンビニおにぎりにアツアツのだし汁をかけてお茶漬けにし、久住さんをふくめた出演者3人は「ズズズッ」と音を立てながら、ご飯をかきこむ。彼らがお茶漬けの美味しさを熱っぽく語れば語るほど、演者と自分との温度差は広がっていくばかり、という感じだった。

 「料理の美味しさ」を伝える上で、「音」は大して重要ではないと言いたいわけではない。むしろ逆である。映像があった上で効果的な「音」が加わると「美味しさ」は劇的に伝わるのだ。10月2日よりテレビ東京系でスタートした『孤独のグルメ Season5』を見て、そう感じた。余計なBGM音を鳴らさず、素材の調理するときの音や、主人公・井之頭五郎が何かを食すときの咀嚼音ができるだけクリアに聴こえるような演出がなされているように思えたのだ。

 話をラジオに戻そう。コミック版『孤独のグルメ』は、原作を久住さん、作画を谷口ジローさんが手がけているが、パーソナリティの荻上さんから「マンガのなかで五郎が発する『はふ はふ』といった擬音語の描き方など、久住さんはどこまで関わっているんですか?」と尋ねられ、久住さんはこんなふうに答えている。

 「絵に関して、まずは谷口さんが描きたいように描いてもらっている。マンガができあがってから、絵に合うよう、こちらでセリフや音を付け足すことはあります」

 五郎の表情にあわせて咀嚼音を変えるということもあるのだろうか。そのあたりも気にとめつつ、先月発売されたコミック版『孤独のグルメ2』(扶桑社/刊)を読んでみると、また味わいが変わってくるかもしれない。
 味わいといえば、フードジャーナリストにして人気エッセイストの平松洋子さんが、本作の巻末に寄稿した「上等な孤独について」というエッセイのなかで、同作の味わいについてこう語っている。

 「好きなものを、好きなときに、好きなように味わうために大事なものはただひとつ、何にも縛られないこと。ひっそりと気配を消すのは、誰にもじゃまされないように。だからゴローさんは、食べるときは独りでなくてはならないのだ。なんと上等な孤独だろうか」(P139より引用)

 この一文を読むと、五郎が「誰かと話しながら」ではなく「ひとりで」食べているからこそ、見ている側は「音」に意識が行くのかもしれないという気もしてくる。

 最後に、ラジオと料理の関係についてもう少しだけ。「料理の美味しさが伝わりにくい」という話とは別に「パーソナリティとゲストが美味しい料理を食べながら、徐々に打ち解けていく様」を録っているラジオは嫌いではない。
 その好例が、安めぐみさんがパーソナリティを務める『焼酎ダイニング「J-Fairy YASU」』。この番組は、架空のダイニングバーを舞台に、その時々の旬の素材を使った「気の利いた小料理」を数品用意(最新回では、とうがんと長芋の薬膳風スープ、鯖と秋野菜のあげだし、小鯵の南蛮漬けの3品を供している)。安さんが「女将」としてゲストをもてなす体で、ともに焼酎を飲み、小料理を楽しみながらトークをするというものだ。
 安さんの心のこもっていなさそうな相槌とは裏腹に、ゲストとのトークは意外にも毎回盛り上がりを見せる。番組が始まった4年前、あまりの「上っ面トーク」に「1クールで終わるのでは…」と心配したリスナーは私だけではないはず。同番組がこれだけ生きながらえているのは「気の利いた小料理」が一役買っているから、というのは言い過ぎだろうか。
(千葉流太/新刊JP編集部)


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